学校学校 schoolには宿直宿直 night dutyがあって、職員職員 staffが代る代る代る代る by turnsこれをつとめる。但し但し however狸狸 Tanuki (nickname for the school principal)と赤シャツ赤シャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)は例外例外 an exceptionである。何で何で for what (reason)この両人両人 two peopleが当然の当然の rightful; proper義務義務 obligationを免かれる免かれる avoid; be relieved ofのかと聞いて聞いて askedみたら、奏任待遇奏任待遇 executive privilegeだからと云う云う say; explain。面白くもない面白くもない not amusing; unsatisfactory。月給月給 (monthly) salaryはたくさんとる、時間時間 hoursは少ない少ない few、それで宿直を逃がれる逃がれる escape; shirk (one's duty)なんて不公平不公平 injusticeがあるものか。勝手な勝手な convenient; arbitrary規則規則 rulesをこしらえてこしらえて concoct; fabricate、それが当り前当り前 customary; matter of courseだというような顔をしている顔をしている acting as if ...。よくまああんなにずうずうしくずうずうしく audaciously; shamelessly出来る出来る can doものだ。これについては大分大分 a great deal不平不平 discontent; grievanceであるが、山嵐山嵐 Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)の説説 opinionによると、いくら一人一人 one personで不平を並べた並べた enumerate; list up; citeって通る通る warrant a responseものじゃないそうだ。一人だって二人二人 two peopleだって正しい正しい correct; in the right事事 act; factなら通りそうなものだ。山嵐は might is right という英語英語 Englishを引いて引いて quote説諭説諭 admonition; exhortationを加えた加えた addedが、何だか何だか somehow要領を得ない要領を得ない can't follow (the meaning)から、聞き返して聞き返して asked in responseみたら強者強者 the strongestの権利権利 right; privilegeと云う意味意味 meaningだそうだ。強者の権利ぐらいなら昔昔 long agoから知っている知っている know about; be aware of。今さら今さら now; at this point山嵐から講釈講釈 explanationをきかなくってもいい。強者の権利と宿直とは別別 separate問題問題 problem; issueだ。狸や赤シャツが強者だなんて、誰誰 whoが承知する承知する acknowledge; agree toものか。議論議論 argument; debateは議論としてこの宿直がいよいよおれの番番 turn (to do something)に廻って来た廻って来た came around。一体一体 in fact疳性疳性 highly particular about (疳性 = 癇性)だから夜具蒲団夜具蒲団 beddingなどは自分の自分の one's ownものへ楽に楽に comfortably寝ない寝ない don't sleepと寝たような心持ち心持ち feelingがしない。小供小供 childの時時 time; periodから、友達友達 friendのうちへ泊った泊った stay overnight事はほとんどないくらいだ。友達のうちでさえ厭厭 disagreeableなら学校の宿直はなおさら厭だ。厭だけれども、これが四十円四十円 forty yenのうちへ籠っている籠っている included inなら仕方がない仕方がない can't be avoided。我慢して我慢して tolerate; endure勤めて勤めて perform one's dutyやろう。
教師教師 instructorsも生徒生徒 studentsも帰って帰って return homeしまったあとで、一人一人 alone; by oneselfぽかんとぽかんと vacantly; blankly; like a foolしているのは随分随分 very much; terribly間が抜けた間が抜けた stupid; out of placeものだ。宿直部屋宿直部屋 night duty roomは教場教場 classroomsの裏手裏手 back side; behindにある寄宿舎寄宿舎 dormitoryの西はずれ西はずれ west endの一室一室 single roomだ。ちょっとはいってみたが、西日西日 setting sun (lit: western sun)をまともにまともに directly受けて受けて receive、苦しくって苦しくって excruciating居たたまれない居たたまれない cannot bear to stay。田舎田舎 the countryだけあってだけあって as expected of秋秋 autumnがきても、気長に気長に persistently; in no hurry (to change)暑い暑い hotもんだ。生徒の賄賄 board (dormitory meals)を取りよせて取りよせて send for晩飯晩飯 evening mealを済ました済ました finishedが、まずいには恐れ入った恐れ入った be astonished。よくあんなものを食って食って eat、あれだけに暴れられた暴れられた be unruly; run amuckもんだ。それで晩飯を急いで急いで hurriedly四時半四時半 4:30に片付けて片付けて finish upしまうんだから豪傑豪傑 heroic; extraordinaryに違いないに違いない without a doubt。飯飯 mealは食ったが、まだ日日 the sunが暮れない暮れない set; go downから寝る寝る go to bed訳に行かない訳に行かない can't do ...。ちょっと温泉温泉 onsenに行きたく行きたく want to goなった。宿直宿直 night dutyをして、外へ出る外へ出る go outのはいい事事 act; factだか、悪るい悪るい bad (not allowed)事だかしらないが、こうつくねんとつくねんと vacantly; idlyして重禁錮重禁錮 imprisonment (with hard labor); close confinement同様同様 equivalentな憂目憂目 misery; sufferingに逢う逢う meet with; experienceのは我慢の出来る我慢の出来る tolerableもんじゃない。始めて始めて the first time学校学校 the schoolへ来た来た came (to)時当直当直 on dutyの人人 personはと聞いたら聞いたら inquired、ちょっと用達用達 errandに出た出た went outと小使小使 janitorが答えた答えた answeredのを妙妙 odd; strangeだと思った思った thoughtが、自分自分 oneselfに番番 (one's) turnが廻って廻って come aroundみると思い当る思い当る reconsider。出る出る go out方方 alternative; choiceが正しい正しい correct; rightのだ。おれは小使にちょっと出てくると云ったら、何か何か some (kind of)ご用ご用 businessですかと聞くから、用じゃない、温泉へはいるんだと答えて、さっさと出掛けた出掛けた set out。赤手拭赤手拭 red towelは宿宿 lodgingsへ忘れて来た忘れて来た left behindのが残念残念 unfortunateだが今日今日 todayは先方先方 one's destinationで借りる借りる borrowとしよう。
それからかなりゆるりと、出たりはいったりして出たりはいったりして getting in and out (of the onsen bath)、ようやく日暮方日暮方 sundown; duskになったから、汽車汽車 (steam) trainへ乗って乗って boarded (train)古町古町 Komachi (place name)の停車場停車場 stop; stationまで来て来て came (to)下りた下りた got off (train)。学校学校 the schoolまではこれから四丁四丁 four chō (about 450 meters, or 500 yards)だ。訳はないと訳はないと leisurely; easilyあるき出すあるき出す start walkingと、向うから向うから from the opposite direction狸狸 Tanuki (nickname for the school principal)が来た。狸はこれからこの汽車で温泉温泉 onsenへ行こう行こう goと云うと云う (citation - makes a noun of the preceding clause)計画計画 planなんだろう。すたすたすたすた at a brisk pace急ぎ足急ぎ足 with hurried stepsにやってきたが、擦れ違った擦れ違った passed each other時時 time; occasionおれの顔顔 faceを見た見た saw; looked atから、ちょっと挨拶挨拶 greeting; salutationをした。すると狸はあなたは今日今日 todayは宿直宿直 night dutyではなかったですかねえと真面目くさって真面目くさって assuming a serious air聞いた聞いた asked。なかったですかねえもないもんだ。二時間二時間 two hours前前 earlierおれに向って向って facing今夜今夜 tonightは始めての始めての first (time)宿直ですね。ご苦労さまご苦労さま good luck; your effort is appreciated。と礼礼 acknowledgementを云った云った said; spokeじゃないか。校長校長 principalなんかになるといやに曲りくねった曲りくねった twisted; meandering言葉言葉 wordsを使う使う useもんだ。おれは腹が立った腹が立った became annoyedから、ええ宿直です。宿直ですから、これから帰って帰って return泊る泊る stay overnight事事 act; factはたしかに泊りますと云い捨てて云い捨てて say in parting済まして済まして conclude (a matter)あるき出した。竪町竪町 Tatemachi (place name)の四つ角四つ角 street corner; intersectionまでくると今度今度 this timeは山嵐山嵐 Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)に出っ喰わした出っ喰わした met up with; ran across。どうも狭い狭い narrow; confined; limited所所 placeだ。出てあるきさえすれば必ず必ず without fail誰か誰か someoneに逢う逢う meet; run into。「おい君君 youは宿直じゃないか」と聞くから「うん、宿直だ」と答えたら答えたら replied、「宿直が無暗に無暗に indiscreetly出てあるくなんて、不都合不都合 impropriety; misconductじゃないか」と云った。「ちっとも不都合なもんか、出てあるかない方方 alternative; choiceが不都合だ」と威張って威張って assert oneself; talk bigみせた。「君のずぼらずぼら casual attitudeにも困る困る have difficulty (with)な、校長か教頭教頭 head teacherに出逢う出逢う meet; run intoと面倒面倒 trouble; difficultyだぜ」と山嵐に似合わない似合わない uncharacteristic; unbecoming事を云うから「校長にはたった今たった今 just now逢った。暑い暑い hot時時 time; periodには散歩散歩 walk; strollでもしないと宿直も骨骨 hard work (from 骨を折る)でしょうと校長が、おれの散歩をほめたよ」と云って、面倒臭い面倒臭い tiresomeから、さっさと学校へ帰って来た。
それから日日 the sunはすぐくれる。くれてから二時間二時間 two hoursばかりは小使小使 janitorを宿直部屋宿直部屋 night duty roomへ呼んで呼んで called; invited話をした話をした talkedが、それも飽きた飽きた grow tired ofから、寝られないまでも寝られないまでも even if I couldn't sleep yet床床 bedへはいろうと思って思って thought、寝巻寝巻 nightclothesに着換えて着換えて change clothes、蚊帳蚊帳 mosquito nettingを捲くって捲くって lift up; roll up、赤い赤い red毛布毛布 blanketを跳ねのけて跳ねのけて push aside、とんと尻持を突いて尻持を突いて fall onto one's rear、仰向け仰向け supine; lying face upになった。おれが寝るときにとんと尻持をつくのは小供小供 childの時時 time; periodからの癖癖 habitだ。わるい癖だと云って云って say小川町小川町 Ogawamachi (place name)の下宿下宿 lodgingに居た居た be; live時分時分 period (time)、二階下二階下 first floor; below the second floorに居た法律学校法律学校 law schoolの書生書生 studentが苦情苦情 complaintを持ち込んだ持ち込んだ lodged (a complaint)事事 act; factがある。法律の書生なんてものは弱い弱い weak癖に癖に though; in spite of、やに口口 mouthが達者達者 expert; skilledなもので、愚な愚な foolish; idiotic事を長たらしく長たらしく longwindedly述べ立てる述べ立てる relate at great lengthから、寝る時にどんどん音がする音がする make a soundのはおれの尻尻 rearがわるいのじゃない。下宿の建築建築 architecture; constructionが粗末粗末 crude; shabbyなんだ。掛ケ合う掛ケ合う negotiate; haggleなら下宿へ掛ケ合えと凹まして凹まして silence (someone)やった。この宿直部屋は二階二階 second floorじゃないから、いくら、どしんと倒れて倒れて fall; tumbleも構わない構わない doesn't matter。なるべく勢よく勢よく with force; vigorously倒れないと寝た寝た sleptような心持ち心持ち feelingがしない。ああ愉快愉快 pleasure; happinessだと足足 legsをうんと延ばす延ばす stretch outと、何だか何だか something両足両足 both legsへ飛び付いた飛び付いた fly at; leap at。ざらざらしてざらざらして coarse; rough蚤蚤 fleasのようでもないからこいつあと驚ろいて驚ろいて be surprised、足を二三度二三度 two or three times毛布の中中 inside; withinで振って振って shakeみた。するとざらざらと当った当った hit; struckものが、急に急に suddenly殖え出して殖え出して began to increase脛脛 legsが五六カ所五六カ所 five or six places、股股 thighsが二三カ所二三カ所 two or three places、尻尻 hipsの下下 beneathでぐちゃりとぐちゃりと with a squish踏み潰した踏み潰した crushedのが一つ一つ one、臍臍 navelの所所 place; location; areaまで飛び上がった飛び上がった jumped up ontoのが一つ――いよいよ驚ろいた。早速早速 immediately起き上って起き上って jumped (up) out of bed、毛布をぱっと後ろ後ろ back; behindへ抛る抛る throw; hurlと、蒲団蒲団 futonの中から、バッタバッタ grasshopperが五六十五六十 fifty or sixty飛び出した飛び出した flew out; jumped out。正体正体 true nature; true identityの知れない知れない don't know; can't tell時は多少多少 somewhat気味が悪るかった気味が悪るかった felt uneasyが、バッタと相場が極まって相場が極まって situation is assessedみたら急に腹が立った腹が立った became angry。バッタの癖癖 (particular) wayに人人 a personを驚ろかしやがって、どうするか見ろどうするか見ろ see what you get!と、いきなり括り枕括り枕 rolled (cylindrical) pillowを取って取って grab; take、二三度二三度 two or three times擲きつけた擲きつけた stuck; beatが、相手相手 opponentが小さ過ぎる小さ過ぎる too smallから勢よく抛げつける抛げつける hurl; fling割に割に considering; in proportion to利目利目 effectがない。仕方がない仕方がない it was of no useから、また布団布団 futonの上上 on top ofへ坐って坐って sat、煤掃煤掃 house cleaningの時に蓙蓙 mattingを丸めて丸めて roll up畳畳 tatami (floor mat)を叩く叩く beatように、そこら近辺近辺 vicinityを無暗に無暗に blindly; randomlyたたいた。バッタが驚ろいた上に上に in addition to、枕枕 pillowの勢で飛び上がるものだから、おれの肩肩 shoulderだの、頭頭 headだの鼻の先鼻の先 tip of one's noseだのへくっ付いたりくっ付いたり stick to、ぶつかったりする。顔顔 faceへ付いた付いた stuck to奴奴 onesは枕で叩く訳に行かない訳に行かない can't ...から、手手 handで攫んで攫んで grasp、一生懸命一生懸命 with all one's mightに擲きつける。忌々しい忌々しい vexatious; annoying事に、いくら力力 power; strengthを出して出して put forthも、ぶつかる先先 objective; destinationが蚊帳だから、ふわりと動く動く move; give wayだけで少しも少しも (not) in the least手答手答 response; reactionがない。バッタは擲きつけられたまま蚊帳へつらまっている。死に死に dyingもどうもしない。ようやくの事に三十分三十分 thirty minutesばかりでバッタは退治た退治た subdued; eradicated。箒箒 broomを持って来て持って来て broughtバッタの死骸死骸 remains; (dead) bodiesを掃き出した掃き出した swept up。小使が来て何ですか何ですか what is itと云う云う say; askから、何ですかもあるもんか、バッタを床の中に飼っとく飼っとく keep; rear; raise (animals)奴がどこの国国 country; regionにある。間抜間抜 simpleton; half-witめ。と叱ったら叱ったら scolded、私私 Iは存じません存じません don't know (anything about it)と弁解弁解 plea; defenseをした。存じませんで済む済む end; be settledかと箒を椽側椽側 veranda; corridorへ抛り出したら、小使は恐る恐る恐る恐る timidly箒を担いで担いで to shoulder帰って行った帰って行った retreated; went back。
おれは早速早速 immediately寄宿生寄宿生 boarding studentsを三人三人 three (people)ばかり総代総代 representative; delegateに呼び出した呼び出した summoned。すると六人六人 six (people)出て来た出て来た appeared。六人だろうが十人十人 ten (people)だろうが構う構う matter; make a differenceものか。寝巻寝巻 bedclothesのまま腕まくり腕まくり rolled up sleevesをして談判談判 dialogueを始めた始めた began。
「なんでバッタバッタ grasshoppersなんか、おれの床床 bedの中中 in; insideへ入れた入れた put in; placed」
「バッタた何何 whatぞな」と真先真先 right in frontの一人一人 one (person)がいった。やに落ち付いて落ち付いて relaxed; casualいやがる。この学校学校 schoolじゃ校長校長 principalばかりじゃない、生徒生徒 studentsまで曲りくねった曲りくねった twisted; convoluted言葉言葉 wordsを使う使う use; applyんだろう。
「バッタを知らない知らない don't knowのか、知らなけりゃ見せて見せて showやろう」と云った云った saidが、生憎生憎 unfortunately掃き出して掃き出して swept upしまって一匹も居ない一匹も居ない not one (creature) was present。また小使小使 janitorを呼んで呼んで call for、「さっきのバッタを持ってこい持ってこい bring here」と云ったら、「もう掃溜掃溜 rubbish heapへ棄てて棄てて threw outしまいましたが、拾って参りましょう拾って参りましょう go and collect (humble form)か」と聞いた聞いた asked。「うんすぐ拾って来い拾って来い go get」と云うと小使は急いで急いで hurriedly馳け出した馳け出した rushed outが、やがて半紙半紙 writing paperの上上 on top ofへ十匹十匹 ten (creatures)ばかり載せて載せて placing (onto)来て来て came (back)「どうもお気の毒お気の毒 it's a pity; I'm sorryですが、生憎夜夜 nightでこれだけしか見当りません見当りません spot; find; locate。あしたになりましたらもっと拾って参ります」と云う。小使まで馬鹿馬鹿 fool; idiotだ。おれはバッタの一つ一つ oneを生徒に見せて「バッタたこれだ、大きなずう体をして大きなずう体をして being grown up; grown large、バッタを知らないた、何の事事 act; factだ」と云うと、一番左一番左 left-mostの方方 directionに居た居た was (in a place)顔の丸い顔の丸い round-faced奴奴 fellowが「そりゃ、イナゴイナゴ long-headed locustぞな、もし」と生意気に生意気に audaciouslyおれを遣り込めた遣り込めた talked down to; refuted。「篦棒め篦棒め idiots!、イナゴもバッタも同じ同じ sameもんだ。第一第一 first (of all)先生先生 teacherを捕まえて捕まえて lay hold of; deal withなもしなもし (sentence ending added in local dialect)た何だ。菜飯菜飯 rice with mustard greensは田楽田楽 short for "dengaku miso"の時時 time; occasionより外に外に apart from食う食う eatもんじゃない」とあべこべに遣り込めてあべこべに遣り込めて turning the tables (on someone)やったら「なもしと菜飯とは違う違う differentぞな、もし」と云った。いつまで行ってもいつまで行っても no matter what; in all situationsなもしを使う奴だ。
「イナゴでもバッタでも、何で何で why; for what reasonおれの床の中へ入れたんだ。おれがいつ、バッタを入れてくれと頼んだ頼んだ requested」
「誰も誰も no one入れやせんがな」
「入れないものが、どうして床の中に居るんだ」
「イナゴは温い温い warm所所 placesが好き好き favored; preferredじゃけれ、大方大方 most likely; in all probability一人で一人で on one's ownおはいりたのじゃあろ」
けちなけちな mean-spirited; small-minded奴等奴等 folksだ。自分自分 oneselfで自分のした事事 act; factが云えない云えない can't say; won't admitくらいなら、てんでしないがいい。証拠証拠 proofさえ挙がらなければ挙がらなければ doesn't surface (provisional form)、しらを切るしらを切る feign ignoranceつもりで図太く図太く impudent; shameless構えて構えて assume a posture (of defense)いやがる。おれだって中学中学 middle school (short for 中学校)に居た居た was (in a place)時分時分 time; periodは少し少し a bit; someはいたずらもしたもんだ。しかしだれがしたと聞かれた聞かれた was asked時時 time; when ...に、尻込みをする尻込みをする hesitate; shrink fromような卑怯な卑怯な cowardly事はただの一度一度 one timeもなかった。したものはしたので、しないものはしないに極ってる極ってる is a given; is certain。おれなんぞは、いくら、いたずらをしたって潔白な潔白な innocent; of integrityものだ。嘘を吐いて嘘を吐いて telling lies罰罰 punishmentを逃げる逃げる avoid; escape (from)くらいなら、始めから始めから from the start; in the first placeいたずらなんかやるものか。いたずらと罰はつきもんだ。罰があるからいたずらも心持ちよく心持ちよく with a good feeling; with a clear conscience出来る出来る can do。いたずらだけで罰はご免蒙るご免蒙る be excused from; beg one's way out ofなんて下劣な下劣な sordid; vulgar根性根性 nature; dispositionがどこの国にどこの国に where; in what land流行る流行る be (widely) acceptedと思ってる思ってる think; considerんだ。金金 moneyは借りる借りる borrowが、返す返す return; pay back事はご免ご免 sorry; excuse meだと云う連中連中 peopleはみんな、こんな奴等が卒業して卒業して graduateやる仕事仕事 work; taskに相違ない相違ない no doubt that ...。全体全体 after all; (why) in the world中学校へ何何 whatしにはいってるんだ。学校学校 schoolへはいって、嘘を吐いて、胡魔化して胡魔化して cheat; swindle、陰で陰で in the shadowsこせこせこせこせ fidgety; restless生意気な生意気な smart-aleck; brazen悪いたずら悪いたずら devious mischiefをして、そうして大きな面大きな面 big-headed; with a swaggerで卒業すれば教育教育 educationを受けた受けた receivedもんだと癇違い癇違い mistaken ideaをしていやがる。話せない話せない ignorant; lacking good sense雑兵雑兵 commoners; rank and fileだ。
おれはこんな腐った腐った corrupt; depraved了見了見 intention; viewの奴等奴等 folksと談判談判 conversationするのは胸糞が悪るい胸糞が悪るい be disgusted; find revoltingから、「そんなに云われなきゃ云われなきゃ can't say; won't admit、聞かなくっていい聞かなくっていい no point in listening (to you)。中学校中学校 middle schoolへはいって、上品上品 decencyも下品下品 indecencyも区別区別 distinctionが出来ない出来ない can't doのは気の毒な気の毒な sorry; pitiful; patheticものだ」と云って六人六人 six (people)を逐っ放して逐っ放して dispatched; sent awayやった。おれは言葉言葉 words; speechや様子様子 appearanceこそあまり上品じゃないが、心心 heart; spiritはこいつらよりも遥かに遥かに by far上品なつもりだ。六人は悠々と悠々と quietly; calmly引き揚げた引き揚げた withdrew; took (their) leave。上部上部 exterior; outward appearanceだけは教師教師 instructorのおれよりよっぽどえらく見える見える to appear。実は実 in fact落ち付いている落ち付いている calm; composedだけなお悪るい悪るい malicious; evil。おれには到底到底 (not) at allこれほどの度胸度胸 temerity; gallはない。
それからまた床床 bedへはいって横横 sideways; proneになったら、さっきの騒動騒動 commotionで蚊帳蚊帳 mosquito nettingの中中 insideはぶんぶん唸って唸って humming; buzzingいる。手燭手燭 candlestickをつけて一匹一匹 one (critter)ずつ焼く焼く burnなんて面倒な面倒な troublesome事事 act; factは出来ないから、釣手釣手 (mosquito net) hanger; hooksをはずして、長く長く lengthwise畳んで畳んで foldedおいて部屋部屋 roomの中で横竪横竪 back and forth and sideways十文字に十文字に in a cross pattern振ったら振ったら shook、環環 (hanger) ringが飛んで飛んで flew手の甲手の甲 back of the handをいやというほど撲った撲った hit; struck。三度目に三度目に for the third time床へはいった時時 timeは少々少々 somewhat落ち付いた落ち付いた relaxed; settled downがなかなか寝られない寝られない cannot sleep。時計時計 clockを見る見る look atと十時半十時半 10:30だ。考えて考えて think about; considerみると厄介な厄介な troublesome; difficult所所 placeへ来た来た came (to)もんだ。一体一体 in fact; properly speaking中学中学 middle school (short for 中学校)の先生先生 teacherなんて、どこへ行って行って go (to)も、こんなものを相手にする相手にする deal withなら気の毒な気の毒な pitiableものだ。よく先生が品切れ品切れ out of stock; all goneにならない。よっぽど辛防強い辛防強い persevering; long-suffering朴念仁朴念仁 misfit; geekがなるんだろう。おれには到底やり切れないやり切れない can't manage。それを思う思う considerと清清 Kiyo (name of Botchan's former maidservant)なんてのは見上げた見上げた admirable; praiseworthyものだ。教育もない身分身分 social standingもない婆さん婆さん old womanだが、人間人間 human beingとしてはすこぶる尊とい尊とい noble; venerable。今まで今まで until nowはあんなに世話になって世話になって receive (someone's) care別段別段 particularly難有い難有い gratefulとも思わなかったが、こうして、一人で一人で by oneself遠国遠国 distant land; faraway placeへ来てみると、始めて始めて for the first timeあの親切親切 kindnessがわかる。越後越後 Echigo (old province in north-central Japan - now part of Niigata-ken)の笹飴笹飴 sweet rice jelly wrapped in a bamboo leafが食いたければ食いたければ want to eat (provisional form)、わざわざ越後まで買い買い buyに行って行って go (to)食わしてやっても、食わせるだけの価値価値 value; worthは充分充分 enough; sufficientある。清はおれの事の事 concerning ...を欲欲 desire; greedがなくって、真直な真直な upright; straight気性気性 disposition; temperamentだと云って、ほめるが、ほめられるおれよりも、ほめる本人本人 the person in question; the said personの方方 alternativeが立派な立派な magnificent人間だ。何だか何だか somehow; for some reason清に逢いたく逢いたく want to see (someone)なった。
清清 Kiyo (name of Botchan's former maidservant)の事の事 concerning ...を考えながら考えながら while thinking about、のつそつしているのつそつしている letting one's mind wander in a restless stateと、突然突然 suddenlyおれの頭の上で頭の上で overhead、数数 numbersで云ったら云ったら say; express三四十人三四十人 thirty or forty peopleもあろうか、二階二階 second floorが落っこちる落っこちる fall in; collapseほどどん、どん、どんと拍子を取って拍子を取って in time; with a rhythm床板床板 floorboardsを踏みならす踏みならす stomp (one's feet)音音 sound; noiseがした。すると足音足音 sound of feetに比例したに比例した in proportion to大きな大きな loud (voice; sound)鬨の声鬨の声 battle cryが起った起った arose。おれは何事何事 somethingが持ち上がった持ち上がった happenedのかと驚ろいて驚ろいて be surprised飛び起きた飛び起きた jumped up; jumped out of bed。飛び起きる途端に途端に just as ...、ははあさっきの意趣返し意趣返し retaliationに生徒生徒 studentsがあばれるのだなと気がついた気がついた realized。手前手前 you (general); a personのわるい事事 act; factは悪るかったと言って言って say; admitしまわないうちは罪罪 crime; transgression; guiltは消えない消えない will not go awayもんだ。わるい事は、手前達手前達 you (plural)に覚覚 awareness; understandingがあるだろう。本来本来 by nature; rightfullyなら寝て寝て sleepから後悔後悔 regret; remorseしてあしたの朝朝 morningでもあやまりに来るあやまりに来る come and apologizeのが本筋本筋 proper course of actionだ。たとい、あやまらないまでも恐れ入って恐れ入って be too ashamed、静粛に静粛に quietly寝ているべきだ。それを何だ何だ what is (this)この騒ぎ騒ぎ uproar; ruckusは。寄宿舎寄宿舎 dormitoryを建てて建てて build; construct豚豚 pigs; hogsでも飼って飼って raise (animals)おきあしまいしまい probably wouldn't do (= しないだろう)し。気狂い気狂い lunacyじみたじみた smacking of; bordering on真似真似 behaviorも大抵にするがいい大抵にするがいい enough of ...; should stop ...。どうするか見ろどうするか見ろ I'll show you!と、寝巻寝巻 bedclothesのまま宿直部屋宿直部屋 night duty roomを飛び出して飛び出して flew out of、楷子段楷子段 staircaseを三股半に三股半に three steps at a time二階二階 second floorまで躍り上がった躍り上がった sprang up; raced up。すると不思議な不思議な strange; mysterious事に、今まで頭の上で、たしかにどたばたどたばた noisily暴れて暴れて riot; act unrulyいたのが、急に急に suddenly静まり返って静まり返って become deathly still、人声人声 human voiceどころか足音もしなくなった。これは妙妙 odd; curiousだ。ランプはすでに消して消して put out; extinguishあるから、暗くて暗くて darkどこに何何 whatが居る居る be (in a place)か判然と判然と clearly; distinctly分らない分らない can't tell; can't understandが、人気人気 sign of life; human presenceのあるとないとは様子様子 air; atmosphereでも知れる知れる can tell。長く長く lengthwise東から西へ東から西へ from east to west貫いた貫いた passed through; connected廊下廊下 hallwayには鼠鼠 mouse一匹も一匹も (not) one creature隠れて隠れて hidingいない。廊下のはずれから月月 moonがさして、遥か遥か far off向う向う distance; beyondが際どく際どく marginally; just barely明るい明るい bright。どうも変変 strangeだ、おれは小供小供 childの時時 time; periodから、よく夢夢 dreamsを見る見る see癖癖 habit; propensityがあって、夢中夢中 unconsciousness; tranceに跳ね起きて跳ね起きて jump out of bed、わからぬ寝言寝言 sleep talkingを云って、人人 people; othersに笑われた笑われた be laughed at事がよくある。十六七十六七 sixteen or seventeenの時ダイヤモンドを拾った拾った picked up; found夢を見た晩晩 nightなぞは、むくりと立ち上がってむくりと立ち上がって sit up abruptly (むくりと = むっくりと)、そばに居た兄兄 (older) brotherに、今今 (just) nowのダイヤモンドはどうしたと、非常な非常な unusual; extreme勢勢 energy; vigorで尋ねた尋ねた looked for; asked aboutくらいだ。その時は三日三日 three daysばかりうち中中 throughoutの笑い草笑い草 laughingstock; object of amusementになって大いに大いに to a great extent弱った弱った was troubled。ことによると今のも夢かも知れない。しかしたしかにあばれたに違いないに違いない without a doubtがと、廊下の真中真中 middle ofで考え込んで考え込んで brood (over something)いると、月のさしている向うのはずれで、一二三一二三 one! two! three!わあと、三四十人の声声 voicesがかたまって響いた響いた echoed; resoundedかと思う思う perceived間もなく間もなく immediately (following); soon after、前のように前のように as before拍子を取って、一同一同 all (of them)が床板を踏み鳴らした。それ見ろ夢じゃないやっぱり事実事実 fact; realityだ。静か静か quietにしろ、夜なか夜なか middle of the nightだぞ、とこっちも負けん負けん not to be defeated; comparableくらいな声声 voiceを出して出して call out (voice)、廊下を向うへ馳けだした馳けだした ran toward。おれの通る通る pass through; traverse路路 way; pathは暗い、ただはずれに見える月あかりが目標目標 mark; sign; guideだ。おれが馳け出して二間二間 two ken (about 3.5 meters, or 4 yards)も来た来た came; progressedかと思うと、廊下の真中で、堅い堅い hard大きな大きな largeものに向脛向脛 shinをぶつけて、あ痛い痛い Ouch!が頭へひびく間に間に while ...、身体身体 bodyはすとんとすとんと with a thump前前 forwardへ抛り出された抛り出された was thrown; was hurled。こん畜生こん畜生 Damn!と起き上がって起き上がって get upみたが、馳けられない。気はせく気はせく mind hurried (onward)が、足足 legだけは云う事を利かない利かない didn't respond。じれったいじれったい impatient; irritatedから、一本足で一本足で on one leg飛んで来たら、もう足音も人声も静まり返って、森と森と in deep silenceしている。いくら人間人間 a person; peopleが卑怯卑怯 cowardlyだって、こんなに卑怯に出来る出来る be made; be formedものじゃない。まるで豚だ。こうなれば隠れて隠れて hidingいる奴奴 fellowsを引きずり出して引きずり出して drag out、あやまらせてやるまではひかないひかない won't retreat; won't withdrawぞと、心を極めて心を極めて with determination寝室寝室 bedroomの一つ一つ one (of)を開けて開けて open中中 insideを検査検査 inspect; checkしようと思ったが開かない。錠錠 lockをかけてあるのか、机机 desksか何か何か something積んで積んで pile up; stack up立て懸けて立て懸けて prop up (against)あるのか、押して押して pushも、押しても決して決して (not) by any means; (not) in the least開かない。今度今度 nextは向う合せ向う合せ opposite; facingの北側北側 north sideの室室 roomを試みた試みた tried。開かない事はやっぱり同然同然 the same; likewiseである。おれが戸戸 doorを開けて中に居る奴を引っ捕らまえて引っ捕らまえて grab; seizeやろうと、焦慮てる焦慮てる be flustered; be frustratedと、また東東 eastのはずれで鬨の声と足拍子足拍子 stomping in rhythmが始まった始まった started。この野郎野郎 rascals申し合せて申し合せて by arrangement; conspiring、東西東西 east and west相応じて相応じて acting effectively togetherおれを馬鹿馬鹿 foolにする気気 intentionだな、とは思ったがさてどうしていいか分らない。正直に正直に honestly白状して白状して confessしまうが、おれは勇気勇気 courage; gritのある割合に割合に in comparison to智慧智慧 wisdom; resourcefulnessが足りない足りない insufficient; lacking。こんな時にはどうしていいかさっぱりわからない。わからないけれども、決して負ける負ける be defeatedつもりはない。このままに済まして済まして end up; let it go atはおれの顔にかかわる顔にかかわる affect one's honor; reflect on one's dignity。江戸っ子江戸っ子 native of Tōkyōは意気地がない意気地がない be spineless; be a pushoverと云われるのは残念残念 mortifyingだ。宿直をして鼻垂れ小僧鼻垂れ小僧 driveling bratsにからかわれてからかわれて be teased; be picked on、手のつけようがなくって手のつけようがなくって can't handle (something)、仕方がない仕方がない have no choiceから泣き寝入りにした泣き寝入りにした cried oneself to sleepと思われちゃ一生の一生の life-long名折れ名折れ disgraceだ。これでも元元 one's originは旗本旗本 direct retainer of the shōgunだ。旗本の元は清和源氏清和源氏 Seiwa Genji (name)で、多田の満仲多田の満仲 Tada no Manjū (name - Tada Mitsunaka); here may be word play by Sōseki meaning 'ordinary manjū' (bean-jam bun)の後裔後裔 descendantだ。こんな土百姓土百姓 dirt farmer; peasantとは生まれから生まれから from birthして違う違う differentんだ。ただ智慧のないところが惜しい惜しい regrettableだけだ。どうしていいか分らないのが困る困る be troubledだけだ。困ったって負けるものか。正直だから、どうしていいか分らないんだ。世の中に世の中に in this world正直が勝たないで、外外 otherに勝つものがあるか、考えてみろ考えてみろ think about it。今夜中今夜中 tonightに勝てなければ、あした勝つ。あした勝てなければ、あさって勝つ。あさって勝てなければ、下宿下宿 lodgingsから弁当弁当 bentō (packaged meals)を取り寄せて取り寄せて order; have delivered勝つまでここに居る。おれはこう決心決心 resolve; determinationをしたから、廊下の真中へあぐらをかいてあぐらをかいて sit (cross-legged)夜のあけるの夜のあけるの break of dayを待って待って wait forいた。蚊蚊 mosquitosがぶんぶん来たけれども何ともなかった。さっき、ぶつけた向脛を撫でて撫でて touch; rubみると、何だかぬらぬらするぬらぬらする be slippery。血が出る血が出る bleedんだろう。血なんか出たければ勝手に勝手に as (it) likes出るがいい。そのうち最前から最前から from the preceding eventsの疲れ疲れ fatigueが出て、ついうとうと寝てうとうと寝て doze offしまった。何だか騒がしい騒がしい noisy; livelyので、眼が覚めた眼が覚めた woke up時はえっ糞しまったえっ糞しまった Damn it!と飛び上がった。おれの坐ってた坐ってた sitting右側右側 right sideにある戸が半分半分 halfwayあいて、生徒が二人二人 two (people)、おれの前前 front ofに立っている立っている were standing。おれは正気に返って正気に返って regain one's senses、はっと思う途端に、おれの鼻の先鼻の先 tip of the noseにある生徒の足を引っ攫んで引っ攫んで grab、力任せに力任せに with all one's mightぐいとぐいと with a jerk引いたら引いたら pulled、そいつは、どたりとどたりと with a thump仰向仰向 supine; face up positionに倒れた倒れた fell。ざまを見ろざまを見ろ Take that!。残る残る remaining一人一人 one (person)がちょっと狼狽した狼狽した confused; flusteredところを、飛びかかって飛びかかって pounced on、肩を抑えて肩を抑えて grabbed by the shoulders二三度二三度 two or three timesこづき廻したらこづき廻したら shook (by the shoulders)、あっけに取られてあっけに取られて be dumbfounded、眼をぱちぱちさせた眼をぱちぱちさせた blinked (in bewilderment)。さあおれの部屋部屋 roomまで来い来い comeと引っ立てる引っ立てる lead (a person) off; march (a person) toと、弱虫弱虫 weaklings; cowardsだと見えて見えて appear、一も二もなく一も二もなく readily; without complaint尾いて来た尾いて来た came along。夜夜 nightはとうにあけている。
おれが宿直部屋宿直部屋 night duty roomへ連れてきた連れてきた brought; led奴奴 fellowsを詰問詰問 questioning; grillingし始めるし始める begin to doと、豚豚 pigs; hogsは、打って打って hitも擲いて擲いて strikeも豚だから、ただ知らん知らん I don't knowがなで、どこまでも通す通す continue with; stick to了見了見 thought; notionと見えて見えて appear、けっして白状白状 confess; own upしない。そのうち一人来る、二人来る、だんだん二階二階 second floorから宿直部屋へ集まって集まって gatherくる。見る見る look atとみんな眠そう眠そう tired-lookingに瞼をはらしている瞼をはらしている have swollen eyelids。けちなけちな mean; shabby奴等奴等 folksだ。一晩一晩 one nightぐらい寝ない寝ない lose sleepで、そんな面面 faceをして男男 manと云われる云われる be calledか。面でも洗って洗って wash議論議論 debate; disputeに来いと云ってやったが、誰も誰も no one面を洗いに行かない行かない go。
おれは五十人五十人 fifty (people)あまりを相手相手 adversaryに約約 about一時間一時間 one hourばかり押問答押問答 repeated questioning and answeringをしていると、ひょっくりひょっくり suddenly; unexpectedly狸狸 Tanuki (nickname for the school principal)がやって来た。あとから聞いたら聞いたら asked; heard、小使小使 janitorが学校学校 the schoolに騒動騒動 disturbance; troubleがありますって、わざわざ知らせ知らせ notifyに行ったのだそうだ。これしきこれしき such a trifleの事事 matterに、校長校長 principalを呼ぶ呼ぶ call forなんて意気地がなさ過ぎる意気地がなさ過ぎる weak-willed to the extreme。それだから中学校中学校 middle schoolの小使なんぞをしてるんだ。
校長校長 (school) principalはひと通りひと通り briefly; in generalおれの説明説明 explanationを聞いた聞いた listened to。生徒生徒 studentsの言草言草 one's statementもちょっと聞いた。追って追って in due course; in a little while処分する処分する deal withまでは、今まで通り今まで通り as hitherto; as usual学校学校 schoolへ出ろ出ろ attend; make one's appearance。早く早く quickly顔顔 faceを洗って洗って wash、朝飯朝飯 breakfastを食わないと食わないと eat (negative provisional)時間に間に合わない時間に間に合わない be lateから、早くしろと云って云って say寄宿生寄宿生 boarding studentsをみんな放免した放免した released; discharged。手温るい手温るい lax; lenient事事 act; actionだ。おれなら即席に即席に on the spot寄宿生をことごとくことごとく one and all退校退校 expulsion (from school)してしまう。こんな悠長な悠長な easygoing; leisurely事をするから生徒が宿直員宿直員 instructor on night dutyを馬鹿にする馬鹿にする play for a foolんだ。その上その上 on top of thatおれに向って向って turning toward、あなたもさぞさぞ surelyご心配ご心配 troubled (over a matter); upsetでお疲れお疲れ tired; wearyでしょう、今日今日 todayはご授業ご授業 classesに及ばん及ばん it's not necessary to (do something)と云うから、おれはこう答えた答えた answered; responded。「いえ、ちっとも心配じゃありません。こんな事が毎晩毎晩 every nightあっても、命のある間命のある間 while one is still aliveは心配にゃなりません。授業はやります、一晩一晩 one nightぐらい寝なくって寝なくって go without sleep、授業が出来ない出来ない cannot doくらいなら、頂戴した頂戴した received月給月給 salaryを学校の方学校の方 to the schoolへ割戻します割戻します partially refund」校長は何何 whatと思った思った thoughtものか、しばらくおれの顔顔 faceを見つめて見つめて look intently atいたが、しかし顔が大分大分 considerablyはれていますはれています swollenよと注意した注意した cautioned。なるほど何だか何だか somehow少々少々 a bit重たい重たい heavy気気 feeling; sensationがする。その上べた一面べた一面 all over痒い痒い itchy。蚊蚊 mosquitosがよっぽと刺した刺した bitに相違ないに相違ない no doubt。おれは顔中顔中 all over one's faceぼりぼり掻きながらぼりぼり掻きながら scratching vigorously、顔はいくら膨れた膨れた swollenって、口口 mouthはたしかにきけますから、授業には差し支えません差し支えません no reason one can't do (something)と答えた。校長は笑いながら笑いながら smiling、大分元気元気 energetic; having staminaですねと賞めた賞めた complimented (someone)。実実 the truthを云うと賞めたんじゃあるまい、ひやかしたひやかした ridiculedんだろう。