Bunchō

vocabulary bar - use mouse hover or touch to display furigana and definition of underlined terms

十月十月じゅうがつ October早稲田早稲田わせだ Waseda (place name - neighborhood of Waseda University)に移る移うつる transferred; moved (to)。伽藍伽藍がらん (large) temple; cathedralのような書斎書斎しょさい study; reading roomにただ一人一人ひとり one person; single person、片づけた片かたづけた relaxed; composed顔顔かお faceを頬杖で支えて頬杖ほおづえで支ささえて propping one's chin on one's hand(s)いると、三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)が来て来きて came; arrived、鳥鳥とり birdを御飼いなさい御飼おかいなさい (you) should keep (a pet)と云う云いう said; suggested。飼ってもいいと答えた答こたえた answered; replied。しかし念のため念ねんのため to be sure; for good measureだから、何何なに whatを飼うのかねと聞いたら聞きいたら asked、文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)ですと云う返事返事へんじ answer; replyであった。

文鳥は三重吉の小説小説しょうせつ novelに出て来る出でて来くる appearくらいだから奇麗な奇麗きれいな pretty; attractive鳥鳥とり birdに違なかろうに違ちがいなかろう no doubt ...と思って思おもって think; figure; believe、じゃ買って買かって buy; purchaseくれたまえと頼んだ頼たのんだ requested。ところが三重吉は是非是非ぜひ by all means御飼いなさいと、同じ同おなじ same; similarような事事こと matterを繰り返して繰くり返かえして repeatいる。うむ買うよ買うよとやはり頬杖を突いたままで頬杖ほおづえを頬杖を突ついたままで with chin still resting in hands、むにゃむにゃ云ってるむにゃむにゃ云いってる mumblingうちに三重吉は黙ってしまった黙だまってしまった fell silent; stopped talking。おおかた頬杖に愛想を尽かした愛想あいそうを尽つかした run out of patience (with)んだろうと、この時時とき time; moment始めて始はじめて for the first time気がついた気きがついた realized; became aware。

すると三分三分さんぷん three minutesばかりして、今度今度こんど this timeは籠籠かご cageを御買いなさい御買おかいなさい (you) should buy; need to buyと云いだした。これも宜しい宜よろしい fine; very wellと答えると、是非御買いなさいと念を押す念ねんを押おす make sure of; emphasize代りに代かわりに in order to ...、鳥籠鳥籠とりかご bird cageの講釈講釈こうしゃく lecture; expositionを始めた。その講釈はだいぶ込み入った込こみ入いった detailed; involvedものであったが、気の毒な気きの毒どくな regrettable; unfortunate事に、みんな忘れてしまった。ただ好い好いい good; fine; niceのは二十円二十にじゅう円えん twenty yenぐらいすると云う段段だん step; stageになって、急に急きゅうに suddenly; abruptlyそんな高価高価たかい expensiveのでなくっても善かろう善よかろう sufficient; acceptableと云っておいた。三重吉はにやにやしている。

それから全体全体ぜんたい ... in the world; ... on earth (short for 一体いったい全体ぜんたい)どこで買うのかと聞いて見る聞きいて見みる inquire; ask (to find out)と、なにどこの鳥屋鳥屋とりや bird dealerにでもありますと、実に実じつに very; quite; truly平凡な平凡へいぼんな ordinary; banal答答こたえ answerをした。籠はと聞き返す聞きき返かえす asked in returnと、籠ですか、籠はその何ですよその何なんですよ that one、なにどこにかあるでしょう、とまるで雲を攫む雲くもを攫つかむ grasp at cloudsような寛大な寛大関大な expansive; all-encompassing事を云う。でも君君きみ youあてあて clue; idea; leadがなくっちゃいけなかろうと、あたかもいけないような顔をして見せたら、三重吉は頬ぺた頬ほっぺた cheekへ手手て handをあてて、何でも駒込駒込こまごめ Komagome (place name)に籠の名人名人めいじん master; expertがあるそうですが、年寄年寄としより old manだそうですから、もう死んだ死しんだ died; passed awayかも知れませんかも知しれません may have ...と、非常に非常ひじょうに extremely; very much心細く心細こころぼそく unhopeful; lostなってしまった。

何しろ言いだしたものに責任を負わせる責任せきにんを負おわせる assign responsibility (for)のは当然の当然とうぜんの natural; proper事だから、さっそく万事万事ばんじ all thingsを三重吉に依頼する依頼いらいする entrust (to)事にした。すると、すぐ金金かね money; fundsを出せ出だせ put forth; provideと云う。金はたしかにたしかに without fail出した。三重吉はどこで買ったか、七子七子ななこ mat weave, usually silk (short for 七子ななこ織おり)の三つ折三つみっつ折おれ trifoldの紙入紙入かみいれ wallet; billfoldを懐中していて懐中かいちゅうしていて carry in one's pocket、人の人ひとの another's金でも自分の自分じぶんの one's own金でも悉皆悉皆しっかい allこの紙入の中中なか insideに入れる入いれる put into癖癖くせ habit; tendencyがある。自分は三重吉が五円札五円札ごえんさつ five-yen noteをたしかにこの紙入の底底そこ bottom; depthsへ押し込んだ押おし込こんだ pushed (down) intoのを目撃した目撃もくげきした witnessed; confirmed。

かようにして金金かね moneyはたしかに三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)の手手て handに落ちた落おちた fell (into)。しかし鳥鳥とり birdと籠籠かご cageとは容易に容易よういに easily; readilyやって来ないやって来こない did not appear; did not materialize。

そのうち秋秋あき autumnが小春小春こはる Indian summer; mild autumn daysになった。三重吉はたびたび来る来くる come; call; visit。よく女女おんな womenの話話はなし talk (of)などをして帰って行く帰かえって行ゆく depart; return home。文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)と籠の講釈講釈こうしゃく lecture; expositionは全く全まったく (not) at all出ない出でない not appear; not be broached。硝子戸硝子戸ガラスど glass doorsを透して透すかして pass through五尺五尺ごしゃく 5 shaku (about 1.8 meters; about 5 feet)の縁側縁側えんがわ verandaには日日ひ sun; sunlightが好く好よく well; fully当る当あたる hit; strike。どうせ文鳥を飼う飼かう keep (an animal; a pet)なら、こんな暖かい暖あたたかい warm季節季節きせつ seasonに、この縁側へ鳥籠鳥籠とりかご bird cageを据えて据すえて install; set; placeやったら、文鳥も定めし定さだめし surely鳴き善かろう鳴なき善よかろう sing nicely; chirp happilyと思う思おもう imagine; considerくらいであった。

三重吉の小説小説しょうせつ novelによると、文鳥文鳥ぶんちょう bunchōは千代千代千代ちよ千代ちよ chiyo-chiyoと鳴くそうである。その鳴き声鳴なき声ごえ songがだいぶん気に入った気きに入いった met with one's favorと見えて見みえて appeared; seemed、三重吉は千代千代を何度となく何度なんどとなく any number of times使って使つかって use; applyいる。あるいは千代千代ちよ Chiyo (name)と云うと云いう called; named女に惚れて惚ほれて fall for; be in love withいた事事こと fact; matterがあるのかも知れないかも知しれない could be that ...。しかし当人当人とうにん the person in questionはいっこうそんな事を云わない。自分自分じぶん oneself; Iも聞いて聞きいて ask; inquireみない。ただ縁側に日が善く当る。そうして文鳥が鳴かない。

そのうち霜が降り出した霜しもが降ふり出だした frost began to settle。自分は毎日毎日まいにち every day伽藍伽藍がらん (large) temple; cathedralのような書斎書斎しょさい study; reading roomに、寒い寒さむい cold; chilled顔顔かお faceを片づけて片かたづけて compose; relaxみたり、取乱して取乱とりみだして lose control; go to piecesみたり、頬杖を突いたり頬杖ほうづえを突ついたり prop one's chin on one's handsやめたりして暮して暮くらして live; pass one's daysいた。戸戸と doorsは二重二重にじゅう double; two-foldに締め切った締しめ切きった closed up tight。火鉢火鉢ひばち hibachi; brazierに炭炭すみ charcoalばかり継いで継ついで (feed) one after anotherいる。文鳥はついに忘れた忘わすれた forgot。

ところへ三重吉が門口門口かどぐち entranceから威勢よく威勢いせいよく energetically; cheerfully這入って来た這入はいって来きた came in。時時とき timeは宵の口宵よいの口くち early eveningであった。寒いから火鉢の上上うえ over; aboveへ胸から上胸むねから上うえ upper bodyを翳して翳かざして hold up to; hold up over、浮かぬ顔浮うかぬ顔かお long faceをわざとほてらしてほてらして warm upいたのが、急に急きゅうに suddenly陽気陽気ようき lively; jovialになった。三重吉は豊隆豊隆ほうりゅう Hōryū (name)を従えて従したがえて be accompanied byいる。豊隆はいい迷惑迷惑めいわく nuisance; annoyanceである。二人二人ふたり two (people)が籠を一つずつ一ひとつずつ one each持って持もって hold; carryいる。その上に三重吉が大きな大おおきな large箱箱はこ boxを兄き分に兄あにき分ぶんに as leader; as senior member抱えて抱かかえて hold in one's armsいる。五円札五円札ごえんさつ five-yen noteが文鳥と籠と箱になったのはこの初冬初冬はつふゆ early winterの晩晩ばん eveningであった。

三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)は大得意大得意だいとくい highly pleased with oneselfである。まあ御覧なさい御覧ごらんなさい take a lookと云う云いう say; urge。豊隆豊隆ほうりゅう Hōryū (name)その洋灯洋灯ランプ lampをもっとこっちへ出せ出だせ bring over (to)などと云う。そのくせ寒い寒さむい cold; chillyので鼻の頭鼻はなの頭あたま tip of one's noseが少し少すこし a little; a bit紫色紫色むらさきいろ purpleになっている。

なるほど立派な立派りっぱな fine; splendid籠籠かご cageができた。台台だい stand; baseが漆漆うるし lacquerで塗って塗ぬって paintある。竹竹たけ bambooは細く細ほそく finely; in detail削った削けずった carved; cut上に上うえに on top of; in addition to、色が染けてある色いろが染つけてある has been colored。それで三円三円さんえん three yenだと云う。安い安やすい a bargain; a good priceなあ豊隆と云っている。豊隆はうん安いと云っている。自分自分じぶん oneself; Iは安いか高い高たかい expensive; overpricedか判然と判然はんぜんと clearly; definitively判判わからない don't know; can't judgeが、まあ安いなあと云っている。好い好いい good; fine; niceのになると二十円二十円にじゅうえん twenty yenもするそうですと云う。二十円はこれで二返目二返目にへんめ second timeである。二十円に比べてに比くらべて in comparison to安いのは無論である無論むろんである goes without saying。

この漆はね、先生先生せんせい professor、日向日向ひなた sunny placeへ出して出だして put out; set out曝して曝さらして expose toおくうちに黒味黒味くろみ black colorが取れて取とれて be taken; be removedだんだん朱朱しゅ cinnabar; vermillionの色が出て来ます出でて来きます come out; appearから、――そうしてこの竹は一返一返いっぺん once善く善よく well; thoroughly煮た煮にた boiled; steepedんだから大丈夫大丈夫だいじょうぶ alright; okayですよなどと、しきりに説明をして説明せつめいをして explainくれる。何何なに whatが大丈夫なのかねと聞き返す聞きき返かえす ask in returnと、まあ鳥鳥とり birdを御覧なさい、奇麗奇麗きれい attractive; handsomeでしょうと云っている。

なるほど奇麗だ。次の次つぎの next; adjacent間間ま roomへ籠を据えて据すえて place; install四尺四尺よんしゃく 4 shaku (about 1.2 meters; about 4 feet)ばかりこっちから見る見みる look atと少しも動かない動うごかない didn't move。薄暗い薄暗うすぐらい dim; dark中中なか midstに真白真白まっしろ pure whiteに見える。籠の中にうずくまってうずくまって crouch; cowerいなければ鳥とは思えないとは思おもえない wouldn't think that it's ...ほど白い白しろい white。何だか寒そうだ。

寒いだろうねと聞いてみると、そのために箱箱はこ boxを作った作つくった made; builtんだと云う。夜夜よる evening; nightになればこの箱に入れて入いれて put intoやるんだと云う。籠が二つ二ふたつ two (things)あるのはどうするんだと聞くと、この粗末な粗末そまつな rough; crude方方ほう one (of the two); alternativeへ入れて時々時々ときどき occasionally; once in a while行水を使わせる行水ぎょうずいを使つかわせる allow to batheのだと云う。これは少し手数が掛る手数てすうが掛かかる take some effortなと思っていると、それから糞糞ふん excrement; droppingsをして籠を汚します汚よごします make dirty; messから、時々掃除掃除そうじ cleaningをしておやりなさいとつけ加えたつけ加くわえた added。三重吉は文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)のためにはなかなか強硬強硬きょうこう unyielding; adamantである。

それをはいはい引受ける引ひき受うける take on; agree toと、今度今度こんど this time; nextは三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)が袂袂たもと sleeve pocketから粟粟あわ milletを一袋一袋ひとふくろ one bag出した出だした took out; produced。これを毎朝毎朝まいあさ each morning食わせなくっちゃいけません食くわせなくっちゃいけません need to feed。もし餌餌え feed; (pet) foodをかえてやらなければ、餌壺餌壺えつぼ food bowl; food dishを出して殻殻から hullsだけ吹いて吹ふいて blow (off; away)おやんなさい。そうしないと文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)が実実み seedのある粟を一々一々いちいち one by one拾い出さなくっちゃなりません拾ひろい出ださなくっちゃなりません will have to select; will have to seek outから。水水みず waterも毎朝かえておやんなさい。先生先生せんせい professor (used here as form of address)は寝坊寝坊ねぼう late sleeperだからちょうど好いちょうど好いい just right; perfectでしょうと大変大変たいへん very much; terribly文鳥に親切親切しんせつ kindness; considerationを極めて極きわめて be set on; persist inいる。そこで自分自分じぶん oneself; Iもよろしいと万事万事ばんじ all everything受合った受うけ合あった agreed to do; promised。ところへ豊隆豊隆ほうりゅう Hōryū (name)が袂から餌壺と水入水入みずいれ water dishを出して行儀よく行儀ぎょうぎよく politely; ceremoniously自分の前前まえ front ofに並べた並ならべた lined up; placed。こういっさい万事を調えて調ととのえて arrange for; put in orderおいて、実行実行じっこう practice; executionを逼られる逼せまられる be compelled (to do something)と、義理にも義理ぎりにも bound by duty; through obligation (if nothing else)文鳥の世話世話せわ care; safekeepingをしなければならなくなる。内心では内心ないしんでは inside; to oneselfよほど覚束なかった覚束おぼつかなかった had doubts; felt unsureが、まずやってみようとまでは決心した決心けっしんした resolved; set one's mind to。もしできなければ家家うち house; householdのものが、どうかするだろうと思った思おもった thought; reckoned。

やがて三重吉は鳥籠鳥籠とりかご bird cageを叮嚀に叮嚀ていねいに carefully箱箱はこ boxの中中なか insideへ入れて入いれて put into、縁側縁側えんがわ verandaへ持ち出して持もち出だして carry out (to)、ここへ置きます置おきます set; placeからと云って云いって say; explain帰った帰かえった returned (home); departed。自分は伽藍伽藍がらん (large) temple; cathedralのような書斎書斎しょさい study; reading roomの真中真中まんなか middle; centerに床床とこ beddingを展べて展のべて spread out冷か冷ひややか cold; chillに寝た寝ねた turned in; retired (for the evening)。夢夢ゆめ dreamsに文鳥を背負い込んだ背負しょい込こんだ shouldered (a burden; a responsibility)心持心持こころもち feelingは、少し少すこし a little; a bit寒かった寒さむかった was coldが眠って眠ねぶって slumberみれば不断の不断ふだんの usual; ordinary夜夜よる evening; nightのごとく穏か穏おだやか calm; quiet; peacefulである。

翌朝翌朝よくあさ the next morning眼が覚めると眼めが覚さめると upon waking硝子戸硝子ガラス戸ど glass doorsに日が射している日ひが射さしている the sun was shining。たちまち文鳥に餌をやらなければならないなと思った。けれども起きる起おきる get up; get out of bedのが退儀退儀たいぎ arduous (usually 大儀たいぎ)であった。今に今いまに before long; soonやろう、今にやろうと考えて考かんがえて thinkいるうちに、とうとう八時過八時過はちじすぎ after eight (o'clock)になった。仕方がない仕方しかたがない there's no other recourseから顔顔かお faceを洗う洗あらう washついでをもって、冷たい冷つめたい cold; chilly縁縁えん verandaを素足素足すあし bare feetで踏みながら踏ふみながら stepping across、箱の葢葢ふた lidを取って取とって take off; remove鳥籠を明海明海あかるみ bright place; the lightへ出した。文鳥は眼をぱちつかせている。もっと早く早はやく early起きたかったろうと思ったら思おもったら took notice of; considered気の毒になった気きの毒どくになった felt bad for; felt sorry for。

文鳥の眼は真黒真黒まっくろ solid black; jet blackである。瞼瞼まぶた eyelidsの周囲周囲まわり peripheryに細い細ほそい delicate; fine; slender淡紅色の淡紅色ときいろの pink-colored絹糸絹糸きぬいと silk threadを縫いつけた縫ぬいつけた sewed into; embroideredような筋筋すじ line; streakが入っている入はいっている be included; be embedded (in)。眼をぱちつかせるたびに絹糸が急に急きゅうに suddenly寄って寄よって draw near; come together一本一本いっぽん one line; a single lineになる。と思うとまた丸くなる丸まるくなる become rounded。籠籠かご cageを箱から出すや否やや否いなや as soon as ...、文鳥は白い白しろい white首首くび neck; headをちょっと傾けながら傾かたぶけながら tilting; incliningこの黒い黒くろい black眼を移して移うつして shift始めて始はじめて for the first time自分の顔を見た見みた looked at。そうしてちちと鳴いた鳴ないた sang; cried。

自分自分じぶん oneself; Iは静かに静しずかに quietly; gently鳥籠鳥籠とりかご bird cageを箱箱はこ boxの上上うえ top ofに据えた据すえた set; placed; positioned。文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)はぱっと留り木留とまり木ぎ perchを離れた離はなれた left; moved away from。そうしてまた留り木に乗った乗のった jumped onto。留り木は二本二本にほん two (long slender objects)ある。黒味がかった黒味くろみがかった blackened; dark青軸青軸あおじく (wood from a) mountain Japanese apricotをほどよきほどよき proper; just right距離距離きょり distanceに橋と渡して橋はしと渡わたして across a gap横に横よこに side by side; in parallel並べた並ならべた lined up; placed。その一本一本いっぽん one (long slender object)を軽く軽かるく lightly踏まえた踏ふまえた planted oneself on; alighted on足足あし feetを見る見みる look at; observeといかにも華奢華奢きゃしゃ eleganceにできている。細長い細長ほそながい long and slender薄紅薄紅うすくれない light crimsonの端端はし end; extremityに真珠真珠しんじゅ pearlを削った削けずった shaved; whittledような爪爪つめ clawが着いて着ついて be connected to、手頃な手頃てごろな at hand; within reach留り木を甘く甘うまく adeptly; nimbly抱え込んで抱かかえ込こんで grasp ontoいる。すると、ひらりとひらりと lightly; quickly眼先眼先めさき (the scene) before one's eyesが動いた動うごいた moved; shifted。文鳥はすでに留り木の上で方向方向むき direction; orientationを換えて換かえて change; alterいた。しきりに首首くび headを左右左右さゆう left and rightに傾ける傾かたぶける tilt; incline。傾けかけた首をふと持ち直して持もち直なおして recover; straighten back up、心持心持こころもち slightly; just a little前前まえ forwardへ伸した伸のした stretched; extendedかと思ったらかと思おもったら just when one thought that ...、白い白しろい white羽根羽根はね feathers; wingsがまたちらりとちらりと fleetingly; momentarily動いた。文鳥の足は向う向むこう the other sideの留り木の真中真中まんなか middleあたりに具合よく具合ぐあいよく successfully; in good form落ちた落おちた came down (onto); landed (on)。ちちと鳴く鳴なく cry; call。そうして遠くから遠とおくから from a distance自分の顔顔かお faceを覗き込んだ覗のぞき込こんだ peered at。

自分は顔を洗いに洗あらいに in order to wash風呂場風呂場ふろば bathroomへ行った行いった went (to)。帰り帰かえり the way backに台所台所だいどころ kitchenへ廻って廻まわって circle around (to)、戸棚戸棚とだな cupboard; cabinetを明けて明あけて open、昨夕昨夕ゆうべ the prior evening三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)の買って来てくれた買かって来きてくれた went and bought (for me)粟粟あわ milletの袋袋ふくろ bagを出して出だして take out、餌壺餌壺えつぼ food bowl; food dishの中中なか insideへ餌餌え feed; (pet) foodを入れて入いれて put into、もう一つ一ひとつ one (thing)には水水みず waterを一杯一杯いっぱい full up入れて、また書斎書斎しょさい study; reading roomの縁側縁側えんがわ verandaへ出た出でた went out (onto)。

三重吉は用意周到な用意ようい周到しゅうとうな meticulous男男おとこ man; fellowで、昨夕叮嚀に叮嚀ていねいに carefully餌をやる時時とき time; occasionの心得心得こころえ directions; guidelinesを説明して説明せつめいして explain行った。その説説せつ explanationによると、むやみに籠籠かご cageの戸戸と doorを明けると文鳥が逃げ出して逃にげ出だして escape; take flightしまう。だから右の手右みぎの手て right handで籠の戸を明けながら、左の手左ひだりの手て left handをその下下した below; beneathへあてがってあてがって apply; fit (to)、外外そと outsideから出口出口でぐち exitを塞ぐ塞ふさぐ block; coverようにしなくっては危険危険きけん danger; riskだ。餌壺を出す時も同じ同おなじ the same心得でやらなければならない。とその手つき手てつき hand movementsまでして見せたして見みせた demonstrated; showed (how to do)が、こう両方の手両方りょうほうの手て both handsを使って使つかって use; engage、餌壺をどうして籠の中へ入れる事事こと act; actionができるのか、つい聞いておかなかった聞きいておかなかった didn't think to ask。

自分はやむをえず餌壺を持ったまま持もったまま holding; having in hand手の甲手ての甲こう back of the handで籠の戸をそろりとそろりと smoothly上へ押し上げた押おし上あげた pushed upward。同時に同時どうじに at the same time左の手で開いた開あいた open口口くち doorway; entranceをすぐ塞いだ。鳥鳥とり birdはちょっと振り返った振ふり返かえった turn to look; look back (at)。そうして、ちちと鳴いた。自分は出口を塞いだ左の手の処置処置しょち dispositionに窮した窮きゅうした was at a loss (as to how to proceed)。人人ひと a personの隙隙すき gap; break; breachを窺って窺うかがって await逃げるような鳥とも見えないので、何となく何なんとなく somehow; for some reason気の毒になった気きの毒どくになった felt bad for; felt sorry for。三重吉は悪い悪わるい bad; wrong; unjust事を教えた教おしえた taught; instructed。

大きな大おおきな big; large手手て handをそろそろそろそろ slowly; steadily籠籠かご cageの中中なか insideへ入れた入いれた put into。すると文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は急に急きゅうに suddenly羽搏羽搏はばたき fluttering of wingsを始めた始はじめた began; started。細く細ほそく slenderly; in fine strips削った削けずった carved; shaved; whittled竹竹たけ bambooの目目め intervals; spaces betweenから暖かい暖あたたかい warmむく毛むく毛げ down; fluffが、白く白しろく in white form飛ぶ飛とぶ flyほどに翼を鳴らした翼つばさを鳴ならした beat its wings。自分自分じぶん oneself; Iは急に自分の大きな手が厭厭いや disagreeable; detestableになった。粟粟あわ milletの壺壺つぼ bowl; dishと水水みず waterの壺を留り木留とまり木ぎ perchの間間あいだ space betweenにようやく置く置おく set; placeや否やや否いなや as soon as ...、手を引き込ました引ひき込こました drew back。籠の戸戸と doorははたりとはたりと quickly and lightly自然に自然ひとりでに of its own accord落ちた落おちた fell; dropped。文鳥は留り木の上上うえ top ofに戻った戻もどった returned to。白い首首くび headを半ば半なかば halfway横に向けて横よこに向むけて turn sideways; tilt sideways、籠の外外そと outsideにいる自分を見上げた見上みあげた looked up (at)。それから曲げた曲まげた bent首を真直にして真直まっすぐにして straighten足の下足あしの下もと at one's feet; beneath one's feetにある粟と水を眺めた眺ながめた gazed at。自分は食事をしに食事しょくじをしに for a meal; to eat茶の間茶ちゃの間ま tea room; hearth roomへ行った行いった went (to)。

その頃その頃ころ at that time; in those daysは日課日課にっか daily work; daily routineとして小説小説しょうせつ novelを書いて書かいて write; draftいる時分時分じぶん period (of time)であった。飯飯めし mealと飯の間はたいてい机机つくえ deskに向って向むかって turn toward; face筆筆ふで (writing) brush; penを握って握にぎって grip; take upいた。静かな静しずかな quiet時時とき times; momentsは自分で紙紙かみ paperの上を走る走はしる travel (across); traverseペンの音音おと soundを聞く聞きく hear事ができた事ことができた was able to ...。伽藍伽藍がらん (large) temple; cathedralのような書斎書斎しょさい study; reading roomへは誰も這入って来ない誰だれも這入はいって来こない no one enters習慣習慣しゅかん custom; practice; ruleであった。筆の音に淋しさ淋さびしさ loneliness; solitudeと云うと云いう taken as ...意味意味いみ meaning; sense; nuanceを感じた感かんじた felt; perceived朝朝あさ morningも昼昼ひる middayも晩晩ばん eveningもあった。しかし時々時々ときどき sometimes; from time to timeはこの筆の音がぴたりとぴたりと abruptly; completelyやむ、またやめねばならぬ、折折おり time; occasionもだいぶあった。その時は指の股指ゆびの股また between one's fingersに筆を挟んだまま挟はさんだまま (still) holding; gripping手の平手ての平ひら palm of the handへ顎を載せて顎あごを載のせて rest one's chin (on)硝子越に硝子ガラス越ごしに through the glass吹き荒れた吹ふき荒あれた windswept庭庭にわ garden; yardを眺めるのが癖癖くせ habit; tendency; mannerismであった。それが済む済すむ be finished; be concludedと載せた顎を一応一応いちおう once撮んで見る撮つまんで見みる give a pinch (to); try tugging at。それでも筆と紙がいっしょにならない時は、撮んだ顎を二本の指二本にほんの指ゆび two fingersで伸して見る伸のして見みる try to stretch; try to extend。すると縁側縁側えんがわ verandaで文鳥がたちまちたちまち suddenly; at once千代千代千代千代ちよちよ chiyo-chiyoと二声鳴いた二声ふたこえ鳴ないた sang out in succession。

筆を擱いて擱おいて lay down; set aside、そっと出て見る出でて見みる go out (to see)と、文鳥は自分の方方ほう directionを向いた向むいた turned towardまま、留り木の上から、のめりそうにのめりそうに leaning (almost too far) forward白い胸胸むね breastを突き出して突つき出だして thrust out、高く高たかく at high pitch千代と云った云いった sang; cried。三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)が聞いたらさぞ喜ぶ喜よろこぶ be pleased; be delightedだろうと思う思おもう think; considerほどな美い美いい fine; wonderful声声こえ voiceで千代と云った。三重吉は今に今いまに before long; in time馴れる馴なれる grow accustomed (to); feel comfortableと千代と鳴きますよ、きっと鳴きますよ、と受合って受合うけあって assure; guarantee帰って行った帰かえって行いった returned; departed (for home)。

自分自分じぶん oneself; Iはまた籠籠かご cageの傍傍そば proximityへしゃがんだ。文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は膨らんだ膨ふくらんだ plump; rounded; puffed-up首首くび headを二三度二三度にさんど several times竪横竪横たてよこ up and down, side-to-sideに向け直した向むけ直なおした repositioned。やがて一団一団ひとかたまり one single lumpの白い白しろい white体体からだ bodyがぽいと留り木留とまり木ぎ perchの上上うえ top ofを抜け出した抜ぬけ出だした broke away from。と思うとと思おもうと as soon as (one realizes) ...奇麗な奇麗きれいな exquisite足の爪足あしの爪つめ clawsが半分半分はんぶん halfwayほど餌壺餌壺えつぼ food bowl; food dishの縁縁ふち edge; rimから後後うしろ behind; in backへ出た出でた protruded (from)。小指小指こゆび little fingerを掛けて掛かけて applyもすぐ引っ繰り返りそうな引ひっ繰くり返かえりそうな looking like it would tip over餌壺は釣鐘釣鐘つりがね (large and heavy) temple bellのように静か静しずか quiet; stillである。さすがに文鳥は軽い軽かるい light; airyものだ。何だか何なんだか somehow淡雪淡雪あわゆき light snowfall; dusting of snowの精精せい spirit; spriteのような気気き feeling; impressionがした。

文鳥はつと嘴嘴くちばし beakを餌壺の真中真中まんなか middle; centerに落した落おとした lowered; dropped。そうして二三度左右左右さゆう left and rightに振った振ふった shook。奇麗に平して平ならして make level; make smooth入れて入いれて put intoあった粟粟あわ milletがはらはらと籠の底底そこ bottomに零れた零こぼれた was spilled。文鳥は嘴を上げた上あげた lifted; raised。咽喉咽喉のど throatの所所ところ area; point; spotで微な微かすかな faint; slight音音おと soundがする。また嘴を粟の真中に落す。また微な音がする。その音が面白い面白おもしろい of interest; intriguing。静かに静しずかに in silence; without making a sound聴いて聴きいて listenいると、丸くて丸まるくて without edges; harmonious; calm細やか細こまやか heartfelt; tenderで、しかも非常に非常ひじょうに exceedingly速か速すみやか quick; rapidである。菫菫すみれ violet (flower)ほどな小さい小ちいさい small; diminutive人人ひと personが、黄金黄金こがね goldの槌槌つち hammer; malletで瑪瑙瑪瑙めのう agate (bright silica stone with a fine grain)の碁石碁石ごいし Go pieces; Go stonesでもつづけ様につづけ様ざまに one after another敲いて敲たたいて strike; knock; beatいるような気気き feeling; impressionがする。

嘴の色色いろ colorを見る見みる look at; regardと紫紫むらさき purpleを薄く薄うすく lightly; faintly混ぜた混まぜた mixed紅紅べに deep red; crimsonのようである。その紅がしだいに流れて流ながれて be washed away; disappear、粟をつつくつつく peck at口尖口尖くちさき tip of the beakの辺辺あたり vicinity; regionは白い。象牙象牙ぞうげ ivoryを半透明半透明はんとうめい translucentにした白さである。この嘴が粟の中中なか middle; midstへ這入る這入はいる enter; move into時時とき time; instantは非常に早い早はやい quick。左右に振り蒔く振ふり蒔まく scatter; disperse粟の珠珠たま ball; sphere; drop (of)も非常に軽そう軽かるそう looking light; seemingly masslessだ。文鳥は身身み bodyを逆さま逆さかさま upside downにしないばかりに尖った尖とがった tapered; pointed嘴を黄色い黄色きいろい yellow粒粒つぶ grainsの中に刺し込んで刺さし込こんで thrust; plunge (into)は、膨くらんだ首を惜気もなく惜気おしげもなく ungrudgingly; with abandon右左右左みぎひだり side to side (lit: right and left)へ振る。籠の底に飛び散る飛とび散ちる fly about; scatter粟の数数かず numberは幾粒だか幾粒いくつぶだか how many (grains)分らない分わからない don't know; can't tell。それでも餌壺だけは寂然として寂然せきぜんとして forlorn; as though forgotten静かである。重い重おもい heavyものである。餌壺の直径直径ちょっけい diameterは一寸五分一寸いっすん五分ごぶ 1.5 sun (about 5 cm; about 2 inches)ほどだと思う。

自分はそっと書斎書斎しょさい study; reading roomへ帰って帰かえって return (to)淋しく淋さびしく in solitudeペンを紙紙かみ paper; pageの上に走らして走はしらして set into motionいた。縁側縁側えんがわ verandaでは文鳥がちちと鳴く。折々折々おりおり occasionally; from time to timeは千代千代千代千代ちよちよ chiyo-chiyoとも鳴く。外外そと outsideでは木枯木枯こがらし cold wintry windが吹いて吹ふいて blow; gustいた。

夕方夕方ゆうがた evening; duskには文鳥が水水みず waterを飲む飲のむ drinkところを見た。細い細ほそい slender; delicate足足あし feetを壺壺つぼ bowl; dishの縁へ懸けて懸かけて set; rest (on)、小い小ちさい small (usually 小ちいさい)嘴に受けた受うけた caught; received一雫一雫ひとしずく single dropを大事そうに大事だいじそうに with great care、仰向いて仰向あおむいて look up; turn one's face upward呑み下して呑のみ下くだして gulp down; swallowいる。この分ではこの分ぶんでは at this rate一杯の一杯いっぱいの dishful; bowlful水が十日十日とうか ten daysぐらい続く続つづく continue; persist; lastだろうと思ってまた書斎へ帰った。晩晩ばん evening; nightには箱箱はこ boxへしまってやった。寝る寝ねる retire; turn in (for the night)時硝子戸硝子ガラス戸ど glass doorsから外を覗いたら覗のぞいたら take a look、月月つき moonが出て出でて appear; be out、霜が降っていた霜しもが降ふっていた frost had settled。文鳥は箱の中でことりともしなかったことりともしなかった made not a peep。

明る日明あくる日ひ the following dayもまた気の毒な事に気きの毒どくな事ことに unfortunately; regrettably遅く遅おそく late起きて起おきて wake; rise、箱箱はこ boxから籠籠かご cageを出して出だして take outやったのは、やっぱり八時過ぎ八時はちじ過すぎ after eight (o'clock)であった。箱の中中なか insideではとうからとうから already; for some time (= とっくに)目が覚めていた目めが覚さめていた was awakeんだろう。それでも文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)はいっこう不平不平ふへい discontent; dissatisfactionらしい顔顔かお face; facial expressionもしなかった。籠が明るい明あかるい light; bright所所ところ placeへ出る出でる emerge (into)や否やや否いなや as soon as ...、いきなり眼眼め eyesをしばたたいてしばたたいて blink、心持心持こころもち slightly; just a little首をすくめて首くびをすくめて draw up one's shoulders; draw in one's neck、自分自分じぶん oneself; Iの顔を見た見みた looked at。

昔し昔むかし long ago; in days past美しい美うつくしい beautiful女女おんな womanを知っていた知しっていた knew; was acquainted with。この女が机机つくえ deskに凭れて凭もたれて lean on; recline against何か何なにか something考えて考かんがえて think over; contemplateいるところを、後後うしろ behind; in backから、そっと行って行いって go (to); approach、紫紫むらさき purpleの帯上げ帯上おびあげ obi sash band (thin band tied over wider obi sash)の房房ふさ tassel; loose endになった先先さき tipを、長く長ながく at length垂らして垂たらして dangle、頸筋頸筋くびすじ nape of the neck; back of the neckの細いあたり細ほそいあたり narrow regionを、上上うえ aboveから撫で廻したら撫なで廻まわしたら caress; stroke、女はものう気にものう気げに wearily; listlessly後を向いた向むいた turned toward。その時時とき time; occasion女の眉眉まゆ eyebrowsは心持八の字に寄って八はちの字じに寄よって draw together and cause to slope downward (like the character 八)いた。それで眼尻眼尻めじり outer corners of the eyesと口元口元くちもと mouth; lipsには笑笑わらい smileが萌して萌きざして show sign of; hint atいた。同時に同時どうじに at the same time恰好の好い恰好かっこうの好よい well-formed頸頸くび neckを肩肩かた shouldersまですくめていた。文鳥が自分を見た時、自分はふとこの女の事を思い出した思おもい出だした remembered; recollected。この女は今今いま now; at present嫁嫁よめ brideに行った。自分が紫の帯上帯上おびあげ obi sash band (thin band tied over wider obi sash)でいたずらをしたのは縁談縁談えんだん marriage proposal; engagementのきまった二三日二三日にさんにち several days後後あと afterである。

餌壺餌壺えつぼ food bowl; food dishにはまだ粟粟あわ milletが八分通り八分はちぶ通どおり  about eight tenths這入っている這入はいっている be contained (in)。しかし殻殻から hullsもだいぶ混っていた混まざっていた were mixed with。水入水入みずいれ water bowlには粟の殻が一面一面いちめん the entire surfaceに浮いて浮ういて float、苛く苛いたく unpleasantly濁って濁にごって be clouded; be impureいた。易えて易かえて changeやらなければならない。また大きな大おおきな large; big手手て handを籠の中へ入れた入いれた put into。非常に非常ひじょうに to the utmost要心して要心ようじんして exercise caution入れたにもかかわらず、文鳥は白い白しろい white翼翼つばさ wingsを乱して騒いだ乱みだして騒さわいだ whipped into a frenzy。小い小ちさい small (usually 小ちいさい)羽根羽根はね featherが一本一本いっぽん one (feather)抜けて抜ぬけて fall out; come looseも、自分は文鳥にすまないと思った。殻は奇麗に奇麗きれいに cleanly吹いた吹ふいた blew (off; away)。吹かれた殻は木枯木枯こがらし cold wintry windがどこかへ持って行った持もって行いった carried away。水も易えてやった。水道水道すいどう water service; pipingの水だから大変大変たいへん very much; quite冷たい冷つめたい cold。

その日日ひ dayは一日一日いちにち the whole day; all day淋しい淋さびしい solitaryペンの音音おと soundを聞いて聞きいて listen to暮した暮くらした passed one's time。その間その間あいだ during that timeには折々折々おりおり occasionally千代千代千代千代ちよちよ chiyo-chiyoと云う云いう call; sing声声こえ voiceも聞えた。文鳥も淋しいから鳴く鳴なく cry; singのではなかろうかと考えた。しかし縁側縁側えんがわ verandaへ出て見る出でて見みる go out (to see)と、二本の留り木二本にほんの留とまり木ぎ two perchesの間を、あちらへ飛んだり飛とんだり fly (to)、こちらへ飛んだり、絶間なく絶間たえまなく incessantly; without pause行きつ戻りつして行いきつ戻もどりつして go back and forthいる。少しも少すこしも (not) the least不平らしい様子様子ようす appearance; indication (of)はなかった。

夜夜よる evening; nightは箱箱はこ boxへ入れた入いれた put into。明る明あくる the next; the following朝朝あさ morning目が覚める目めが覚さめる wakeと、外外そと outsideは白い白しろい white霜霜しも frostだ。文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)も眼が覚めているだろうが、なかなか起きる起おきる get up; rise気気き inclinationにならない。枕元枕元まくらもと by one's pillowにある新聞新聞しんぶん newspaperを手に取る手てに取とる reach for; takeさえ難儀難儀なんぎ hardship; act of considerable difficultyだ。それでも煙草煙草たばこ cigaretteは一本一本いっぽん one (slender object)ふかした。この一本をふかしてしまったら、起きて籠籠かご cageから出して出だして take outやろうと思いながら思おもいながら thinking; planning (to do)、口口くち mouthから出る出でる appear; emanate (from)煙煙けぶり smokeの行方行方ゆくえ path; course; trajectoryを見つめて見みつめて gaze at; fix one's attention onいた。するとこの煙の中中なか middle; withinに、首をすくめた首くびをすくめた drew in one's neck; hunched one's shoulders、眼眼め eyesを細くした細ほそくした narrowed、しかも心持心持こころもち slightly; just a little眉を寄せた眉まゆを寄よせた furrowed one's brow昔し昔むかし long ago; in days pastの女女おんな womanの顔顔かお faceがちょっと見えた。自分自分じぶん oneself; Iは床床とこ beddingの上上うえ top ofに起き直った起おき直なおった straightened up; sat up。寝巻寝巻ねまき night clothesの上へ羽織羽織はおり Japanese half-coatを引掛けて引掛ひっかけて pull on (over)、すぐ縁側縁側えんがわ verandaへ出た。そうして箱の葢葢ふた lidをはずして、文鳥を出した。文鳥は箱から出ながら千代千代千代千代ちよちよ chiyo-chiyoと二声鳴いた二声ふたこえ鳴ないた sang out in succession。

三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)の説説せつ statement; assertionによると、馴れる馴なれる become accustomed (to); feel at homeにしたがって、文鳥が人人ひと a personの顔を見て鳴くようになるんだそうだ。現に現げんに actually; in fact三重吉の飼って飼かって keep; own (as a pet)いた文鳥は、三重吉が傍傍そば proximityにいさえすれば、しきりに千代千代と鳴きつづけたそうだ。のみならず三重吉の指の先指ゆびの先さき fingertipから餌餌え (pet) foodを食べる食たべる eatと云うと云いう it's said that ...。自分もいつか指の先で餌をやって見たいと思った。

次次つぎ nextの朝はまた怠けた怠なまけた lay idle; dawdled。昔昔むかし long ago; in days pastの女の顔もつい思い出さなかった思おもい出ださなかった didn't recall; didn't recollect。顔を洗って洗あらって wash、食事食事しょくじ mealを済まして済すまして finish; conclude、始めて始はじめて for the first time、気がついた気きがついた realized; took noticeように縁側へ出て見ると、いつの間にかいつの間まにか before one knows it籠が箱の上に乗って乗のって rest onいる。文鳥はもう留り木留とまり木ぎ perchの上を面白そうに面白おもしろそうに happily; enjoyablyあちら、こちらと飛び移って飛とび移うつって jump from one place to anotherいる。そうして時々時々ときどき occasionally; from time to timeは首首くび neckを伸して伸のして stretch; extend籠の外外そと outsideを下の方から下したの方ほうから from below覗いて覗のぞいて peak at; glance atいる。その様子様子ようす appearance; lookがなかなか無邪気無邪気むじゃき innocent; simple in natureである。昔紫紫むらさき purpleの帯上帯上おびあげ obi sash band (thin band tied over wider obi sash)でいたずらをした女は襟襟えり neckの長い長ながい long、背のすらりとした背せのすらりとした well-proportioned; svelte、ちょっと首を曲げて曲まげて tilt; incline人を見る癖癖くせ way; mannerismがあった。

粟粟あわ milletはまだある。水水みず waterもまだある。文鳥は満足して満足まんぞくして be set; be satisfiedいる。自分は粟も水も易えずに易かえずに without changing書斎書斎しょさい study; reading roomへ引込んだ引込ひっこんだ withdrew (to)。

昼昼ひる noon過ぎ過すぎ after; pastまた縁側へ出た。食後食後しょくご after a mealの運動運動うんどう activity; exerciseかたがたかたがた by way of、五六間五六間ごろっけん 5 or 6 ken (about 10 meters; about 12 yards)の廻り縁廻まわり縁えん wrap-around verandaを、あるきながら書見する書見しょけんする readつもりであった。ところが出て見ると粟がもう七分七分しちぶ seven tenthsがた尽きて尽つきて be out; be consumedいる。水も全く全まったく completely; utterly濁って濁にごって be fouled; be sulliedしまった。書物書物しょもつ bookを縁側へ抛り出して抛ほうり出だして toss asideおいて、急いで急いそいで immediately; right away餌と水を易えてやった。

次次つぎ nextの日日ひ dayもまた遅く遅おそく late起きた起おきた woke up; got out of bed。しかも顔顔かお faceを洗って洗あらって wash飯飯めし mealを食う食くう eatまでは縁側縁側えんがわ verandaを覗かなかった覗のぞかなかった didn't check; didn't look in on。書斎書斎しょさい study; reading roomに帰って帰かえって return (to)から、あるいはあるいは maybe; perhaps昨日昨日きのう the day beforeのように、家人家人うちのもの member of the householdが籠籠かご cageを出して出だして take outおきはせぬかと、ちょっと縁縁えん verandaへ顔だけ出して見たら顔かおだけ出だして見みたら went to take a look、はたして出してあった。その上その上うえ on top of that; furthermore餌餌え foodも水水みず waterも新しくなっていた新あたらしくなっていた had been changed; had been replenished。自分自分じぶん oneself; Iはやっと安心して安心あんしんして be put at ease; be reassured首を書斎に入れた首くびを書斎しょさいに入いれた ducked one's head back into the study; started back to the study。途端に途端とたんに just then; at that moment文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は千代千代千代千代ちよちよ chiyo-chiyoと鳴いた鳴ないた cried; sang。それで引込めた引込ひっこめた withdrawn; retreated首をまた出して見た。けれども文鳥は再び再ふたたび again; a second time鳴かなかった。けげんな顔をしてけげんな顔かおをして with an uneasy look硝子越に硝子ガラス越ごしに through the glass庭庭にわ garden; yardの霜霜しも frostを眺めて眺ながめて gaze on; look out atいた。自分はとうとう机机つくえ deskの前前まえ front ofに帰った。

書斎の中中なか insideでは相変らず相変あいかわらず as ever; as alwaysペンの音音おと soundがさらさらする。書きかけた書かきかけた in process (of writing)小説小説しょうせつ novelはだいぶんはかどったはかどった advanced; progressed。指の先指ゆびの先さき fingertipsが冷たい冷つめたい be cold; feel cold。今朝今朝けさ this morning埋けた埋いけた covered with ash (done with coals to keep a low fire)佐倉炭佐倉炭さくらずみ charcoal from the Sakura region of Chiba prefectureは白くなって白しろくなって grow white、薩摩五徳薩摩五徳さつまごとく Satsuma-style kettle stand (usually three inverted legs on which kettle rests)に懸けた懸かけた set on; placed on鉄瓶鉄瓶てつびん iron kettleがほとんど冷めて冷さめて grow coldいる。炭取炭取すみとり charcoal scuttle; charcoal bucketは空空から emptyだ。手を敲いた手てを敲たたいた clapped one's hands (to summon help)がちょっと台所台所だいどころ kitchenまで聴えない聴きこえない (sound) didn't carry; could not be heard。立って立たって rise; get up戸戸と doorを明ける明あける openと、文鳥は例に似ず例れいに似にず uncharacteristically留り木留とまり木ぎ perchの上上うえ top ofにじっと留っているじっと留とまっている be still; be unmoving; be frozen in place。よく見ると足足あし legが一本一本いっぽん one (slender object)しかない。自分は炭取を縁に置いて置おいて set down、上からこごんでこごんで stoop; lean over籠の中を覗き込んだ覗のぞき込こんだ peered into。いくら見ても足は一本しかない。文鳥はこの華奢な華奢きゃしゃな delicate; elegant一本の細い細ほそい slender足に総身総身そうみ one's whole body; one's full weightを託して託たくして entrust to黙然として黙然もくねんとして in stillness; without a sound、籠の中に片づいて片かたづいて relax; reposeいる。

自分は不思議不思議ふしぎ strange; curiousに思った思おもった thought (it to be)。文鳥について万事万事ばんじ all thingsを説明した説明せつめいした explained; expounded三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)もこの事事こと matterだけは抜いた抜ぬいた left out; neglectedと見える。自分が炭取に炭炭すみ charcoalを入れて帰った時時とき time、文鳥の足はまだ一本であった。しばらく寒い寒さむい cold縁側に立って眺めていたが、文鳥は動く動うごく move; stir気色気色けしき sign; indicationもない。音を立てないで音おとを立たてないで without a sound; in silence見つめていると、文鳥は丸い丸まるい round眼眼め eyesをしだいに細くし出した。おおかた眠たい眠ねむたい sleepy; drowsyのだろうと思って、そっと書斎へ這入ろう這入はいろう enter; go intoとして、一歩一歩いっぽ one step足を動かすや否やや否いなや as soon as、文鳥はまた眼を開いた開あいた opened。同時に同時どうじに at the same time真白な真白まっしろな pure white胸胸むね breastの中から細い足を一本出した。自分は戸を閉てて閉たてて close火鉢火鉢ひばち hibachi; brazierへ炭をついだ。

小説小説しょうせつ novelはしだいに忙しくなる忙いそがしくなる become busy (with)。朝朝あさ morningsは依然として依然いぜんとして still; as always寝坊寝坊ねぼう sleeping in; sleeping lateをする。一度一度いちど once家のもの家うちのもの members of the householdが文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)の世話世話せわ careをしてくれてから、何だか何なんだか somehow自分の自分じぶんの one's own責任責任せきにん responsibilityが軽くなった軽かるくなった be lightened; be lessenedような心持心持こころもち feelingがする。家のものが忘れる忘わすれる forget; fail (to do)時時とき times; occasionsは、自分が餌餌え (pet) foodをやる水水みず waterをやる。籠籠かご cageの出し入れ出だし入いれ taking out and putting awayをする。しない時は、家のものを呼んで呼よんで call; summonさせる事事こと instancesもある。自分はただ文鳥の声声こえ voiceを聞く聞きく listen to; hearだけが役目役目やくめ duty; roleのようになった。

それでも縁側縁側えんがわ verandaへ出る出でる go out (to)時は、必ず必かならず without fail籠の前前まえ front ofへ立留って立留たちどまって stop; pause (at)文鳥の様子様子ようす condition; state (of affairs)を見た見みた looked at; checked on。たいていは狭い狭せまい confined; limited in space籠を苦にもしないで苦くにもしないで untroubled by; unconcerned with、二本の留り木二本にほんの留とまり木ぎ two perchesを満足そうに満足まんぞくそうに with satisfaction; contentedly往復往復おうふく coming and going (between)していた。天気天気てんき weatherの好い好いい fair; fine時は薄い薄うすい weak; faint日日ひ sunlightを硝子越に硝子ガラス越ごしに through the glass浴びて浴あびて bask in、しきりに鳴き立てて鳴なき立たてて sing outいた。しかし三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)の云った云いった saidように、自分の顔顔かお faceを見てことさらにことさらに especially; consciously鳴く気色気色けしき sign; indicationはさらにさらに still; after allなかった。

自分の指指ゆび fingerからじかにじかに directly餌を食う食くう eatなどと云う事は無論無論むろん of course; needless to sayなかった。折々折々おりおり on occasion機嫌のいい機嫌きげんのいい in good spirits時は麺麭の粉麺麭パンの粉こ bread crumbなどを人指指人指指ひとさしゆび index fingerの先先さき tipへつけて竹竹たけ bambooの間間あいだ space (between); gapからちょっと出して見る事があるが文鳥はけっして近づかない近ちかづかない did not come near。少し少すこし a little; a bit無遠慮に無遠慮ぶえんりょに over-enthusiastically; overzealously突き込んで突つき込こんで thrust in; jam into見ると、文鳥は指の太い太ふとい fat; thickのに驚いて驚おどろいて be alarmed白い白しろい white翼翼つばさ wingsを乱して乱みだして set into wild motion籠の中中なか insideを騒ぎ廻る騒さわぎ廻まわる flutter aroundのみであった。二三度二三度にさんど several times試みた試こころみた tried; attempted後後のち after ...、自分は気の毒になって気きの毒どくになって felt sorry; felt bad (about something)、この芸芸げい trick; stuntだけは永久に永久えいきゅうに permanently; forever断念して断念だんねんして abandon; give up onしまった。今今いま now; the presentの世世よ worldにこんな事のできるものがいるかどうだかはなはだ疑わしい疑うたがわしい doubtful; questionable。おそらく古代古代こだい ancient timesの聖徒聖徒せいんと saints; holy disciplesの仕事仕事しごと task; undertaking; featだろう。三重吉は嘘を吐いた嘘うそを吐はいた had liedに違ないに違ちがいない no doubt ...。

或日或日あるひ one dayの事、書斎書斎しょさい study; reading roomで例のごとく例れいのごとく as alwaysペンの音を立てて音おとを立たてて issuing the sound of侘びしい侘わびしい wretched; dreary事を書き連ねて書かき連つらねて laying down in succession (on paper)いると、ふと妙な妙みょうな odd; curious音が耳に這入った耳みみに這入はいった reached one's ears。縁側でさらさらさらさら rustling; murmuring (sound)、さらさら云う。女女おんな womanが長い長ながい long衣衣きぬ silkの裾裾すそ (skirt) hemを捌いて捌さばいて handle; arrangeいるようにも受取られる受取うけとられる could take; could interpret (as)が、ただの女のそれとしては、あまりに仰山仰山ぎょうさん abundant; exaggeratedである。雛段雛段ひなだん tiered doll stand (for hina dolls)をあるく、内裏雛内裏雛だいりびな festival dolls representing the emperor and the empressの袴袴はかま formal pleated skirtの襞襞ひだ pleats; creasesの擦れる擦すれる rub; chafe音とでも形容したら形容けいようしたら describe as ...よかろうと思った思おもった thought; decided。自分は書きかけた小説をよそにして、ペンを持ったまま持もったまま still holding縁側へ出て見た出でて見みた went out to see。すると文鳥が行水を使って行水ぎょうずいを使つかって bathe (out in the open air)いた。

水水みず waterはちょうど易え立て易かえ立たて freshly changedであった。文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は軽い軽かるい slender; delicate足足あし legs; feetを水入水入みずいれ water bowlの真中真中まんなか middleに胸毛胸毛むなげ breast downまで浸して浸ひたして soak; dip、時々時々ときどき from time to timeは白い白しろい white翼翼つばさ wingsを左右左右さゆう left and rightにひろげながら、心持心持こころもち slightly; just a little水入の中中なか insideにしゃがむしゃがむ squat; crouchように腹腹はら bellyを圧しつけつつ圧おしつけつつ while pressing; while pushing (with)、総身総身そうみ entire body; whole bodyの毛毛け down; feathersを一度に一度いちどに at one time; at once振って振ふって shakeいる。そうして水入の縁縁ふち edge; rim; lipにひょいと飛び上る飛とび上あがる jump up (onto)。しばらくしてまた飛び込む飛とび込こむ dive in; plunge into。水入の直径直径ちょっけい diameterは一寸五分一寸いっすん五分ごぶ 1.5 sun (about 5 cm; about 2 inches)ぐらいに過ぎないに過すぎない is no more than ...。飛び込んだ時時とき timeは尾尾お tailも余り余あまり remain; be left over; stick out、頭頭あたま headも余り、背背せ backside; backは無論無論むろん of course余る。水に浸かる浸つかる be immersed; soakのは足と胸だけである。それでも文鳥は欣然として欣然きんぜんとして joyfully; happily行水を使って行水ぎょうずいを使つかって bathe (out in the open air)いる。

自分自分じぶん oneself; Iは急に急きゅうに hurriedly; with haste易籠易籠かえかご spare cageを取って来た取とって来きた went and got。そうして文鳥をこの方この方ほう this oneへ移した移うつした transferred (to)。それから如露如露じょろ watering potを持って持もって hold; carry風呂場風呂場ふろば washroomへ行って行いって go (to)、水道水道すいどう water service; pipingの水を汲んで汲くんで scoop; ladle、籠の上上うえ aboveからさあさあとかけてやった。如露の水が尽きる尽つきる run out頃頃ころ timeには白い羽根羽根はね feathersから落ちる落おちる fall; drop水が珠珠たま beads (of water)になって転がった転ころがった rolled (off)。文鳥は絶えず絶たええず continually眼をぱちぱちさせて眼めをぱちぱちさせて blink its eyesいた。

昔昔むかし long ago; in days past紫紫むらさき purpleの帯上帯上おびあげ obi sash band (thin band tied over wider obi sash)でいたずらをした女女おんな womanが、座敷座敷ざしき parlor; living roomで仕事仕事しごと work; taskをしていた時、裏裏うら back side (of a house)二階二階にかい second floorから懐中鏡懐中鏡ふところかがみ pocket mirrorで女の顔顔かお faceへ春春はる spring; springtimeの光線光線こうせん light beams; sunlightを反射させて反射はんしゃさせて reflect楽しんだ楽たのしんだ amused oneself事がある事ことがある once found occasion to ...。女は薄紅くなった薄紅うすあかくなった lightly-crimsoned頬頬ほう cheeksを上げて上あげて raise; lift、繊い繊ほそい fine; slender手手て handを額額ひたい forehead; browの前前まえ front ofに翳しながら翳かざしながら holding up、不思議そうに不思議ふしぎそうに mystified; bewildered瞬瞬まばたき blink (of the eyes)をした。この女とこの文鳥とはおそらく同じ同おなじ same; similar心持心持こころもち feelingだろう。

日数日数ひかず a number of daysが立つ立たつ pass (time)にしたがって文鳥は善く善よく very much; a good deal囀ずる囀さえずる sing; chirp。しかしよく忘れられる忘わすれられる be disregarded; be paid no heed。或る時或ある時とき on one occasionは餌壺餌壺えつぼ food bowlが粟粟あわ milletの殻殻から hullsだけになっていた事がある。ある時は籠の底底そこ bottomが糞糞ふん excrement; droppingsでいっぱいになっていた事がある。ある晩ある晩ばん one evening宴会宴会えんかい party; banquetがあって遅く遅おそく late帰ったら帰かえったら returned (home)、冬冬ふゆ winterの月月つき moonが硝子越に硝子ガラス越ごしに through the glass差し込んで差さし込こんで shine in、広い広ひろい wide; spacious縁側縁側えんがわ verandaがほの明るく見えるほの明あかるく見みえる appear faintly litなかに、鳥籠鳥籠とりかご birdcageがしんとして、箱箱はこ boxの上に乗って乗のって rest (on)いた。その隅隅すみ corner; recessに文鳥の体体からだ bodyが薄白く薄白うすしろく pale white; faint white浮いたまま浮ういたまま floating留り木留とまり木ぎ perchの上に、有るか無きか有ある無なきか indistinct; all but non-existentに思われたに思おもわれた seemed ...。自分は外套の羽根を返して外套がいとうの羽根はねを返かえして throw off one's overcoat、すぐ鳥籠を箱のなかへ入れて入いれて put intoやった。

翌日翌日よくじつ the next day; the following day文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は例のごとく例れいのごとく as usual; as always元気よく元気げんきよく spiritedly; with vigor囀って囀さえずって sing; chirpいた。それからは時々時々ときどき from time to time; on occasion寒い寒さむい cold夜夜よる nightも箱箱はこ boxにしまってやるのを忘れる忘わすれる forget; neglect (to do)ことがあった。ある晩ある晩ばん one eveningいつもの通りいつもの通とおり as always書斎書斎しょさい study; reading roomで専念に専念せんねんに with full devotion; with undivided attentionペンの音音おと soundを聞いて聞きいて listen toいると、突然突然とつぜん suddenly縁側縁側えんがわ verandaの方方ほう directionでがたりと物物もの a thing; an objectの覆った覆くつがえった be upset; be overturned音がした。しかし自分自分じぶん oneself; Iは立たなかった立たたなかった did not get up。依然として依然いぜんとして as before; still急ぐ急いそぐ be pressed; be rushed (to do)小説小説しょうせつ novelを書いて書かいて write; draftいた。わざわざ立って行って立たって行いって get up and go (to see)、何でもない何なんでもない be nothingといまいましいいまいましい annoying; irksomeから、気にかからない気きにかからない not weigh on one's mind; be of no concernではなかったが、やはりちょっと聞耳を立てた聞耳ききみみを立たてた kept one's ears openまま知らぬ顔ですまして知しらぬ顔かおですまして feign ignorance; pretend to be unawareいた。その晩寝た寝ねた retired; turned in (to sleep)のは十二時十二じゅうに時じ twelve (o'clock); midnight過ぎ過すぎ after; pastであった。便所便所べんじょ toiletに行ったついで、気がかり気きがかり worry; concernだから、念のため念ねんのため to be sure; just in case一応一応いちおう once縁側へ廻って見る廻まわって見みる make a round (to check)と――

籠籠かご cageは箱箱はこ boxの上上うえ top ofから落ちて落おちて fallいる。そうして横に倒れて横よこに倒たおれて fall over sidewaysいる。水入水入みずいれ water bowlも餌壺餌壺えつぼ food bowl; food dishも引繰返って引繰返ひっくりかえって be upset; be tipped overいる。粟粟あわ milletは一面に一面いちめんに over the surface縁側に散らばって散ちらばって be scattered aboutいる。留り木留とまり木ぎ perchは抜け出して抜ぬけ出だして slip out; come looseいる。文鳥はしのびやかにしのびやかに inconspicuously; discreetly鳥籠鳥籠とりかご birdcageの桟桟さん frame; crosspieceにかじりついてかじりついて cling to; hold on toいた。自分は明日明日あした the next day; the following dayから誓って誓ちかって surely; upon one's wordこの縁側に猫猫ねこ catを入れまい入いれまい absolutely not let inと決心した決心けっしんした determined; resolved (to do something)。

翌日翌日あくるひ the next day文鳥は鳴かなかった鳴なかなかった didn't sing。粟を山盛山盛やまもり heap; pile入れてやった。水水みず waterを漲る漲みなぎる be full to the brimほど入れてやった。文鳥は一本足のまま一本足いっぽんあしのまま on one leg長らく長ながらく for a long while留り木の上を動かなかった動うごかなかった didn't move; was still。午飯午飯ひるめし lunchを食って食くって eatから、三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)に手紙手紙てがみ letterを書こうと思って思おもって think (to do)、二三行二三行にさんぎょう several lines書き出す書かき出だす start to writeと、文鳥がちちと鳴いた。自分は手紙の筆筆ふで (writing) brush; penを留めた留とめた brought to a stop。文鳥がまたちちと鳴いた。出て見たら出でて見みたら go out to see; go and check粟も水もだいぶん減っている減へっている be depleted。手紙はそれぎりにして裂いて捨てた裂さいて捨すてた tore up and threw away。

翌日翌日よくじつ the next day文鳥がまた鳴かなくなった。留り木を下りて下おりて come down from籠の底底そこ bottomへ腹腹はら bellyを圧しつけて圧おしつけて press againstいた。胸胸むね breastの所所ところ area; regionが少し少すこし a little; a bit膨らんで膨ふくらんで be swollen、小さい小ちいさい small毛毛け feathersが漣漣さざなみ ripples; waveletsのように乱れて見えた乱みだれて見みえた appeared ruffled。自分はこの朝朝あさ morning、三重吉から例の件例れいの件けん a certain matterで某所某所ぼうしょ a certain placeまで来てくれ来きてくれ come (to)と云うと云いう stating ...手紙を受取った受取うけとった received。十時十時じゅうじ ten (o'clock)までにと云う依頼依頼いらい requestであるから、文鳥をそのままにしておいて出た。三重吉に逢って見る逢あって見みる go and meetと例の件がいろいろ長くなって、いっしょに午飯を食う。いっしょに晩飯晩飯ばんめし dinnerを食う。その上その上うえ on top of that明日明日あす next day; the morrowの会合会合かいごう meeting; appointmentまで約束して約束やくそくして agree (to); arrange宅宅うち homeへ帰った帰かえった returned (to)。帰ったのは夜夜よる eveningの九時頃九時頃くじごろ around nine (o'clock)である。文鳥の事の事こと concerning ...; about ...はすっかり忘れていた。疲れた疲つかれた was tired; was worn outから、すぐ床へ這入って床とこへ這入はいって get into bed寝てしまった寝ねてしまった fell asleep; slept。

翌日翌日あくるひ the following day眼が覚める眼めが覚さめる wake upや否やや否いなや as soon as ...、すぐ例の件例れいの件けん the matter at handを思いだした思おもいだした recalled; thought back to。いくら当人当人とうにん the person in questionが承知承知しょうち in agreementだって、そんな所所ところ place; householdへ嫁にやる嫁よめにやる marry off (to)のは行末行末ゆくすえ fate; future; end of thingsよくあるまい、まだ子供子供こども childだからどこへでも行け行いけ goと云われる云いわれる be told; be directed所へ行く気気き inclinationになるんだろう。いったん行けばむやみにむやみに imprudently出られる出でられる be able to leave; manage to extricate oneselfものじゃない。世の中世よの中なか society; the worldには満足しながら満足まんぞくしながら be satisfied; feel content (with)不幸不幸ふこう misfortune; sorrowに陥って行く陥おちいって行いく fall into者者もの persons; individualsがたくさんある。などと考えて考かんがえて think about; consider楊枝楊枝ようじ toothpickを使って使つかって use、朝飯朝飯あさめし breakfastを済まして済すまして finishまた例の件を片づけに片かたづけに to take care of; to conclude出掛けて行った出掛でかけて行いった set out; set off。

帰った帰かえった returned (home)のは午後午後ごご afternoon三時頃三時さんじ頃ごろ around three (o'clock)である。玄関玄関げんかん entry hallへ外套外套がいとう overcoatを懸けて懸かけて hang up廊下伝いに廊下ろうか伝づたいに following the corridor; through the hallway書斎書斎しょさい study; reading roomへ這入る這入はいる enter; go intoつもりで例の縁側縁側えんがわ verandaへ出て見る出でて見みる go to checkと、鳥籠鳥籠とりかご birdcageが箱箱はこ boxの上上うえ top ofに出してあった出だしてあった had been set out。けれども文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は籠籠かご cageの底底そこ bottomに反っ繰り返って反そっ繰くり返かえって lie invertedいた。二本の足二本にほんの足あし two legs; both legsを硬く硬かたく rigidly; stiffly揃えて揃そろえて gather together、胴胴どう body; torsoと直線に直線ちょくせんに in a straight line (from)伸ばして伸のばして extend; stretch outいた。自分自分じぶん oneself; Iは籠の傍傍わき vicinityに立って立たって stand、じっと文鳥を見守った見守みまもった gazed on。黒い黒くろい black眼眼め eyesを眠って眠ねぶって shut; close (eyes)いる。瞼瞼まぶた eyelidsの色色いろ colorは薄蒼く変った薄蒼うすあおく変かわった changed to light blue; turned pale。

餌壺餌壺えつぼ food bowl; food dishには粟粟あわ milletの殻殻から hullsばかり溜って溜たまって be accumulated; be piled upいる。啄む啄ついばむ peck atべきは一粒一粒ひとつぼ one grainもない。水入水入みずいれ water bowlは底の光る光ひかる shine; glistenほど涸れて涸かれて dry upいる。西西にし westへ廻った廻まわった circled round to日日ひ sunが硝子戸硝子ガラス戸ど glass doorsを洩れて洩もれて seep through斜めに斜ななめに obliquely籠に落ちかかる落おちかかる fall (onto)。台台だい baseに塗った塗ぬった painted; applied漆漆うるし lacquerは、三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)の云ったごとく、いつの間にかいつの間まにか before one knows it黒味黒味くろみ black colorが脱けて脱ぬけて fade; discolor、朱朱しゅ cinnabar; vermillionの色が出て来た出でて来きた came forth; appeared。

自分は冬冬ふゆ winterの日に色づいた朱の台を眺めた眺ながめた stared at。空空から emptyになった餌壺を眺めた。空しく空むなしく in vain; to no purpose橋を渡して橋はしを渡わたして bridging a gap; crossing a gapいる二本の留り木二本にほんの留とまり木ぎ two perchesを眺めた。そうしてその下下した below; beneathに横わる横よこたわる lie flat; lie stretched out硬い文鳥を眺めた。

自分はこごんでこごんで bend down; lean over両手両手りょうて both handsに鳥籠を抱えた抱かかえた held close; held in one's arms。そうして、書斎へ持って這入った持もって這入はいった carried into。十畳の十畳じゅうじょうの ten-mat (about 16 sq meters; about 170 sq ft)真中真中まんなか middleへ鳥籠を卸して卸おろして put down、その前前まえ front ofへかしこまってかしこまって sit down (in a humble and formal manner)、籠の戸戸と doorを開いて開ひらいて open、大きな大おおきな large手手て handを入れて入いれて put into、文鳥を握って見た握にぎって見みた took hold of; tried picking up。柔かい柔やわらかい soft羽根羽根はね feathersは冷きっている冷ひえきっている had grown cold; were cold to the touch。

拳拳こぶし fistを籠籠かご cageから引き出して引ひき出だして pull out; withdraw、握った手握にぎった手て closed handを開ける開あける openと、文鳥文鳥ぶんちょう bunchō (Japanese rice sparrow; white bird with reddish beak)は静静しずか quiet; stillに掌掌てのひら palm (of one's hand)の上上うえ top ofにある。自分自分じぶん oneself; Iは手を開けたまま、しばらく死んだ死しんだ dead鳥鳥とり birdを見つめて見みつめて stare at; gaze atいた。それから、そっと座布団座布団ざぶとん seating cushionの上に卸した卸おろした set down (on)。そうして、烈しく烈はげしく intensely; fervently手を鳴らした手てを鳴ならした clapped one's hands (to summon help)。

十六十六じゅうろく sixteen (years old)になる小女小女こおんな young maidが、はいと云って云いって responding (with)敷居敷居しきい threshold; sill際際ぎわ edge ofに手をつかえる手てをつかえる place both hands on the floor (in expression of respect)。自分はいきなり布団布団ふとん cushionの上にある文鳥を握って、小女の前前まえ front ofへ抛り出した抛ほうり出だした threw; tossed。小女は俯向いて俯向うつむいて cast down one's eyes畳畳たたみ tatami (mats)を眺めたまま黙って黙だまって remain silentいる。自分は、餌餌え (pet) foodをやらないから、とうとう死んでしまったと云いながら、下女下女げじょ maidservantの顔顔かお faceを睥めつけた睥にらめつけた glared at; scowled at。下女はそれでも黙っている。

自分は机机つくえ deskの方方ほう directionへ向き直った向むき直なおった turned round; turned back (to)。そうして三重吉三重吉みえきち Miekichi (name)へ端書端書はがき postcard; noteをかいた。「家人家人うちのもの members of the householdが餌をやらないものだから、文鳥はとうとう死んでしまった。たのみもせぬたのみもせぬ docile; unassumingものを籠へ入れて入いれて put into、しかも餌をやる義務義務ぎむ duty; obligationさえ尽くさない尽つくさない not perform; not fulfillのは残酷残酷ざんねん crueltyの至り至いたり utmost extremeだ」と云う文句文句もんく words; expressionであった。

自分は、これを投函して来い投函だして来こい go and post、そうしてその鳥をそっちへ持って行けそっちへ持もって行いけ take away; get rid ofと下女に云った。下女は、どこへ持って参ります持もって参まいります take away (to)かと聞き返した聞きき返かえした asked in return。どこへでも勝手に勝手かってに as you like持って行けと怒鳴りつけたら怒鳴どなりつけたら yelled at、驚いて驚おどろいて alarmed; taken aback台所台所だいどころ kitchenの方へ持って行った。

しばらくすると裏庭裏庭うらにわ back garden; backyardで、子供子供こども childrenが文鳥を埋る埋うめる buryんだ埋るんだと騒いで騒さわいで clamor; make a racketいる。庭掃除庭掃除にわそうじ gardening; yard workに頼んだ頼たのんだ requested; hired (to do)植木屋植木屋うえきや gardenerが、御嬢さん御嬢おじょうさん miss; young lady、ここいらが好い好いい okay; alrightでしょうと云っている。自分は進まぬながら進すすまぬながら while making no progress、書斎でペンを動かしてペンを動うごかして took up one's penいた。

翌日翌日よくじつ the next day; the following dayは何だか何なんだか somehow頭頭あたま headが重い重おもい heavyので、十時頃十時じゅうじ頃ごろ around ten (o'clock)になってようやく起きた起おきた got up; got out of bed。顔顔かお faceを洗いながら洗あらいながら wash裏庭を見ると、昨日昨日きのう the day before植木屋の声声こえ voiceのしたあたりに、小さい小ちさい small (usually 小ちいさい)公札公札こうさつ signが、蒼い蒼あおい green木賊木賊とくさ horsetail (plant)の一株一株ひとかぶ (one) clump; thicketと並んで立って並ならんで立たって stand amongいる。高さ高たかさ heightは木賊よりもずっと低い低ひくい close to the ground; short。庭下駄庭にわ下駄げた garden sandalsを穿いて穿はいて put on (one's feet)、日影日影ひかげ shade; shadowsの霜霜しも frostを踏み砕いて踏ふみ砕くだいて crumple underfoot、近づいて近ちかづいて approach; draw near見ると、公札の表表おもて front; faceには、この土手土手どて bank (of earth); mound登るべからず登のぼるべからず do not climb; do not step (on)とあった。筆子筆子ふでこ Fudeko (name)の手蹟手蹟しゅせき handwriting; penmanshipである。

午後午後ごご after noon三重吉から返事返事へんじ reply; answerが来た来きた came; arrived。文鳥は可愛想な可愛想かわいそうな pitiable; unfortunate事事こと act; actionを致しました致いたしました did (humble form, referring to oneself)とあるばかりで家人が悪い悪わるい at faultとも残酷だともいっこう書いてなかった書かいてなかった was not written。