祝勝会祝勝会しゅくしょうかい victory celebration (Russo-Japanese War)学校学校がっこう schoolお休みやすみ day off; holidayだ。練兵場練兵場れんぺいば drilling grounds (military)しき ceremonyがあるというので、たぬき Tanuki (nickname for the school principal)生徒生徒せいと students引率して引率いんそつして lead; be at the head of参列参列さんれつ attendance; presenceしなくてはならない。おれも職員職員しょくいん staff member一人一人ひとり one (person)としていっしょにくっついて行くくっついてく go with; followんだ。まち town出るる arrive (at); reach日の丸まる Hinomaru (Japanese flag)だらけで、まぼしいくらいである。学校の生徒は八百人八百人はっぴゃくにん eight hundred (people)もあるのだから、体操体操たいそう physical education教師教師きょうし instructor隊伍隊伍たいご ranks; formation整えてととのえて organize一組一組いちくみ one group; one squad一組のあいだ interval; space between少しすこし a bitずつ明けてけて open; create a clearance、それへ職員が一人か二人二人ふたり two (people)ずつ監督監督かんとく supervisor; managerとして割り込むむ wedge (oneself) into仕掛け仕掛しかけ contrivance; workingsである。仕掛仕掛しかけ contrivance; workingsだけはすこぶる巧妙巧妙こうみょう cleverなものだが、実際実際じっさい realityはすこぶる不手際不手際ふてぎわ awkward; ineptである。生徒は小供小供こども childish; imbecileの上にうえに in addition to; on top of ...生意気生意気なまいき impertinent; smart-aleckで、規律を破らなくって規律きりつやぶらなくって not breaking the rulesは生徒の体面体面たいめん reputation; honorにかかわると思ってるおもってる believe; think奴等奴等やつら fellowsだから、職員が幾人幾人いくたり however many (people)ついて行ったってなん what役に立つやくつ be of use; serve a purposeもんか。命令も下さないのに命令めいれいくださないのに though no orders are given勝手勝手かって as one pleases軍歌軍歌ぐんか war songをうたったり、軍歌をやめるとワーと訳もないのにわけもないのに without reason; though uncalled for鬨の声を揚げたりときこえげたり raise battle cries、まるで浪人浪人ろうにん lordless samurai町内町内ちょうない (throughout) the townをねりあるいてるようなものだ。軍歌も鬨の声も揚げないとき time; periodsがやがやがやがや boisterously何かなにか something喋舌ってる喋舌しゃべってる talk; chatter。喋舌らないでも歩けそうあるけそう seems like (they) could walkなもんだが、日本人日本人にほんじん Japaneseはみなくち mouthからさき first; foremost生れるうまれる are bornのだから、いくら小言を云った小言こごとった scold; rebukeって聞きっこないきっこない don't listen。喋舌るのもただ喋舌るのではない、教師教師きょうし teachers; instructorsわる口わるくち slander; disparaging remarksを喋舌るんだから、下等下等かとう base; vulgarだ。おれは宿直宿直しゅくちょく night duty事件事件じけん incidentで生徒を謝罪さして謝罪しゃざいさして forced to apologize、まあこれならよかろうと思っていた。ところが実際は大違い大違おおちがい way off base; completely wrongである。下宿下宿げしゅく lodgings婆さんばあさん old woman言葉言葉ことば words借りてりて borrow云えば、正にまさに truly; really大違いの勘五郎勘五郎かんごろう Kangorō (name based on the word 勘違かんちがい, or mistaken idea)である。生徒があやまったのはしん heart; coreから後悔して後悔こうかいして feel remorseあやまったのではない。ただ校長校長こうちょう (school) principalから、命令されて、形式的に形式的けいしきてきに superficially頭を下げたあたまげた bowed; capitulatedのである。商人商人しょうにん merchant; tradesmanが頭ばかり下げて、狡いずるい cunning; dishonestこと acts; deedsをやめないのと一般一般いっぱん general conceptで生徒も謝罪だけはするが、いたずらは決してけっして by (no) meansやめるものでない。よく考えてかんがえて consider; think aboutみると世の中なか the world; societyはみんなこの生徒のようなものから成立している成立せいりつしている be made up ofかも知れないかもれない could well be (that)ひと a personがあやまったり詫びたりびたり express regret; beg forgivenessするのを、真面目に真面目まじめに seriously; at face value受けてけて receive; accept勘弁する勘弁かんべんする pardon; forgiveのは正直過ぎる正直過しょうじきすぎる too honest; naïve馬鹿馬鹿ばか foolと云うんだろう。あやまるのも仮りにりに tentatively; halfheartedlyあやまるので、勘弁するのも仮りに勘弁するのだと思ってれば差し支えないつかえない there's no problem (with)。もし本当に本当ほんとうに really; trulyあやまらせる intentionなら、本当に後悔するまで叩きつけなくてはいけないたたきつけなくてはいけない must punish; must thrash

おれがくみ groupと組のあいだ interval; space betweenはいって行くはいってく enter intoと、天麩羅天麩羅てんぷら tempuraだの、団子団子だんご dumplingsだの、と云うう say; call outこえ voices絶えずえず incessantly; without endする。しかも大勢大勢おおぜい large group; multitude (of people)だから、だれ whoが云うのだか分らないわからない can't tell。よし分ってもおれのこと fact; matterを天麩羅と云ったんじゃありません、団子と申したもうした saidのじゃありません、それは先生先生せんせい teacher (referring to Botchan here)神経衰弱神経衰弱しんけいすいじゃく frayed nerves; nervous disorderだから、ひがんでひがんで be biased; take a jaundiced view of、そう聞くく hearんだぐらい云うに極まってるまってる is a given that ...。こんな卑劣な卑劣ひれつな sordid; ignoble根性根性こんじょう nature; disposition封建封建ほうけん feudal時代時代じだい age; periodから、養成した養成いくせいした raised; fostered; nurturedこの土地土地とち region; land習慣習慣しゅうかん custom; practiceなんだから、いくら云って聞かしたって、教えておしえて teach; instructやったって、到底到底とうてい by (no) means直りっこないなおりっこない can't be fixed; won't improve。こんな土地に一年一年いちねん one year居るる be (in a place); stay; remainと、潔白な潔白けっぱくな innocent; uprightおれも、この真似真似まね behavior; mannerをしなければならなく、なるかも知れないかもれない may be that ...向うむこう the other partyでうまく言い抜けられるけられる can talk one's way out (of something)ような手段手段しゅだん means; methodで、おれの顔を汚すかおよごす disgrace; humiliateのを抛っておくほうっておく let pass; tolerate樗蒲一樗蒲一ちょぼいち being played for a fool (origin: gambling game played with a single die)はない。向こうがひと person; human beingならおれも人だ。生徒生徒せいと studentだって、子供子供こども child; youthだって、ずう体ずうたい body; frameはおれより大きいおおきい big; largeや。だから刑罰刑罰けいばつ punishment; punitive actionとして何かなにか something返報返報へんぽう retaliation; counterattackをしてやらなくっては義理がわるい義理ぎりがわるい fail in one's duty; neglect the cause of justice。ところがこっちから返報をする時分時分じぶん time; occasion尋常の尋常じんじょうの ordinary; usual手段で行くと、向うから逆捩を食わして逆捩さかねじわして turn the tables (on someone)来るる come (back at)貴様貴様きさま you (condescending)がわるいからだと云うと、初手初手しょて beginning; outsetから逃げ路みち escape; out; excuse作ってつくって make; prepareある事だから滔々と滔々とうとうと eloquently弁じ立てるべんてる argue; expound。弁じ立てておいて、自分の自分じぶんの one's ownほう side; position表向き表向おもてむき formally; ostensiblyだけ立派立派りっぱ honorable; respectableにしてそれからこっちの fault; misdeed攻撃する攻撃こうげきする attack; assault。もともと返報にした事だから、こちらの弁護弁護べんご defense; explanationは向うの非が挙がらない上がらないうえ unless (something) comes to lightは弁護にならない。つまりは向うから手を出してして take the initiativeおいて、世間体世間体せけんてい outward appearanceはこっちが仕掛けた仕掛しかけた instigated喧嘩喧嘩けんか quarrel; disputeのように、見傚されて見傚みなされて be regarded asしまう。大変な大変たいへんな terrible不利益不利益ふりえき disadvantage; handicapだ。それなら向うのやるなり、愚迂多良愚迂多良ぐうたら loafer; do-nothing童子童子どうじ juvenile極め込んでんで assume a role; act asいれば、向うはますます増長する増長ぞうちょうする grow impudent; be indulgedばかり、大きく云えば世の中なか the world; societyのためにならない。そこで仕方がない仕方しかたがない have no choice; have no alternativeから、こっちも向うの筆法筆法ひっぽう manner; method用いてもちいて use; adopt捕まえられないでつらまえられないで without being caught手の付けようのないけようのない can't be touched; safe from reproach返報をしなくてはならなくなる。そうなっては江戸っ子江戸えど Tōkyō man駄目駄目だめ no good; rottenだ。駄目だが一年もこうやられる以上以上いじょう given that ...は、おれも人間人間にんげん human beingだから駄目でも何でもなんでも whatever (it may be)そうならなくっちゃ始末始末しまつ closure; settlementがつかない。どうしても早くはやく soon東京東京とうきょう Tōkyō帰ってかえって return (home)きよ Kiyo (name of Botchan's former maidservant)といっしょになるに限るかぎる (options) are limited to ...。こんな田舎田舎いなか countrysideに居るのは堕落堕落だらく (moral) corruptionしに来ているようなものだ。新聞新聞しんぶん newspaper配達配達はいたつ deliveryをしたって、ここまで堕落するよりはましだ。

こう考えてかんがえて consider、いやいや、附いてくるいてくる follow alongと、何だかなんだか somehow; for some reason先鋒先鋒せんぽう vanguard; front line急にきゅうに suddenlyがやがや騒ぎ出したさわした raised a commotion同時に同時どうじに at the same timeれつ line; file; formationはぴたりと留まるまる come to a stopへん odd; strangeだから、列をみぎ right (side)へはずして、向うむこう ahead; beyond見るる look (toward)と、大手町大手町おおてまち Ōtemachi (place name)突き当ってあたって come to the end of薬師町薬師町やくしまち Yakushimachi (place name)曲がるがる turnかど cornerところ place; locationで、行き詰ったづまった stuck; jammed upぎり、押し返したりかえしたり pushing back、押し返されたりして揉み合ってって tussle; struggle (against each other)いる。前方前方ぜんぽう forward directionから静かにしずかに quiet down静かにと声を涸らしてこえらして shout oneself hoarse来たた came; arrived体操体操たいそう physical education教師教師きょうし instructorに何ですと聞くく ask; inquireと、曲り角で中学校中学校ちゅうがっこう middle school師範学校師範学校しはんがっこう normal school; teachers' college衝突した衝突しょうとつした collided; clashedんだと云うう said; reported

中学と師範とはどこの県下県下けんか district; prefectureでも犬と猿いぬさる mortal enemies (lit: dogs and monkeys)のように仲がわるいなかがわるい dislike each other; do not get alongそうだ。なぜだかわからないが、まるで気風気風きふう disposition; temperament合わないわない don't agree; don't mesh何かなにか somethingあると喧嘩喧嘩けんか quarrelをする。大方大方おおかた probably; most likely狭いせまい limited; confined田舎田舎いなか countryside退屈退屈たいくつ boredom; tediumだから、暇潰し暇潰ひまつぶし killing timeにやる仕事仕事しごと activityなんだろう。おれは喧嘩は好きき likable; enjoyableほう type; leaningだから、衝突と聞いて、面白半分に面白半分おもしろはんぶんに for amusement馳け出してして set off running行ったった went。するとまえ frontの方にいる連中連中れんちゅう group; companyは、しきりに何だ地方税地方税ちほうぜい regional tax (that supports the teachers' college)の癖にくせに as is befitting of ...引き込めめ back off; stand asideと、怒鳴って怒鳴どなって yell; shoutる。後ろうしろ the back; behindからは押せせ push押せとおおきな big; loud (voice)こえ voice出すす put forth (voice)。おれは邪魔邪魔じゃま hindranceになる生徒生徒せいと studentsあいだ midst; interval (between)くぐり抜けてくぐりけて duck through; cut through、曲がり角へもう少しすこし a little; a bit出ようよう arrive (at)としたとき time; pointに、前へ! と云う高くたかく shrill (sound)鋭いするどい sharp号令号令ごうれい order; command聞えたきこえた was heard思ったらおもったら realized師範学校の方は粛粛として粛粛しゅくしゅくとして silently; solemnly行進行進こうしん advance始めたはじめた beganさき precedence争ったあらそった fought (for)衝突は、折合がついた折合おりあいがついた arrived at a resolutionには相違ないには相違そういない no doubt ...が、つまり中学校が一歩一歩いっぽ one step譲ったゆずった yielded; made way (for)のである。資格資格しかく rank; statusから云うと師範学校の方がうえ above; superiorだそうだ。

祝勝祝勝しゅくしょう victory celebrationしき ceremonyはすこぶる簡単な簡単かんたんな simpleものであった。旅団長旅団長りょだんちょう brigade commander祝詞祝詞しゅくじ congratulatory address読むむ read; deliver知事知事ちじ governorが祝詞を読む、参列者参列者さんれつしゃ those in attendance万歳を唱える万歳ばんざいとなえる cry banzai。それでおしまいだ。余興余興よきょう entertainment program; festivities午後午後ごご afternoonにあると云うう say; tellはなし story; informationだから、ひとまず下宿下宿げしゅく lodgings帰ってかえって return (home)、こないだじゅうから、気に掛ってかかって weigh on one's mindいた、きよ Kiyo (name of Botchan's former maidservant)への返事返事へんじ answer; responseをかきかけた。今度今度こんど this timeはもっと詳しくくわしく in detail書いていて writeくれとの注文注文ちゅうもん requestだから、なるべく念入に念入ねんいりに carefully; thoroughly認めなくっちゃならないしたためなくっちゃならない need to write; need to put down in words。しかしいざとなって、半切半切はんきれ half sheet; scroll paper (for letter writing)取り上げるげる pick upと、書くこと things; mattersはたくさんあるが、なに whatから書き出してして begin to writeいいか、わからない。あれにしようか、あれは面倒臭い面倒臭めんどうくさい bothersome; too much trouble。これにしようか、これはつまらない。何か、すらすらとすらすらと smoothly; fluently出てて come out骨が折れなくってほねれなくって not too taxing (lit: not breaking one's bones)、そうして清が面白がる面白おもしろがる find interestingようなものはないかしらん、と考えてかんがえて considerみると、そんな注文通り注文通ちゅうもんどおり exactly as requested事件事件じけん incident; affair一つひとつ one (thing)もなさそうだ。おれはすみ (charcoal) ink磨ってって ground; gratedふで brushしめしてしめして wet; moistened巻紙巻紙まきがみ rolled letter paper睨めてにらめて stared at; glared at、――巻紙を睨めて、筆をしめして、墨を磨って――同じおなじ same所作所作しょさ actions; routineを同じように何返も何返なんべんも a number of times繰り返したかえした repeatedあと、おれには、とても手紙手紙てがみ letter; correspondenceは書けるものではないと、諦めてあきらめて giving upすずり ink stoneふた lidをしてしまった。手紙なんぞをかくのは面倒臭い。やっぱり東京東京とうきょう Tōkyōまで出掛けて行って出掛でかけてって set out for逢ってって see (a person); meet話をするのが簡便簡便かんべん simple; convenientだ。清の心配心配しんぱい worry; concern察しないでもないさっしないでもない can imagine (lit: it's not that I can't imagine)が、清の注文通りの手紙を書くのは三七日三七日さんなのか twenty one days断食断食たんじき fasting; よりも苦しいくるしい arduous; excruciating

おれは筆と巻紙を抛り出してほうして threw aside; pushed away、ごろりと転がってころがって lay down肱枕をして肱枕ひじまくらをして rested one's head on one's armsにわ yard; gardenほう direction眺めてながめて gaze atみたが、やっぱり清の事が気にかかる。そのとき time; occasionおれはこう思ったおもった thought; reasoned。こうして遠くとおく far (away)来てて came (to)まで、清の身の上うえ circumstances; welfare案じてあんじて be concerned aboutいてやりさえすれば、おれの真心真心まこと sincerity; devotionは清に通じるつうじる be communicatedに違いないちがいない no doubt。通じさえすれば手紙なんぞやる必要必要ひつよう necessityはない。やらなければ無事で無事ぶじで without mishap暮してくらして live one's lifeると思ってるだろう。たよりは死んだんだ died; passed away時か病気病気びょうき illnessの時か、何か事の起ったおこった happened時にやりさえすればいい訳だわけだ it's the case that ...

にわ yard; garden十坪十坪とつぼ 10 tsubo (about 33 sq meters; about 40 sq yards)ほどの平庭平庭ひらにわ flat gardenで、これという植木植木うえき plantsもない。ただ一本一本いっぽん one (slender object)蜜柑蜜柑みかん mandarin orange (tree)があって、へい fence; wall; enclosureのそとから、目標目標めじるし landmark; guideになるほど高いたかい tall。おれはうちへ帰るかえる return homeと、いつでもこの蜜柑を眺めるながめる look at東京東京とうきょう Tōkyō出たた left (from)こと act; instanceのないものには蜜柑の生ってって grow fruit; bear fruitいるところはすこぶる珍しいめずらしい unusualものだ。あの青いあおい green; unripe fruitがだんだん熟してじゅくして mature; ripenきて、黄色黄色きいろ yellowになるんだろうが、定めてさだめて surely; certainly奇麗奇麗きれい pretty; beautifulだろう。いま now; at presentでももう半分半分はんぶん halfwayいろ color変ったかわった changedのがある。婆さんばあさん old woman聞いていて ask; inquireみると、すこぶる水気水気みずけ moisture; succulence多いおおい abundant旨いうまい tasty; delicious蜜柑だそうだ。今に熟たらうれたら become ripeたんとたんと a lot ( = 沢山たくさん)召し上がれがれ eat; enjoy云ったった saidから、毎日毎日まいにち every day少しすこし a few; a bitずつ食ってって eatやろう。もう三週間三週間さんしゅうかん three weeksもしたら、充分充分じゅうぶん fully; sufficiently食えるだろう。まさか三週間以内以内いない withinにここを去るる leave; depart from事もなかろう。

おれが蜜柑の事を考えてかんがえて consider; think aboutいるところへ、偶然偶然ぐうぜん unexpectedly山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)話しにはなしに to talkやって来たやってた came over; dropped by今日今日きょう today祝勝会祝勝会しゅくしょうかい victory celebrationだから、きみ you (familiar)といっしょにご馳走馳走ちそう feast; treatを食おうと思っておもって thinking (to do something)牛肉牛肉ぎゅうにく beef買ってって buy; purchase来たと、竹の皮たけかわ bamboo sheathつつみ wrapped packageたもと sleeve pocketから引きずり出してきずりして pulled out座敷座敷ざしき room真中真中まんなか middle; center抛り出したほうした tossed down。おれは下宿下宿げしゅく lodgingsいも potatoesぜめ forcing (something on someone)豆腐豆腐とうふ tōfu責になってるうえ on top of蕎麦屋蕎麦屋そばや soba shop行きき going (to); visiting団子屋団子屋だんごや dumpling shop行きを禁じられてきんじられて be forbidden (from doing something)きわ point; positionだから、そいつは結構結構けっこう fine; splendidだと、すぐ婆さんからなべ pan; pot砂糖砂糖さとう sugarかり込んでかりんで borrowed煮方煮方にかた cooking取りかかったりかかった started in on; started doing

山嵐は無暗に無暗むやみに excessively牛肉を頬張りながら頬張ほおばりながら while eating; while stuffing one's mouth、君あの赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)芸者芸者げいしゃ geisha馴染馴染なじみ familiarity; intimacyのある事を知ってるってる know (about)かと聞くから、知ってるとも、この間このあいだ the other dayうらなりうらなり Uranari (nickname for Koga, the English teacher)送別会送別会そうべつかい farewell partyとき time; occasionに来た一人一人ひとり one (person)がそうだろうと云ったら、そうだぼく Iこの頃このごろ these daysようやく勘づいたかんづいた caught on to; got wise toのに、君はなかなか敏捷敏捷びんしょう astuteness; shrewdnessだと大いにおおいに greatlyほめた。

「あいつは、ふた言目にふた言目ことめに frequently; constantly (lit: every second word)品性品性ひんせい character; integrityだの、精神的精神的せいしんてき intellectual; mental娯楽娯楽ごらく amusement; recreationだのと云う癖にくせに though he says ...うら rear; back廻ってまわって circle; go around、芸者と関係関係かんけい relationshipなんかつけとる、怪しからんしからん disgraceful; shamefulやつ fellowだ。それもほかのひと person遊ぶあそぶ have fun; enjoy oneselfのを寛容する寛容かんようする be tolerant towardならいいが、君が蕎麦屋へ行ったりったり visit; frequent、団子屋へはいるのさえ取締上取締上とりしまりじょう from a disciplinary perspective害になるがいになる do harm; be injuriousと云って、校長校長こうちょう (school) principalくち mouth; words通してとおして through; by way of注意を加えた注意ちゅういくわえた admonishedじゃないか」

「うん、あの野郎野郎やろう rascal; scoundrel考えかんがえ idea; way of thinkingじゃ芸者買芸者買げいしゃがい keeping a geisha精神的精神的せいしんてき intellectual; mental娯楽娯楽ごらく amusement; recreationで、天麩羅天麩羅てんぷら tempuraや、団子団子だんご dumplings物理的物理的ぶつりてき physical; material娯楽なんだろう。精神的娯楽なら、もっと大べらおおべら openly; publicly (= おおっぴら)にやるがいい。なん whatだあのざま state of affairs; appearanceは。馴染馴染なじみ familiarity; intimacyの芸者がはいってくると、入れ代りにかわりに in passing席をはずしてせきをはずして leave the room; make one's exit逃げるげる run away; fleeなんて、どこまでもひと a person胡魔化す胡魔化ごまかす deceive; hoodwink intentionだから気に食わないわない be offensive; be disagreeable。そうして人が攻撃する攻撃こうげきする censure; criticizeと、ぼく I知らないらない don't knowとか、露西亜露西亜ロシア Russian文学文学ぶんがく literatureだとか、俳句俳句はいく haiku新体詩新体詩しんたいし new-style poetry兄弟分兄弟分きょうだいぶん close friend; blood brotherだとか云ってって say、人を烟に捲くけむく bewilder; mystifyつもりなんだ。あんな弱虫弱虫よわむし coward; sissyおとこ manじゃないよ。全くまったく completely; utterly御殿女中御殿ごてん女中じょちゅう lady in waiting (royal court)生れ変りうまかわり rebirth (of); reincarnation (of)何かなにか somethingだぜ。ことによると、あいつのおやじは湯島湯島ゆしま Yushima (place name; part of Tōkyō)かげまかげま male prostitute (made up like a female)かもしれない」

「湯島のかげまた何だ」

「何でも男らしくないもんだろう。――きみ you (familiar)そこのところはまだ煮えてえて be cookedいないぜ。そんなのを食うと絛虫絛虫さなだむし tapeworms湧くく grow; breed; be hatchedぜ」

「そうか、大抵大抵たいてい generally; most likely大丈夫大丈夫だいじょうぶ okay; no problemだろう。それで赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)は人に隠れてかくれて hide; act covertly温泉温泉 baths; hot springsまち town角屋角屋かどや Kadoya (name of an establishment)行ってって go (to)、芸者と会見する会見かいけんする meet withそうだ」

「角屋って、あの宿屋宿屋やどや innか」

「宿屋けん and料理屋料理屋りょうりや restaurantさ。だからあいつを一番一番いちばん most; to the greatest extentへこますへこます humble; humiliateためには、あいつが芸者をつれて、あすこへはいり込むはいりむ enter (into)ところを見届けて見届みとどけて witness; ascertainおいて面詰する面詰めんきつする reprimand personally; take to taskんだね」

「見届けるって、夜番夜番よばん night watchでもするのかい」

「うん、角屋のまえ front (of)枡屋枡屋ますや Masuya (name of an inn)という宿屋があるだろう。あのおもて front side; street side二階二階にかい second floorをかりて、障子障子しょうじ shōji (sliding paper screen)あな holeをあけて、見てて watchいるのさ」

「見ているときに来るる come; arriveかい」

「来るだろう。どうせひと晩ひとばん one nightじゃいけない。二週間二週間にしゅうかん two weeksばかりやるつもりでなくっちゃ」

随分随分ずいぶん considerably; quite a lot疲れるつかれる grow tired; become fatiguedぜ。僕あ、おやじの死ぬぬ die; pass awayとき一週間一週間いっしゅうかん one weekばかり徹夜して徹夜てつやして work through the night看病看病かんびょう nursing; tending to the sickしたこと experienceがあるが、あとでぼんやりして、大いにおおいに greatly弱ったよわった felt weak; was worn down事がある」

少しすこし a bitぐらい身体身体からだ one's bodyが疲れたって構わんかまわん doesn't matterさ。あんな奸物奸物かんぶつ crook; villainをあのままにしておくと、日本日本にほん Japanのためにならないから、僕が天に代っててんかわって on behalf of Heaven誅戮を加える誅戮ちゅうりくくわえる administer punishmentんだ」

愉快愉快ゆかい excellent; great ideaだ。そう事が極まればまれば be decided; be set、おれも加勢して加勢かせいして assist; supportやる。それで今夜今夜こんや tonight; this eveningから夜番をやるのかい」

「まだ枡屋に懸合って懸合かけあって negotiate (with)ないから、今夜は駄目駄目だめ no good; impossibleだ」

「それじゃ、いつから始めるはじめる start; beginつもりだい」

近々近々ちかぢか soonのうちやるさ。いずれ君に報知報知ほうち notificationをするから、そうしたら、加勢してくれたまえ」

「よろしい、いつでも加勢する。僕は計略計略はかりごと planning; strategy下手下手へた not good atだが、喧嘩喧嘩けんか quarrel; confrontationとくるとこれでなかなかすばしこいすばしこい nimble; agileぜ」

おれと山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)がしきりに赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)退治退治たいじ subjugation; subdual計略計略はかりごと planning; strategy相談して相談そうだんして discussいると、宿宿やど lodgings婆さんばあさん old woman出て来てて appear; come in学校学校がっこう school生徒生徒せいと studentさんが一人一人ひとり one (person)堀田堀田ほった Hotta (a.k.a. Yama Arashi)先生先生せんせい teacher (used here as a title)お目にかかりたいにかかりたい would like to seeててお出でたでた came (over)ぞなもし。いま (just) nowお宅たく (your) residence参じたさんじた visited; called (at)のじゃが、お留守留守るす away; not homeじゃけれ、大方大方おおかた probably; most likelyここじゃろうてて捜し当ててさがてて search outお出でたのじゃがなもしと、しきい threshold; doorsillところ place; location膝を突いてひざいて kneel down山嵐の返事返事へんじ response待ってって awaitる。山嵐はそうですかと玄関玄関げんかん entry hallまで出て行ったった went out (to)が、やがて帰って来てかえってて came backきみ you (familiar)、生徒が祝勝会祝勝会しゅくしょうかい victory celebration余興余興よきょう entertainment program; festivities見にに to see行かないかって誘いにさそいに to invite来たんだ。今日今日きょう today高知高知こうち Kōchi (city in southern part of Shikoku)から、何とかなんとか so-and-so; such-and-such踴りおどり danceをしに、わざわざここまで多人数多人数たにんず a large contingent (of people)乗り込んでんで arrived; made an entry来ているのだから、是非是非ぜひ by all means見物しろ見物けんぶつしろ come and see、めったに見られないおどり danceだというんだ、君もいっしょに行ってみたまえと山嵐は大いにおおいに greatly乗り気 interest; enthusiasmで、おれに同行同行どうこう accompaniment; going with勧めるすすめる exhort; encourage。おれは踴なら東京東京とうきょう Tōkyōでたくさん見ている。毎年毎年まいとし each year; every year八幡様八幡様はちまんさま Hachiman Shrineお祭りまつり festivalには屋台屋台やたい moving stage; dancing stage町内町内ちょうない town; neighborhood廻ってくるまわってくる come around (to)んだから汐酌み汐酌しおくみ shiokumi (dance)でも何でもちゃんと心得ている心得こころえている have knowledge of; be familiar with土佐っぽ土佐とさっぽ folks from Tosa (present-day Kōchi Prefecture)馬鹿馬鹿ばか fool; idiot踴なんか、見たくもないと思ったおもった thoughtけれども、せっかく山嵐が勧めるもんだから、つい行く inclinationになってもん gateへ出た。山嵐を誘いに来たものは誰かだれか whoと思ったら赤シャツのおとうと younger brotherだ。妙なみょうな odd; strangeやつ fellowが来たもんだ。

会場会場かいじょう event siteへはいると、回向院回向院えこういん Ekōin (temple in Tōkyō - birthplace of modern sumō wrestling)相撲相撲すもう sumō wrestling本門寺本門寺ほんもんじ Honmonji (temple in Tōkyō)御会式御会式おえしき Oeshiki (festival held to mark the death of Nichiren)のように幾旒となく幾旒いくながれとなく a number of (banners and flags)長いながい longはた banners所々所々ところどころ here and there植え付けたけた planted上にうえに on top of; in addition to世界世界せかい the world万国万国ばんこく all nations国旗国旗こっき national flagsをことごとく借りて来たりてた went and borrowedくらい、なわ ropeから縄、つな cord; cableから綱へ渡しかけてわたしかけて strung between大きなおおきな large; spaciousそら skyが、いつになく賑やかにぎやか colorful; lively見えるえる appearedひがし eastすみ corner一夜作りの一夜作いちやづくりの hastily-done舞台舞台ぶたい stage設けてもうけて prepared; provided、ここでいわゆる高知高知こうち Kōchi (city in southern part of Shikoku)何とかなんとか so-and-so; such-and-such踴りおどり danceをやるんだそうだ。舞台をみぎ right半町半町はんちょう half a blockばかりくると葭簀葭簀よしず reed screen囲いかこい enclosureをして、活花活花いけばな flower arrangements陳列陳列ちんれつ exhibition; displayしてある。みんなが感心して感心かんしんして be impressed眺めてながめて look uponいるが、一向一向いっこう absolutely; utterlyくだらないくだらない trifling; worthlessものだ。あんなにくさ grassesたけ bamboo曲げてげて bend嬉しがるうれしがる enjoy; take pleasure inなら、背虫の背虫せむしの hunchbacked色男色男いろおとこ handsome man; beauや、跛のびっこの lame; crippled亭主亭主ていしゅ husband持ってって have自慢する自慢じまんする boast (about)がよかろう。

舞台とは反対反対はんたい opposite方面方面ほうめん direction; sideで、しきりに花火花火はなび fireworks; rockets揚げるげる raise; launch。花火のなか inside; centerから風船風船ふうせん balloon出たた emerged; appeared帝国帝国ていこく empire万歳万歳ばんざい banzai; long live ...とかいてある。天主天主てんしゅ castle tower (usually 天守てんしゅ)まつ pinesの上をふわふわ飛んでんで fly; float営所営所えいしょ barracks; military campのなかへ落ちたちた fell; went downつぎ nextはぽんとおと sound; noiseがして、黒いくろい black団子団子だんご dumplingが、しょっとあき autumnの空を射抜く射抜いぬく shoot through; pierceように揚がると、それがおれのあたま headの上で、ぽかりと割れてれて split; rupture青いあおい blueけむり smokeかさ umbrellaほね framework (lit: bones)のように開いてひらいて open up、だらだらと空中空中くうちゅう mid air; in the sky流れ込んだながんだ flow into; drift into。風船がまた上がったがった be raised今度今度こんど this time陸海軍陸海軍りくかいぐん army and navy; military万歳と赤地赤地あかじ red background白くしろく in white染め抜いたいた left undyedやつ thing; objectかぜ wind; breeze揺られてられて be rocked; be swayed温泉温泉 baths; hot springsまち townから、相生村相生村あいおいむら Aioi Villageほう directionへ飛んでいった。大方大方おおかた probably観音様観音様かんのんさま temple of Kannon (goddess of mercy)境内境内けいだい grounds; compoundへでも落ちたろう。

しき ceremonyとき time; occasionはさほどでもなかったが、今度は大変な大変たいへんな tremendous; impressive人出人出ひとで turnoutだ。田舎田舎いなか countrysideにもこんなに人間人間にんげん people住んでんで live; resideるかと驚ろいたおどろいた be surprised; be astoundedぐらいうじゃうじゃしている。利口な利口りこうな clever; intelligentかお faceはあまり見当らない見当みあたらない not come across; not catch sight ofが、かず numbersから云うう speak (of)とたしかに馬鹿に出来ない馬鹿ばか出来できない formidable; not to be made light of。そのうち評判の評判ひょうばんの celebrated; highly-touted高知の何とか踴が始まったはじまった began。踴というから藤間藤間ふじま Fujima (dance school; dance style)か何ぞのやる踴りかと早合点早合点はやがてん hasty judgmentしていたが、これは大間違い大間違おおまちがい big mistake; completely off baseであった。

いかめしいいかめしい imposing; dignified後鉢巻後鉢巻うしろはちまき headband knotted in the backをして、立っ付け袴ばかま hakama (men's formal pleated skirt) with tight lower leggings穿いた穿いた wear (pants)おとこ men十人十人じゅうにん ten (people)ばかりずつ、舞台舞台ぶたい stageうえ top of三列三列さんれつ three rows並んでならんで lined up、その三十人三十人さんじゅうにん thirty (people)がことごとく抜き身 naked blade; drawn sword携げてげて carry (sword)いるには魂消た魂消たまげた be astonished前列前列ぜんれつ front row後列後列こうれつ back row; next rowあいだ space (between); intervalはわずか一尺五寸一尺五寸いっしゃくごすん 1 shaku and 5 sun (about half a meter; about half a yard)ぐらいだろう、左右左右さゆう left and right間隔間隔かんかく interval; spacingはそれより短いみじかい shortとも長くながく longはない。たった一人一人ひとり one (person)列を離れてはなれて be separated from; stand apart from舞台のはし edge立ってって standるのがあるばかりだ。この仲間外れの仲間外なかまはずれの apart from the group; set off from his peers男ははかま hakama (men's formal pleated skirt)だけはつけているが、後鉢巻は倹約して倹約けんやくして spare; do without、抜身の代りにかわりに in place ofむね chest太鼓太鼓たいこ drum懸けてけて attach; hang; suspendいる。太鼓は太神楽太神楽だいかぐら street performanceの太鼓と同じおなじ sameもの thingだ。この男がやがて、いやあ、はああと呑気な呑気のんきな leisurely; relaxedこえ voice出してして put forth (voice)妙なみょうな strange; unusualうた song; chantをうたいながら、太鼓をぼこぼん、ぼこぼんと叩くたたく beat; strikeうた song調子調子ちょうし tone; rhythm前代未聞の前代未聞ぜんだいみもんの novel; unique不思議な不思議ふしぎな wondrous; strangeものだ。三河万歳三河万歳みかわまんざい Mikawa Manzai (song originating from Aichi Prefecture; typically accompanied by small drums)普陀洛や普陀洛ふだらくや (participants in a Buddhist initiation rite)合併した合併がっぺいした merged; joinedものと思えばおもえば think of (as); regard (as)大したたいした (not) much間違い間違まちがい mistake; misconceptionにはならない。

歌はすこぶる悠長な悠長ゆうちょうな slow; deliberateもので、夏分夏分なつわけ summertime水飴水飴みずあめ starch syrup; glucoseのように、だらしがないだらしがない loose; without formが、句切り句切くぎり punctuation; breakをとるためにぼこぼんを入れるれる insertから、のべつのべつ constant; unceasingのようでも拍子は取れる拍子ひょうしれる can keep time; can maintain a rhythm。この拍子に応じておうじて respond to; react to三十人の抜き身がぴかぴかと光るひかる flashのだが、これはまたすこぶる迅速な迅速じんそくな quick; rapidお手際手際てぎわ skill; dexterityで、拝見して拝見はいけんして watch; look onいても冷々する冷々ひやひやする shudder; feel a cold chill隣りとなり (one) next to後ろうしろ (one) behindも一尺五寸以内に以内いないに within生きたきた real; live人間人間にんげん person居てて be (in a place)、その人間がまた切れるれる capable of cutting; sharp抜き身を自分自分じぶん oneselfと同じように振り舞わすわす swing aroundのだから、よほど調子が揃わなければそろわなければ if not aligned; if not in unison同志同志どうし comrade; peerうち strike; assault始めてはじめて start; begin怪我怪我けが injuryをすること act; matterになる。それも動かないでうごかないで without movingかたな swordだけ前後前後ぜんご fore and aftとか上下上下じょうげ up and downとかに振るのなら、まだ危険もない危険あぶなくもない not so dangerousが、三十人が一度に一度いちどに at once足踏み足踏あしぶみ stepをして横を向くよこく turn sidewaysとき instance; occasionがある。ぐるりと廻るまわる turn; spin事がある。ひざ knees; legs曲げるげる bend事がある。隣りのものが一秒一秒いちびょう one secondでも早過ぎる早過はやすぎる be too soonか、遅過ぎれば遅過おそすぎれば be too late、自分のはな nose落ちるちる fall off; be lostかも知れないかもれない it could be that ...。隣りのあたま headそがれるそがれる be sliced offかも知れない。抜き身の動くのは自由自在自由じゆ自在じざい freely; unfetteredだが、その動く範囲範囲はんい scope; limitsは一尺五寸角のかくの squaredはしら pillarのうちにかぎられた上に、前後左右のものと同方向同方向どうほうこう same direction同速度同速度どうそくど same speedにひらめかなければならない。こいつは驚いたおどろいた be amazed; be astoundedなかなかもってなかなかもって (not) by any means汐酌汐酌しおくみ shiokumi (dance)関の戸せき sekinoto (dance)及ぶところでないおよぶところでない can't measure up (to)聞いていて ask; inquireみると、これははなはだ熟練の入る熟練じゅくれんる skilledもので容易な容易ようい easy; simple事では、こういうふう mannerに調子が合わないわない won't be aligned; won't be in syncそうだ。ことにむずかしいのは、かの万歳節万歳節ばんざいぶし banzai intonationのぼこぼん先生先生せんせい leaderだそうだ。三十人の足の運びあしはこび footworkも、手の働きうごき hand movementsも、こし waist; hips曲げ方かた manner of bendingも、ことごとくこのぼこぼん君ぼこぼんくん 'bokobon' guy; drummerの拍子一つひとつ single (thing)極まるまる be determinedのだそうだ。傍で見てはたて seen from a distance; to an outsiderいると、この大将大将たいしょう old fellow一番一番いちばん most呑気そうに、いやあ、はああと気楽に気楽きらくに comfortably; at easeうたってるが、そのじつ truth; realityははなはだ責任責任せきにん responsibility重くっておもくって heavy非常に非常ひじょうに extremely骨が折れるほねれる taxing; requiring great effortとは不思議なものだ。

おれと山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)感心のあまり感心かんしんのあまり being greatly impressedこのおどり dance余念なく余念よねんなく earnestly; intently見物して見物けんぶつして watch; look uponいると、半町半町はんちょう half a blockばかり、向うむこう beyond; the opposing sideほう direction急にきゅうに suddenlyわっと云うう call out鬨の声ときこえ battle cryがして、いま nowまで穏やかにおだやかに quietly; peaceably諸所諸所しょしょ here and there; various places縦覧して縦覧じゅうらんして view; look aroundいた連中連中れんちゅう group; companyが、にわかに波を打ってなみって roll; billow; undulate右左り右左みぎひだり right and left揺き始めるうごはじめる begin to move; begin to sway喧嘩喧嘩けんか fight; row; brawlだ喧嘩だと云う声がすると思うおもう realizeと、ひと peopleそで sleeves潜り抜けてくぐけて duck through来たた came赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)おとうと younger brotherが、先生先生せんせい teacher (used here as form of address)また喧嘩です、中学中学ちゅうがく middle school (students)の方で、今朝今朝けさ this morning意趣返し意趣返いしゅがえし payback; retaliationをするんで、また師範師範しはん teachers' college (students)やつ fellows決戦決戦けっせん showdown始めたはじめた startedところです、早くはやく quickly来て下さいください pleaseと云いながらまた人の波のなかへ潜り込んでもぐんで dive into; disappear intoどっかへ行ってって goしまった。

山嵐は世話の焼ける世話せわける troublesome小僧小僧こぞう youngsters; urchinsだまた始めたのか、いい加減にすればいい加減かげんにすれば knock if off; leave it aloneいいのにと逃げるげる flee; run away人を避けながらけながら evading; side-stepping一散に一散いっさんに at full speed; at a fast clip (= 一目散いちもくさんに)馳け出したした started running; took off running見てて watchいる訳にも行かないわけにもかない one can't (just) ...から取り鎮めるしずめる quiet; quellつもりだろう。おれは無論無論むろん of course; (goes) without sayingこと fact; matter逃げる intentionはない。山嵐の踵を踏んでかかとんで on (someone's) heelsあとからすぐ現場現場げんば the scene; the placeへ馳けつけた。喧嘩は今が真最中真最中まっさいちゅう midst; the height (of)である。師範の方は五六十人五六十人ごろくじゅうにん fifty of sixty (people)もあろうか、中学はたしかに三割方三割方さんわりがた by thirty percent多いおおい numerous。師範は制服制服せいふく (school) uniformsをつけているが、中学は式後式後しきご following the ceremony大抵大抵たいてい for the most part日本服日本服にほんふく Japanese-style dress着換えて着換きがえて change (clothes)いるから、敵味方敵味方てきみかた friend or foeはすぐわかる。しかし入り乱れてみだれて be jumbled together組んづ、解れつ戦ってるんづ、ほぐれつたたかってる wrestling wildly (with each other)から、どこから、どう手を付けてけて set one's hands to (a task); attempt引き分けてけて pull apartいいか分らないわからない don't know; can't tell。山嵐は困ったなこまったな what a messと云うふう manner; appearanceで、しばらくこの乱雑な乱雑らんざつな disorderly; confused有様有様ありさま condition; situation眺めてながめて look at; observeいたが、こうなっちゃ仕方がない仕方しかたがない nothing can be done (about it)巡査巡査じゅんさ policeがくると面倒面倒めんどう difficulty; troubleだ。飛び込んでんで jump in; dive in分けようと、おれの方を見て云うから、おれは返事返事へんじ answer; responseもしないで、いきなり、一番一番いちばん most喧嘩の烈しそうなはげしそうな fierce; intenseところ place躍り込んだおどんだ rushed into止せせ stop; cease止せ。そんな乱暴乱暴らんぼう violence; roughhousingをすると学校学校がっこう school体面に関わる体面たいめんかかわる reflect on one's honor; compromise one's reputation。よさないかと、出るる put forth (voice)だけの声を出して敵と味方の分界線分界線ぶんかいせん boundary lineらしい所を突き貫けようけよう penetrateとしたが、なかなかそう旨くは行かないうまくはかない didn't go well; didn't succeed一二間一二間いちにけん 1 or 2 ken (about 3 meters; about 3 yards)はいったら、出る事も引く事も出来なくなった出来できなくなった became impossible eyesまえ front of比較的比較的ひかくてき relatively大きなおおきな large師範生師範生しはんせい teachers' college studentが、十五六十五六じゅうごろく fifteen or sixteen (years of age)中学生中学生ちゅうがくせい middle school student組み合ってって grapple (with)いる。止せと云ったら、止さないかと師範生のかた shoulder持ってって hold; take無理に無理むりに by force引き分けようとする途端途端とたん moment; instantにだれか知らないらない don't know; can't tellが、した belowからおれのあし feet; legsをすくった。おれは不意を打たれて不意ふいたれて be caught off guard; be taken unawares握ったにぎった gripped、肩を放してはなして let go (of)よこ sideways倒れたたおれた fell; went down堅いかたい hardくつ shoesでおれの背中背中せなか backうえ top (of)乗ったった stepped (on)奴がある。両手両手りょうて both handsひざ knees突いていて push; thrust下から、跳ね起きたらきたら spring up; pick oneself up、乗った奴は右の方へころがり落ちたころがりちた rolled off起き上がってがって rising; getting to one's feet見ると、三間三間さんけん 3 ken (about 5 meters; about 6 yards)ばかり向うに山嵐の大きな身体身体からだ figure; body生徒生徒せいと studentsあいだ midst挟まりながらはさまりながら be wedged among、止せ止せ、喧嘩は止せ止せと揉み返されてかえされて being pushed aroundるのが見えた。おい到底到底とうてい utterly; absolutely駄目駄目だめ no good; hopelessだと云ってみたが聞えないきこえない couldn't hearのか返事もしない。

ひゅうと風を切ってかぜって through the air飛んで来たんでた came flyingいし stone; rockが、いきなりおれの頬骨頬骨ほおぼね cheekbone中ったあたった hit; struckなと思ったらおもったら felt; realized後ろうしろ behindからも、背中背中せなか backぼう stick; clubどやしたどやした drubbed; delivered a blowやつ fellowがある。教師教師きょうし teacher; instructorの癖にくせに even ...; despite being ...出てて taking partいる、打てて attack; get them打てと云うう shout; call outこえ voiceがする。教師は二人二人ふたり two (people)だ。大きいおおきい big奴と、小さいちいさい small奴だ。石を抛げろげろ hurl; throw。と云う声もする。おれは、なに生意気な生意気なまいきな impertinent; brashこと thingsぬかすぬかす (have the impertinence to) sayな、田舎者田舎者いなかもの country bumpkinsの癖にと、いきなり、そば nearby; next to居たた be (in a place)師範生師範生しはんせい teachers' college studentあたま head張りつけてりつけて slap; whackやった。石がまたひゅうと来るる come; arrive今度今度こんど this timeはおれの五分刈の五分刈ごぶがりの closely cropped (head)頭を掠めてかすめて grazed後ろのほう direction飛んで行ったんでった went flying山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)はどうなったか見えないえない couldn't see。こうなっちゃ仕方がない仕方しかたがない have no choice始めはじめ at first喧嘩喧嘩けんか fight; row; brawlをとめにはいったんだが、どやされたり、石をなげられたりして、恐れ入っておそって be defeated; be put to shame引き下がるがる retreatうんでれがんうんでれがん fool; sucker (obsolete word)があるものか。おれをだれ whoだと思うんだ。身長身長なり stature; buildは小さくっても喧嘩の本場本場ほんば center of; origin of修行を積んだ修行しゅうぎょうんだ be thoroughly trained (in)兄さんにいさん young manだと無茶苦茶に無茶苦茶むちゃくちゃに pell-mell張り飛ばしたりばしたり sent reeling、張り飛ばされたりしていると、やがて巡査巡査じゅんさ policeだ巡査だ逃げろげろ run; let's go逃げろと云う声がした。いま now; the presentまで葛練り葛練くずねり arrowroot paste; ground kudzuなか middle (of)泳いでおよいで swimるように身動き身動みうごき bodily movement出来なかった出来できなかった was not possibleのが、急にきゅうに suddenlyらく free; comfortableになったと思ったら、てき foe; adversary味方味方みかた friend; ally一度に一度いちどに at once引上げてげて withdraw (from); leaveしまった。田舎者でも退却退却たいきゃく retreat; withdrawal巧妙巧妙こうみょう dextrous; cleverだ。クロパトキンクロパトキン Kuropatkin (Russian Imperial Minister of War Aleksey Kuropatkin)より旨いうまい skilledくらいである。

山嵐はどうしたかと見ると、紋付紋付もんつき crested (bearing one's family crest)一重羽織一重羽織ひとえばおり single-layered Japanese half-coatずたずたにしてずたずたにして tear into shreds向うむこう beyond; over thereの方ではな nose拭いていて wipeいる。鼻柱鼻柱はなばしら bridge of the noseをなぐられて大分大分だいぶ a great deal出血した出血しゅっけつした bled; lost bloodんだそうだ。鼻がふくれ上がってふくれがって be swollen up真赤真赤まっか bright redになってすこぶる見苦しい見苦みぐるしい unsightly; appalling。おれは飛白飛白かすり splashed patternあわせ a lined kimono着てて wearいたからどろ mud; dirtだらけになったけれども、山嵐の羽織羽織はおり haori (Japanese half-coat)ほどな損害損害そんがい damageはない。しかし頬ぺたほっぺた cheekぴりぴりしてぴりぴりして sting; burnたまらない。山嵐は大分血が出ているている be bleedingぜと教えておしえて tell; informくれた。

巡査は十五六名十五六名じゅうごろくめい fifteen or sixteen (people)来たのだが、生徒生徒せいと students反対反対はんたい opposite方面方面ほうめん directionから退却したので、捕まったつらまった be caught; be detainedのは、おれと山嵐だけである。おれらは姓名姓名せいめい full name告げてげて give (one's name)一部始終一部始終いちぶしじゅう the whole story; a complete account話したらはなしたら told、ともかくも警察警察けいさつ police (station)まで来いい comeと云うから、警察へ行って、署長署長しょちょう chief (of police)まえ front ofで事の顛末顛末てんまつ details; facts述べてべて state; convey下宿下宿げしゅく lodgings帰ったかえった returned (home)