Botchan - Chapter 4

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学校学校がっこう schoolには宿直宿直しゅくちょく night dutyがあって、職員職員しょくいん staff代る代るかわがわる by turnsこれをつとめる。但しただし howeverたぬき Tanuki (nickname for the school principal)赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)例外例外れいがい an exceptionである。何でなんで for what (reason)この両人両人りょうにん two people当然の当然とうぜんの rightful; proper義務義務ぎむ obligation免かれるまぬかれる avoid; be relieved ofのかと聞いていて askedみたら、奏任待遇奏任待遇そうにんたいぐう executive privilegeだからと云うう say; explain面白くもない面白おもしろくもない not amusing; unsatisfactory月給月給げっきゅう (monthly) salaryはたくさんとる、時間時間じかん hours少ないすくない few、それで宿直を逃がれるがれる escape; shirk (one's duty)なんて不公平不公平ふこうへい injusticeがあるものか。勝手な勝手かってな convenient; arbitrary規則規則きそく rulesこしらえてこしらえて concoct; fabricate、それが当り前あたまえ customary; matter of courseだというような顔をしているかおをしている acting as if ...。よくまああんなにずうずうしくずうずうしく audaciously; shamelessly出来る出来できる can doものだ。これについては大分大分だいぶ a great deal不平不平ふへい discontent; grievanceであるが、山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)せつ opinionによると、いくら一人一人ひとり one personで不平を並べたならべた enumerate; list up; citeって通るとおる warrant a responseものじゃないそうだ。一人だって二人二人ふたり two peopleだって正しいただしい correct; in the rightこと act; factなら通りそうなものだ。山嵐は might is right という英語英語えいご English引いていて quote説諭説諭せつゆ admonition; exhortation加えたくわえた addedが、何だかなんだか somehow要領を得ない要領ようりょうない can't follow (the meaning)から、聞き返してかえして asked in responseみたら強者強者きょうしゃ the strongest権利権利けんり right; privilegeと云う意味意味いみ meaningだそうだ。強者の権利ぐらいならむかし long agoから知っているっている know about; be aware of今さらいまさら now; at this point山嵐から講釈講釈こうしゃく explanationをきかなくってもいい。強者の権利と宿直とはべつ separate問題問題もんだい problem; issueだ。狸や赤シャツが強者だなんて、だれ who承知する承知しょうちする acknowledge; agree toものか。議論議論ぎろん argument; debateは議論としてこの宿直がいよいよおれのばん turn (to do something)廻って来たまわってた came around一体一体いったい in fact疳性疳性かんしょう highly particular about (疳性 = 癇性)だから夜具蒲団夜具蒲団やぐふとん beddingなどは自分の自分じぶんの one's ownものへ楽にらくに comfortably寝ないない don't sleepと寝たような心持ち心持こころもち feelingがしない。小供小供こども childとき time; periodから、友達友達ともだち friendのうちへ泊ったとまった stay overnight事はほとんどないくらいだ。友達のうちでさえいや disagreeableなら学校の宿直はなおさら厭だ。厭だけれども、これが四十円四十円よんじゅうえん forty yenのうちへ籠っているこもっている included inなら仕方がない仕方しかたがない can't be avoided我慢して我慢がまんして tolerate; endure勤めてつとめて perform one's dutyやろう。

教師教師きょうし instructors生徒生徒せいと students帰ってかえって return homeしまったあとで、一人一人ひとり alone; by oneselfぽかんとぽかんと vacantly; blankly; like a foolしているのは随分随分ずいぶん very much; terribly間が抜けたけた stupid; out of placeものだ。宿直部屋宿直部屋しゅくちょくべや night duty room教場教場きょうじょう classrooms裏手裏手うらて back side; behindにある寄宿舎寄宿舎きしゅくしゃ dormitory西はずれ西にしはずれ west end一室一室いっしつ single roomだ。ちょっとはいってみたが、西日西日にしび setting sun (lit: western sun)まともにまともに directly受けてけて receive苦しくってくるしくって excruciating居たたまれないたたまれない cannot bear to stay田舎田舎いなか the countryだけあってだけあって as expected ofあき autumnがきても、気長に気長きながに persistently; in no hurry (to change)暑いあつい hotもんだ。生徒のまかない board (dormitory meals)取りよせてりよせて send for晩飯晩飯ばんめし evening meal済ましたました finishedが、まずいには恐れ入ったおそった be astonished。よくあんなものを食ってって eat、あれだけに暴れられたあばれられた be unruly; run amuckもんだ。それで晩飯を急いでいそいで hurriedly四時半四時半よじはん 4:30片付けて片付かたづけて finish upしまうんだから豪傑豪傑ごうけつ heroic; extraordinaryに違いないちがいない without a doubtめし mealは食ったが、まだ the sun暮れないれない set; go downから寝るる go to bed訳に行かないわけかない can't do ...。ちょっと温泉温泉おんせん onsen行きたくきたく want to goなった。宿直宿直しゅくちょく night dutyをして、外へ出るそとる go outのはいいこと act; factだか、悪るいるい bad (not allowed)事だかしらないが、こうつくねんとつくねんと vacantly; idlyして重禁錮重禁錮じゅうきんこ imprisonment (with hard labor); close confinement同様同様どうよう equivalent憂目憂目うきめ misery; suffering逢うう meet with; experienceのは我慢の出来る我慢がまん出来できる tolerableもんじゃない。始めてはじめて the first time学校学校がっこう the school来たた came (to)当直当直とうちょく on dutyひと personはと聞いたらいたら inquired、ちょっと用達用達ようたし errand出たた went out小使小使こづかい janitor答えたこたえた answeredのをみょう odd; strangeだと思ったおもった thoughtが、自分自分じぶん oneselfばん (one's) turn廻ってまわって come aroundみると思い当るおもあたる reconsider出るる go outほう alternative; choice正しいただしい correct; rightのだ。おれは小使にちょっと出てくると云ったら、何かなんか some (kind of)ご用よう businessですかと聞くから、用じゃない、温泉へはいるんだと答えて、さっさと出掛けた出掛でかけた set out赤手拭赤手拭あかてぬぐい red towel宿宿やど lodgings忘れて来たわすれてた left behindのが残念残念ざんねん unfortunateだが今日今日きょう today先方先方せんぽう one's destination借りるりる borrowとしよう。

それからかなりゆるりと、出たりはいったりしてたりはいったりして getting in and out (of the onsen bath)、ようやく日暮方日暮方ひぐれがた sundown; duskになったから、汽車汽車きしゃ (steam) train乗ってって boarded (train)古町古町こまち Komachi (place name)停車場停車場ていしゃば stop; stationまで来てて came (to)下りたりた got off (train)学校学校がっこう the schoolまではこれから四丁四丁よんちょう four chō (about 450 meters, or 500 yards)だ。訳はないとわけはないと leisurely; easilyあるき出すあるきす start walkingと、向うからむこうから from the opposite directionたぬき Tanuki (nickname for the school principal)が来た。狸はこれからこの汽車で温泉温泉おんせん onsen行こうこう goと云うう (citation - makes a noun of the preceding clause)計画計画けいかく planなんだろう。すたすたすたすた at a brisk pace急ぎ足いそあし with hurried stepsにやってきたが、擦れ違ったちがった passed each otherとき time; occasionおれのかお face見たた saw; looked atから、ちょっと挨拶挨拶あいさつ greeting; salutationをした。すると狸はあなたは今日今日きょう today宿直宿直しゅくちょく night dutyではなかったですかねえと真面目くさって真面目まじめくさって assuming a serious air聞いたいた asked。なかったですかねえもないもんだ。二時間二時間にじかん two hoursまえ earlierおれに向ってむかって facing今夜今夜こんや tonight始めてのはじめての first (time)宿直ですね。ご苦労さま苦労くろうさま good luck; your effort is appreciated。とれい acknowledgement云ったった said; spokeじゃないか。校長校長こうちょう principalなんかになるといやに曲りくねったまがりくねった twisted; meandering言葉言葉ことば words使う使つかう useもんだ。おれは腹が立ったはらった became annoyedから、ええ宿直です。宿直ですから、これから帰ってかえって return泊るとまる stay overnightこと act; factはたしかに泊りますと云い捨てててて say in parting済ましてまして conclude (a matter)あるき出した。竪町竪町たてまち Tatemachi (place name)四つ角かど street corner; intersectionまでくると今度今度こんど this time山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)出っ喰わしたわした met up with; ran across。どうも狭いせまい narrow; confined; limitedところ placeだ。出てあるきさえすれば必ずかならず without fail誰かだれか someone逢うう meet; run into。「おいきみ youは宿直じゃないか」と聞くから「うん、宿直だ」と答えたらこたえたら replied、「宿直が無暗に無暗むやみに indiscreetly出てあるくなんて、不都合不都合ふつごう impropriety; misconductじゃないか」と云った。「ちっとも不都合なもんか、出てあるかないほう alternative; choiceが不都合だ」と威張って威張いばって assert oneself; talk bigみせた。「君のずぼらずぼら casual attitudeにも困るこまる have difficulty (with)な、校長か教頭教頭きょうとう head teacher出逢う出逢であう meet; run into面倒面倒めんどう trouble; difficultyだぜ」と山嵐に似合わない似合にあわない uncharacteristic; unbecoming事を云うから「校長にはたった今たったいま just now逢った。暑いあつい hotとき time; periodには散歩散歩さんぽ walk; strollでもしないと宿直もほね hard work (from 骨を折る)でしょうと校長が、おれの散歩をほめたよ」と云って、面倒臭い面倒臭めんどうくさい tiresomeから、さっさと学校へ帰って来た。

それから the sunはすぐくれる。くれてから二時間二時間にじかん two hoursばかりは小使小使こづかい janitor宿直部屋宿直部屋しゅくちょくべや night duty room呼んでんで called; invited話をしたはなしをした talkedが、それも飽きたきた grow tired ofから、寝られないまでもられないまでも even if I couldn't sleep yetとこ bedへはいろうと思っておもって thought寝巻寝巻ねまき nightclothes着換えて着換きがえて change clothes蚊帳蚊帳かや mosquito netting捲くってくって lift up; roll up赤いあかい red毛布毛布けっと blanket跳ねのけてねのけて push aside、とんと尻持を突いて尻持しりもりいて fall onto one's rear仰向け仰向あおむけ supine; lying face upになった。おれが寝るときにとんと尻持をつくのは小供小供こども childとき time; periodからのくせ habitだ。わるい癖だと云ってって say小川町小川町おがわまち Ogawamachi (place name)下宿下宿げしゅく lodging居たた be; live時分時分じぶん period (time)二階下二階下にかいした first floor; below the second floorに居た法律学校法律学校ほうりつがっこう law school書生書生しょせい student苦情苦情くじょう complaint持ち込んだんだ lodged (a complaint)こと act; factがある。法律の書生なんてものは弱いよわい weak癖にくせに though; in spite of、やにくち mouth達者達者たっしゃ expert; skilledなもので、愚なな foolish; idiotic事を長たらしくながたらしく longwindedly述べ立てるてる relate at great lengthから、寝る時にどんどん音がするおとがする make a soundのはおれのしり rearがわるいのじゃない。下宿の建築建築けんちく architecture; construction粗末粗末そまつ crude; shabbyなんだ。掛ケ合うう negotiate; haggleなら下宿へ掛ケ合えと凹ましてへこまして silence (someone)やった。この宿直部屋は二階二階にかい second floorじゃないから、いくら、どしんと倒れてたおれて fall; tumble構わないかまわない doesn't matter。なるべく勢よくいきおいよく with force; vigorously倒れないと寝たた sleptような心持ち心持こころもち feelingがしない。ああ愉快愉快ゆかい pleasure; happinessだとあし legsをうんと延ばすばす stretch outと、何だかなんだか something両足両足りょうあし both legs飛び付いたいた fly at; leap atざらざらしてざらざらして coarse; roughのみ fleasのようでもないからこいつあと驚ろいておどろいて be surprised、足を二三度二三度にさんど two or three times毛布のなか inside; within振ってって shakeみた。するとざらざらと当ったあたった hit; struckものが、急にきゅうに suddenly殖え出してして began to increaseすね legs五六カ所五六ごろくしょ five or six placesもも thighs二三カ所二三にさんしょ two or three placesしり hipsした beneathぐちゃりとぐちゃりと with a squish踏み潰したつぶした crushedのが一つひとつ oneへそ navelところ place; location; areaまで飛び上がったがった jumped up ontoのが一つ――いよいよ驚ろいた。早速早速さっそく immediately起き上ってあがって jumped (up) out of bed、毛布をぱっと後ろうしろ back; behind抛るほうる throw; hurlと、蒲団蒲団ふとん futonの中から、バッタバッタ grasshopper五六十五六十ごろくじゅう fifty or sixty飛び出したした flew out; jumped out正体正体しょうたい true nature; true identity知れないれない don't know; can't tell時は多少多少たしょう somewhat気味が悪るかった気味きみるかった felt uneasyが、バッタと相場が極まって相場そうばまって situation is assessedみたら急に腹が立ったはらった became angry。バッタのくせ (particular) wayひと a personを驚ろかしやがって、どうするか見ろどうするかろ see what you get!と、いきなり括り枕くくまくら rolled (cylindrical) pillow取ってって grab; take二三度二三度にさんど two or three times擲きつけたたたきつけた stuck; beatが、相手相手あいて opponent小さ過ぎるちいぎる too smallから勢よく抛げつけるげつける hurl; fling割にわりに considering; in proportion to利目利目ききめ effectがない。仕方がない仕方しかたがない it was of no useから、また布団布団ふとん futonうえ on top of坐ってすわって sat煤掃煤掃すすはき house cleaningの時にござ matting丸めてまるめて roll upたたみ tatami (floor mat)叩くたたく beatように、そこら近辺近辺きんぺん vicinity無暗に無暗むやみに blindly; randomlyたたいた。バッタが驚ろいた上にうえに in addition toまくら pillowの勢で飛び上がるものだから、おれのかた shoulderだの、あたま headだの鼻の先はなさき tip of one's noseだのへくっ付いたりくっいたり stick to、ぶつかったりする。かお face付いたいた stuck toやつ onesは枕で叩く訳に行かないわけかない can't ...から、 hand攫んでつかんで grasp一生懸命一生懸命いっしょうけんめい with all one's mightに擲きつける。忌々しい忌々いまいましい vexatious; annoying事に、いくらちから power; strength出してして put forthも、ぶつかるさき objective; destinationが蚊帳だから、ふわりと動くうごく move; give wayだけで少しもすこしも (not) in the least手答手答てごたえ response; reactionがない。バッタは擲きつけられたまま蚊帳へつらまっている。死にに dyingもどうもしない。ようやくの事に三十分三十分さんじゅっぷん thirty minutesばかりでバッタは退治た退治たいじた subdued; eradicatedほうき broom持って来てってて broughtバッタの死骸死骸しがい remains; (dead) bodies掃き出したした swept up。小使が来て何ですかなんですか what is it云うう say; askから、何ですかもあるもんか、バッタを床の中に飼っとくっとく keep; rear; raise (animals)奴がどこのくに country; regionにある。間抜間抜まぬけ simpleton; half-witめ。と叱ったらしかったら scoldedわたし I存じませんぞんじません don't know (anything about it)弁解弁解べんかい plea; defenseをした。存じませんで済むむ end; be settledかと箒を椽側椽側えんがわ veranda; corridorへ抛り出したら、小使は恐る恐るおそおそる timidly箒を担いでかついで to shoulder帰って行ったかえってった retreated; went back

おれは早速早速さっそく immediately寄宿生寄宿生きしゅくせい boarding students三人三人さんにん three (people)ばかり総代総代そうだい representative; delegate呼び出したした summoned。すると六人六人ろくにん six (people)出て来たた appeared。六人だろうが十人十人じゅうにん ten (people)だろうが構うかまう matter; make a differenceものか。寝巻寝巻ねまき bedclothesのまま腕まくりうでまくり rolled up sleevesをして談判談判だんぱん dialogue始めたはじめた began

「なんでバッタバッタ grasshoppersなんか、おれのとこ bedなか in; inside入れたれた put in; placed

「バッタたなん whatぞな」と真先真先まっさき right in front一人一人ひとり one (person)がいった。やに落ち付いていて relaxed; casualいやがる。この学校学校がっこう schoolじゃ校長校長こうちょう principalばかりじゃない、生徒生徒せいと studentsまで曲りくねったまがりくねった twisted; convoluted言葉言葉ことば words使う使つかう use; applyんだろう。

「バッタを知らないらない don't knowのか、知らなけりゃ見せてせて showやろう」と云ったった saidが、生憎生憎あいにく unfortunately掃き出してして swept upしまって一匹も居ない一匹いっぴきない not one (creature) was present。また小使小使こづかい janitor呼んでんで call for、「さっきのバッタを持ってこいってこい bring here」と云ったら、「もう掃溜掃溜はきだめ rubbish heap棄てててて threw outしまいましたが、拾って参りましょうひろってまいりましょう go and collect (humble form)か」と聞いたいた asked。「うんすぐ拾って来いひろってい go get」と云うと小使は急いでいそいで hurriedly馳け出したした rushed outが、やがて半紙半紙はんし writing paperうえ on top of十匹十匹じゅっぴき ten (creatures)ばかり載せてせて placing (onto)来てて came (back)「どうもお気の毒どく it's a pity; I'm sorryですが、生憎よる nightでこれだけしか見当りません見当みあたりません spot; find; locate。あしたになりましたらもっと拾って参ります」と云う。小使まで馬鹿馬鹿ばか fool; idiotだ。おれはバッタの一つひとつ oneを生徒に見せて「バッタたこれだ、大きなずう体をしておおきなずうたいをして being grown up; grown large、バッタを知らないた、何のこと act; factだ」と云うと、一番左一番左いちばんひだり left-mostほう direction居たた was (in a place)顔の丸いかおまるい round-facedやつ fellowが「そりゃ、イナゴイナゴ long-headed locustぞな、もし」と生意気に生意気なまいきに audaciouslyおれを遣り込めためた talked down to; refuted。「篦棒め篦棒べらぼうめ idiots!、イナゴもバッタも同じおなじ sameもんだ。第一第一だいいち first (of all)先生先生せんせい teacher捕まえてつらまえて lay hold of; deal withなもしなもし (sentence ending added in local dialect)た何だ。菜飯菜飯なめし rice with mustard greens田楽田楽でんがく short for "dengaku miso"とき time; occasionより外にほかに apart from食うう eatもんじゃない」とあべこべに遣り込めてあべこべにめて turning the tables (on someone)やったら「なもしと菜飯とは違うちがう differentぞな、もし」と云った。いつまで行ってもいつまでっても no matter what; in all situationsなもしを使う奴だ。

「イナゴでもバッタでも、何でなんで why; for what reasonおれの床の中へ入れたんだ。おれがいつ、バッタを入れてくれと頼んだたのんだ requested

誰もだれも no one入れやせんがな」

「入れないものが、どうして床の中に居るんだ」

「イナゴは温いぬくい warmところ places好きき favored; preferredじゃけれ、大方大方おおかた most likely; in all probability一人で一人ひとりで on one's ownおはいりたのじゃあろ」

馬鹿あ云え馬鹿ばかえ nonsense!。バッタが一人でおはいりになるなんて――バッタにおはいりになられてたまるもんか。――さあなぜこんないたずらをしたか、云え」

「云えてて、入れんものを説明説明せつめい explainしようがないがな」

けちなけちな mean-spirited; small-minded奴等奴等やつら folksだ。自分自分じぶん oneselfで自分のしたこと act; fact云えないえない can't say; won't admitくらいなら、てんでしないがいい。証拠証拠しょうこ proofさえ挙がらなければがらなければ doesn't surface (provisional form)しらを切るしらをる feign ignoranceつもりで図太く図太ずぶとく impudent; shameless構えてかまえて assume a posture (of defense)いやがる。おれだって中学中学ちゅうがく middle school (short for 中学校)居たた was (in a place)時分時分じぶん time; period少しすこし a bit; someはいたずらもしたもんだ。しかしだれがしたと聞かれたかれた was askedとき time; when ...に、尻込みをする尻込しりごみをする hesitate; shrink fromような卑怯な卑怯ひきょうな cowardly事はただの一度一度いちど one timeもなかった。したものはしたので、しないものはしないに極ってるきまってる is a given; is certain。おれなんぞは、いくら、いたずらをしたって潔白な潔白けっぱくな innocent; of integrityものだ。嘘を吐いてうそいて telling liesばつ punishment逃げるげる avoid; escape (from)くらいなら、始めからはじめから from the start; in the first placeいたずらなんかやるものか。いたずらと罰はつきもんだ。罰があるからいたずらも心持ちよく心持こころもちよく with a good feeling; with a clear conscience出来る出来できる can do。いたずらだけで罰はご免蒙る免蒙めんこうむる be excused from; beg one's way out ofなんて下劣な下劣げれつな sordid; vulgar根性根性こんじょう nature; dispositionどこの国にどこのくにに where; in what land流行る流行はやる be (widely) accepted思ってるおもってる think; considerんだ。かね money借りるりる borrowが、返すかえす return; pay back事はご免めん sorry; excuse meだと云う連中連中れんちゅう peopleはみんな、こんな奴等が卒業して卒業そつぎょうして graduateやる仕事仕事しごと work; task相違ない相違そういない no doubt that ...全体全体ぜんたい after all; (why) in the world中学校へなに whatしにはいってるんだ。学校学校がっこう schoolへはいって、嘘を吐いて、胡魔化して胡魔化ごまかして cheat; swindle陰でかげで in the shadowsこせこせこせこせ fidgety; restless生意気な生意気なまいきな smart-aleck; brazen悪いたずらわるいたずら devious mischiefをして、そうして大きな面おおきなつら big-headed; with a swaggerで卒業すれば教育教育きょういく education受けたけた receivedもんだと癇違い癇違かんちがい mistaken ideaをしていやがる。話せないはなせない ignorant; lacking good sense雑兵雑兵ぞうひょう commoners; rank and fileだ。

おれはこんな腐ったくさった corrupt; depraved了見了見りょうけん intention; view奴等奴等やつら folks談判談判だんぱん conversationするのは胸糞が悪るい胸糞むなくそるい be disgusted; find revoltingから、「そんなに云われなきゃわれなきゃ can't say; won't admit聞かなくっていいかなくっていい no point in listening (to you)中学校中学校ちゅうがっこう middle schoolへはいって、上品上品じょうひん decency下品下品げひん indecency区別区別くべつ distinction出来ない出来できない can't doのは気の毒などくな sorry; pitiful; patheticものだ」と云って六人六人ろくにん six (people)逐っ放してぱなして dispatched; sent awayやった。おれは言葉言葉ことば words; speech様子様子ようす appearanceこそあまり上品じゃないが、こころ heart; spiritはこいつらよりも遥かにはるかに by far上品なつもりだ。六人は悠々と悠々ゆうゆうと quietly; calmly引き揚げたげた withdrew; took (their) leave上部上部うわべ exterior; outward appearanceだけは教師教師きょうし instructorのおれよりよっぽどえらく見えるえる to appear実はじつ in fact落ち付いているいている calm; composedだけなお悪るいるい malicious; evil。おれには到底到底とうてい (not) at allこれほどの度胸度胸どきょう temerity; gallはない。

それからまたとこ bedへはいってよこ sideways; proneになったら、さっきの騒動騒動そうどう commotion蚊帳蚊帳かや mosquito nettingなか insideはぶんぶん唸ってうなって humming; buzzingいる。手燭手燭てしょく candlestickをつけて一匹一匹いっぴき one (critter)ずつ焼くく burnなんて面倒な面倒めんどうな troublesomeこと act; factは出来ないから、釣手釣手つりて (mosquito net) hanger; hooksをはずして、長くながく lengthwise畳んでたたんで foldedおいて部屋部屋へや roomの中で横竪横竪よこたて back and forth and sideways十文字に十文字じゅうもじに in a cross pattern振ったらふるったら shookかん (hanger) ring飛んでんで flew手の甲こう back of the handをいやというほど撲ったった hit; struck三度目に三度目さんどめに for the third time床へはいったとき time少々少々しょうしょう somewhat落ち付いたいた relaxed; settled downがなかなか寝られないられない cannot sleep時計時計とけい clock見るる look at十時半十時半じゅうじはん 10:30だ。考えてかんがえて think about; considerみると厄介な厄介やっかいな troublesome; difficultところ place来たた came (to)もんだ。一体一体いったい in fact; properly speaking中学中学ちゅうがく middle school (short for 中学校)先生先生せんせい teacherなんて、どこへ行ってって go (to)も、こんなものを相手にする相手あいてにする deal withなら気の毒などくな pitiableものだ。よく先生が品切れ品切しなぎれ out of stock; all goneにならない。よっぽど辛防強い辛防強しんぼうづよい persevering; long-suffering朴念仁朴念仁ぼくねんじん misfit; geekがなるんだろう。おれには到底やり切れないやりれない can't manage。それを思うおもう considerきよ Kiyo (name of Botchan's former maidservant)なんてのは見上げた見上みあげた admirable; praiseworthyものだ。教育もない身分身分みぶん social standingもない婆さんばあさん old womanだが、人間人間にんげん human beingとしてはすこぶる尊といたっとい noble; venerable今までいままで until nowはあんなに世話になって世話せわになって receive (someone's) care別段別段べつだん particularly難有い難有ありがたい gratefulとも思わなかったが、こうして、一人で一人ひとりで by oneself遠国遠国えんごく distant land; faraway placeへ来てみると、始めてはじめて for the first timeあの親切親切しんせつ kindnessがわかる。越後越後えちご Echigo (old province in north-central Japan - now part of Niigata-ken)笹飴笹飴ささあめ sweet rice jelly wrapped in a bamboo leaf食いたければいたければ want to eat (provisional form)、わざわざ越後まで買いい buy行ってって go (to)食わしてやっても、食わせるだけの価値価値かち value; worth充分充分じゅうぶん enough; sufficientある。清はおれの事こと concerning ...よく desire; greedがなくって、真直な真直まっすぐな upright; straight気性気性きしょう disposition; temperamentだと云って、ほめるが、ほめられるおれよりも、ほめる本人本人ほんにん the person in question; the said personほう alternative立派な立派りっぱな magnificent人間だ。何だかなんだか somehow; for some reason清に逢いたくいたく want to see (someone)なった。

きよ Kiyo (name of Botchan's former maidservant)の事こと concerning ...考えながらかんがえながら while thinking aboutのつそつしているのつそつしている letting one's mind wander in a restless stateと、突然突然とつぜん suddenlyおれの頭の上であたまうえで overheadかず numbers云ったらったら say; express三四十人三四十人さんしじゅうにん thirty or forty peopleもあろうか、二階二階にかい second floor落っこちるっこちる fall in; collapseほどどん、どん、どんと拍子を取って拍子ひょうしって in time; with a rhythm床板床板ゆかいた floorboards踏みならすみならす stomp (one's feet)おと sound; noiseがした。すると足音足音あしおと sound of feetに比例した比例ひれいした in proportion to大きなおおきな loud (voice; sound)鬨の声ときこえ battle cry起ったおこった arose。おれは何事何事なにごと something持ち上がったがった happenedのかと驚ろいておどろいて be surprised飛び起きたきた jumped up; jumped out of bed。飛び起きる途端に途端とたんに just as ...、ははあさっきの意趣返し意趣返いしゅがえし retaliation生徒生徒せいと studentsがあばれるのだなと気がついたがついた realized手前手前てまえ you (general); a personのわるいこと act; factは悪るかったと言ってって say; admitしまわないうちはつみ crime; transgression; guilt消えないえない will not go awayもんだ。わるい事は、手前達手前達てまえたち you (plural)おぼえ awareness; understandingがあるだろう。本来本来ほんらい by nature; rightfullyなら寝てて sleepから後悔後悔こうかい regret; remorseしてあしたのあさ morningでもあやまりに来るあやまりにる come and apologizeのが本筋本筋ほんすじ proper course of actionだ。たとい、あやまらないまでも恐れ入っておそって be too ashamed静粛に静粛せいしゅくに quietly寝ているべきだ。それを何だなんだ what is (this)この騒ぎさわぎ uproar; ruckusは。寄宿舎寄宿舎きしゅくしゃ dormitory建てててて build; constructぶた pigs; hogsでも飼ってって raise (animals)おきあしまいしまい probably wouldn't do (= しないだろう)し。気狂い気狂きちがい lunacyじみたじみた smacking of; bordering on真似真似まね behavior大抵にするがいい大抵たいていにするがいい enough of ...; should stop ...どうするか見ろどうするかろ I'll show you!と、寝巻寝巻ねまき bedclothesのまま宿直部屋宿直部屋しゅくちょくべや night duty room飛び出してして flew out of楷子段楷子段はしごだん staircase三股半に三股半さんまたはんに three steps at a time二階二階にかい second floorまで躍り上がったおどがった sprang up; raced up。すると不思議な不思議ふしぎな strange; mysterious事に、今まで頭の上で、たしかにどたばたどたばた noisily暴れてあばれて riot; act unrulyいたのが、急にきゅうに suddenly静まり返ってしずまりかえって become deathly still人声人声ひとごえ human voiceどころか足音もしなくなった。これはみょう odd; curiousだ。ランプはすでに消してして put out; extinguishあるから、暗くてくらくて darkどこになに what居るる be (in a place)判然と判然はんぜんと clearly; distinctly分らないわからない can't tell; can't understandが、人気人気ひとけ sign of life; human presenceのあるとないとは様子様子ようす air; atmosphereでも知れるれる can tell長くながく lengthwise東から西へひがしから西にしへ from east to west貫いたつらぬいた passed through; connected廊下廊下ろうか hallwayにはねずみ mouse一匹も一匹いっぴきも (not) one creature隠れてかくれて hidingいない。廊下のはずれからつき moonがさして、遥かはるか far off向うむこう distance; beyond際どくきわどく marginally; just barely明るいあかるい bright。どうもへん strangeだ、おれは小供小供こども childとき time; periodから、よくゆめ dreams見るる seeくせ habit; propensityがあって、夢中夢中むちゅう unconsciousness; trance跳ね起きてきて jump out of bed、わからぬ寝言寝言ねごと sleep talkingを云って、ひと people; others笑われたわらわれた be laughed at事がよくある。十六七十六七じゅうろくしち sixteen or seventeenの時ダイヤモンドを拾ったひろった picked up; found夢を見たばん nightなぞは、むくりと立ち上がってむくりとがって sit up abruptly (むくりと = むっくりと)、そばに居たあに (older) brotherに、いま (just) nowのダイヤモンドはどうしたと、非常な非常ひじょうな unusual; extremeいきおい energy; vigor尋ねたたずねた looked for; asked aboutくらいだ。その時は三日三日みっか three daysばかりうちじゅう throughout笑い草わらぐさ laughingstock; object of amusementになって大いにおおいに to a great extent弱ったよわった was troubled。ことによると今のも夢かも知れない。しかしたしかにあばれたに違いないちがいない without a doubtがと、廊下の真中真中まんなか middle of考え込んでかんがんで brood (over something)いると、月のさしている向うのはずれで、一二三一二三いちにさん one! two! three!わあと、三四十人のこえ voicesがかたまって響いたひびいた echoed; resoundedかと思うおもう perceived間もなくもなく immediately (following); soon after前のようにまえのように as before拍子を取って、一同一同いちどう all (of them)が床板を踏み鳴らした。それ見ろ夢じゃないやっぱり事実事実じじつ fact; realityだ。静かしずか quietにしろ、夜なかなか middle of the nightだぞ、とこっちも負けんけん not to be defeated; comparableくらいなこえ voice出してして call out (voice)、廊下を向うへ馳けだしたけだした ran toward。おれの通るとおる pass through; traverseみち way; pathは暗い、ただはずれに見える月あかりが目標目標めじるし mark; sign; guideだ。おれが馳け出して二間二間にけん two ken (about 3.5 meters, or 4 yards)来たた came; progressedかと思うと、廊下の真中で、堅いかたい hard大きなおおきな largeものに向脛向脛むこうずね shinをぶつけて、あ痛いいたい Ouch!が頭へひびく間にあいだに while ...身体身体からだ bodyすとんとすとんと with a thumpまえ forward抛り出されたほうされた was thrown; was hurledこん畜生こん畜生ちきしょう Damn!起き上がってがって get upみたが、馳けられない。気はせくはせく mind hurried (onward)が、あし legだけは云う事を利かないかない didn't respondじれったいじれったい impatient; irritatedから、一本足で一本足いっぽんあしで on one leg飛んで来たら、もう足音も人声も静まり返って、森としんと in deep silenceしている。いくら人間人間にんげん a person; people卑怯卑怯ひきょう cowardlyだって、こんなに卑怯に出来る出来できる be made; be formedものじゃない。まるで豚だ。こうなれば隠れてかくれて hidingいるやつ fellows引きずり出してきずりして drag out、あやまらせてやるまではひかないひかない won't retreat; won't withdrawぞと、心を極めてこころめて with determination寝室寝室しんしつ bedroom一つひとつ one (of)開けてけて openなか inside検査検査けんさ inspect; checkしようと思ったが開かない。じょう lockをかけてあるのか、つくえ desks何かなにか something積んでんで pile up; stack up立て懸けてけて prop up (against)あるのか、押してして pushも、押しても決してして (not) by any means; (not) in the least開かない。今度今度こんど next向う合せむこあわせ opposite; facing北側北側きたがわ north sideへや room試みたこころみた tried。開かない事はやっぱり同然同然どうぜん the same; likewiseである。おれが doorを開けて中に居る奴を引っ捕らまえてらまえて grab; seizeやろうと、焦慮てる焦慮いらってる be flustered; be frustratedと、またひがし eastのはずれで鬨の声と足拍子足拍子あしびょうし stomping in rhythm始まったはじまった started。この野郎野郎やろう rascals申し合せてもうあわせて by arrangement; conspiring東西東西とうざい east and west相応じて相応あいおうじて acting effectively togetherおれを馬鹿馬鹿ばか foolにする intentionだな、とは思ったがさてどうしていいか分らない。正直に正直しょうじきに honestly白状して白状はくじょうして confessしまうが、おれは勇気勇気ゆうき courage; gritのある割合に割合わりあいに in comparison to智慧智慧ちえ wisdom; resourcefulness足りないりない insufficient; lacking。こんな時にはどうしていいかさっぱりわからない。わからないけれども、決して負けるける be defeatedつもりはない。このままに済ましてまして end up; let it go atはおれの顔にかかわるかおにかかわる affect one's honor; reflect on one's dignity江戸っ子江戸えど native of Tōkyō意気地がない意気地いくじがない be spineless; be a pushoverと云われるのは残念残念ざんねん mortifyingだ。宿直をして鼻垂れ小僧鼻垂はなった小僧こぞう driveling bratsからかわれてからかわれて be teased; be picked on手のつけようがなくってのつけようがなくって can't handle (something)仕方がない仕方しかたがない have no choiceから泣き寝入りにした寝入ねいりにした cried oneself to sleepと思われちゃ一生の一生いっしょうの life-long名折れ名折なおれ disgraceだ。これでももと one's origin旗本旗本はたもと direct retainer of the shōgunだ。旗本の元は清和源氏清和源氏せいわげんじ Seiwa Genji (name)で、多田の満仲多田ただ満仲まんじゅう Tada no Manjū (name - Tada Mitsunaka); here may be word play by Sōseki meaning 'ordinary manjū' (bean-jam bun)後裔後裔こうえい descendantだ。こんな土百姓土百姓どびゃくしょう dirt farmer; peasantとは生まれからまれから from birthして違うちがう differentんだ。ただ智慧のないところが惜しいしい regrettableだけだ。どうしていいか分らないのが困るこまる be troubledだけだ。困ったって負けるものか。正直だから、どうしていいか分らないんだ。世の中になかに in this world正直が勝たないで、ほか otherに勝つものがあるか、考えてみろかんがえてみろ think about it今夜中今夜中こんやじゅう tonightに勝てなければ、あした勝つ。あした勝てなければ、あさって勝つ。あさって勝てなければ、下宿下宿げしゅく lodgingsから弁当弁当べんとう bentō (packaged meals)取り寄せてせて order; have delivered勝つまでここに居る。おれはこう決心決心けっしん resolve; determinationをしたから、廊下の真中へあぐらをかいてあぐらをかいて sit (cross-legged)夜のあけるののあけるの break of day待ってって wait forいた。 mosquitosがぶんぶん来たけれども何ともなかった。さっき、ぶつけた向脛を撫でてでて touch; rubみると、何だかぬらぬらするぬらぬらする be slippery血が出るる bleedんだろう。血なんか出たければ勝手に勝手かってに as (it) likes出るがいい。そのうち最前から最前さいぜんから from the preceding events疲れつかれ fatigueが出て、ついうとうと寝てうとうとて doze offしまった。何だか騒がしいさわがしい noisy; livelyので、眼が覚めためた woke up時はえっ糞しまったえっくそしまった Damn it!と飛び上がった。おれの坐ってたすわってた sitting右側右側みぎがわ right sideにある戸が半分半分はんぶん halfwayあいて、生徒が二人二人ふたり two (people)、おれのまえ front of立っているっている were standing。おれは正気に返って正気しょうきかえって regain one's senses、はっと思う途端に、おれの鼻の先はなさき tip of the noseにある生徒の足を引っ攫んでつかんで grab力任せに力任ちからまかせに with all one's mightぐいとぐいと with a jerk引いたらいたら pulled、そいつは、どたりとどたりと with a thump仰向仰向あおむけ supine; face up position倒れたたおれた fellざまを見ろざまをろ Take that!残るのこる remaining一人一人ひとり one (person)がちょっと狼狽した狼狽ろうばいした confused; flusteredところを、飛びかかってびかかって pounced on肩を抑えてかたおさえて grabbed by the shoulders二三度二三度にさんど two or three timesこづき廻したらこづきまわしたら shook (by the shoulders)あっけに取られてあっけにられて be dumbfounded眼をぱちぱちさせたをぱちぱちさせた blinked (in bewilderment)。さあおれの部屋部屋へや roomまで来いい come引っ立てるてる lead (a person) off; march (a person) toと、弱虫弱虫よわむし weaklings; cowardsだと見えてえて appear一も二もなくいちもなく readily; without complaint尾いて来たいてた came along nightはとうにあけている。

おれが宿直部屋宿直部屋しゅくちょくべや night duty room連れてきたれてきた brought; ledやつ fellows詰問詰問きつもん questioning; grillingし始めるはじめる begin to doと、ぶた pigs; hogsは、打ってって hit擲いてたたいて strikeも豚だから、ただ知らんらん I don't knowがなで、どこまでも通すとおす continue with; stick to了見了見りょうけん thought; notion見えてえて appear、けっして白状白状はくじょう confess; own upしない。そのうち一人来る、二人来る、だんだん二階二階にかい second floorから宿直部屋へ集まってあつまって gatherくる。見るる look atとみんな眠そうねむそう tired-looking瞼をはらしているまぶたをはらしている have swollen eyelidsけちなけちな mean; shabby奴等奴等やつら folksだ。一晩一晩ひとばん one nightぐらい寝ないない lose sleepで、そんなつら faceをしておとこ man云われるわれる be calledか。面でも洗ってあらって wash議論議論ぎろん debate; disputeに来いと云ってやったが、誰もだれも no one面を洗いに行かないかない go

おれは五十人五十人ごじゅうにん fifty (people)あまりを相手相手あいて adversaryやく about一時間一時間いちじかん one hourばかり押問答押問答おしもんどう repeated questioning and answeringをしていると、ひょっくりひょっくり suddenly; unexpectedlyたぬき Tanuki (nickname for the school principal)がやって来た。あとから聞いたらいたら asked; heard小使小使こづかい janitor学校学校がっこう the school騒動騒動そうどう disturbance; troubleがありますって、わざわざ知らせらせ notifyに行ったのだそうだ。これしきこれしき such a trifleこと matterに、校長校長こうちょう principal呼ぶぶ call forなんて意気地がなさ過ぎる意気地いくじがなさぎる weak-willed to the extreme。それだから中学校中学校ちゅうがっこう middle schoolの小使なんぞをしてるんだ。

校長校長こうちょう (school) principalひと通りひととおり briefly; in generalおれの説明説明せつめい explanation聞いたいた listened to生徒生徒せいと students言草言草いいぐさ one's statementもちょっと聞いた。追ってって in due course; in a little while処分する処分しょぶんする deal withまでは、今まで通りいままでとおり as hitherto; as usual学校学校がっこう school出ろろ attend; make one's appearance早くはやく quicklyかお face洗ってあらって wash朝飯朝飯あさめし breakfast食わないとわないと eat (negative provisional)時間に間に合わない時間じかんわない be lateから、早くしろと云ってって say寄宿生寄宿生きしゅくせい boarding studentsをみんな放免した放免ほうめんした released; discharged手温るい手温てぬるい lax; lenientこと act; actionだ。おれなら即席に即席そくせきに on the spot寄宿生をことごとくことごとく one and all退校退校たいこう expulsion (from school)してしまう。こんな悠長な悠長ゆうちょうな easygoing; leisurely事をするから生徒が宿直員宿直員しゅくちょくいん instructor on night duty馬鹿にする馬鹿ばかにする play for a foolんだ。その上そのうえ on top of thatおれに向ってむかって turning toward、あなたもさぞさぞ surelyご心配心配しんぱい troubled (over a matter); upsetお疲れつかれ tired; wearyでしょう、今日今日きょう todayご授業授業じゅぎょう classes及ばんおよばん it's not necessary to (do something)と云うから、おれはこう答えたこたえた answered; responded。「いえ、ちっとも心配じゃありません。こんな事が毎晩毎晩まいばん every nightあっても、命のある間いのちのあるあいだ while one is still aliveは心配にゃなりません。授業はやります、一晩一晩ひとばん one nightぐらい寝なくってなくって go without sleep、授業が出来ない出来できない cannot doくらいなら、頂戴した頂戴ちょうだいした received月給月給げっきゅう salary学校の方学校がっこうほう to the school割戻します割戻わりもどします partially refund」校長はなん what思ったおもった thoughtものか、しばらくおれのかお face見つめてつめて look intently atいたが、しかし顔が大分大分だいぶ considerablyはれていますはれています swollenよと注意した注意ちゅういした cautioned。なるほど何だかなんだか somehow少々少々しょうしょう a bit重たいおもたい heavy feeling; sensationがする。その上べた一面べた一面いちめん all over痒いかゆい itchy mosquitosがよっぽと刺したした bitに相違ない相違そういない no doubt。おれは顔中顔中かおじゅう all over one's faceぼりぼり掻きながらぼりぼりきながら scratching vigorously、顔はいくら膨れたれた swollenって、くち mouthはたしかにきけますから、授業には差し支えませんつかえません no reason one can't do (something)と答えた。校長は笑いながらわらいながら smiling、大分元気元気げんき energetic; having staminaですねと賞めためた complimented (someone)じつ the truthを云うと賞めたんじゃあるまい、ひやかしたひやかした ridiculedんだろう。