きみ you (familiar)釣りり fishing行きませんかきませんか do you ...; would you like to go ...赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)がおれに聞いたいた asked。赤シャツは気味の悪るい気味きみるい eerie; disquietingように優しい声やさしいこえ soft voice; sugary voice出すす speak with (voice)おとこ manである。まるで男だかおんな womanだか分りゃしないわかりゃしない can't tell; can't discern。男なら男らしい声を出すもんだ。ことに大学大学だいがく university卒業生卒業生そつぎょうせい graduateじゃないか。物理物理ぶつり physics学校学校がっこう schoolでさえおれくらいな声が出るのに、文学士文学士ぶんがくし degree holderがこれじゃ見っともないっともない disgraceful; ignoble

おれはそうですなあと少しすこし a bit進まないすすまない reluctant; hesitating (lit: does not advance)返事返事へんじ answerをしたら、君釣をしたこと act; factがありますかと失敬な失敬しっけいな disrespectful; impertinent事を聞く。あんまりないが、子供子供こども childとき time; period小梅小梅こうめ Koume (place name)釣堀釣堀つりぼり fishing pondふな crucian carp三匹三匹さんびき three (animals; creatures)釣った事がある。それから神楽坂の毘沙門神楽坂かぐらざか毘沙門びしゃもん Kagurazaka no Bishamon (name of a temple in Tōkyō; present day 善國寺ぜんこくじ)縁日縁日えんにち (temple) festival八寸八寸はっすん 8 sun (about 24 cm or 10 inches)ばかりのこい carpはり (fish) hook; needle引っかけてっかけて caughtしめたしめた had (it); got (it)思ったらおもったら thoughtぽちゃりとぽちゃりと with a splash落としてとして droppedしまったがこれはいま now考えてかんがえて think about; consider惜しいしい disappointing; regrettable云ったらったら said; explained、赤シャツはあご chin前の方まえほう forward突き出してして thrust outホホホホと笑ったわらった laughed; chuckled何もなにも (not) at allそう気取って気取きどって putting on airs笑わなくっても、よさそうなもの (here: speech particle)だ。「それじゃ、まだ釣りのあじ flavor; essenceは分らんですな。お望みならのぞみなら if (you) likeちと伝授伝授でんじゅ instructionしましょう」とすこぶる得意得意とくい pride; self-satisfactionである。だれがご伝授をうけるものか。一体一体いったい properly speakingつり fishingりょう huntingをする連中連中れんじゅう crowd; bunch (of people); companyはみんな不人情な不人情ふにんじょうな unkind; inhuman人間人間にんげん personばかりだ。不人情でなくって、殺生殺生せっしょう destruction of life; butcheryをして喜ぶよろこぶ rejoice; be delightedわけ reason; expectationがない。さかな fishだって、とり birdだって殺されるころされる be killedより生きてるきている be aliveほう alternativeらく pleasure; easeに極まってるまってる it's a given that ...。釣や猟をしなくっちゃ活計活計かっけい livelihoodがたたないなら格別格別かくべつ different; an exceptionだが、何不足なく何不足なにふそくなく lacking nothing暮してくらして liveいる上にうえに on top of生き物もの life; a living beingを殺さなくっちゃ寝られないられない can't sleepなんて贅沢な贅沢ぜいたくな extravagantはなし storyだ。こう思ったが向うむこう the other partyは文学士だけに口が達者だくち達者たっしゃだ be an eloquent speakerから、議論議論ぎろん argumentじゃ叶わないかなわない be no match forと思って、だまってた。すると先生先生せんせい sensei (here: Red Shirt)このおれを降参降参こうさん submission; surrenderさせたと疳違いして疳違かんちがいして be mistaken早速早速さっそく right away伝授しましょう。おひまなら、今日今日きょう todayどうです、いっしょに行っちゃ。吉川吉川よしかわ Yoshikawa (the art teacher)くん (suffix of familiarity for males)二人ぎり二人ふたりぎり just (us) twoじゃ、淋しいさむしい lonesome; solitaryから、来たまえたまえ please come (with us)としきりに勧めるすすめる exhort; promote。吉川君というのは画学画学ががく drawing; art教師教師きょうし instructor例のれいの the aforementioned ...野だいこだいこ Nodaiko (nickname for Yoshikawa)の事だ。この野だだ Noda (short for Nodaiko)は、どういう了見了見りょうけん idea; intentionだか、赤シャツのうちへ朝夕朝夕あさゆう morning and evening出入して出入でいりして coming and going、どこへでも随行して行く随行ずいこうしてく follow; attend (on a person); tag along。まるで同輩同輩どうはい colleagueじゃない。主従主従しゅうじゅう lord and vassal (usually 主従しゅじゅう)みたようだ。赤シャツの行くところ placeなら、野だは必ずかならず without fail行くに極っているんだから、今さら驚ろきもしないおどろきもしない not (be) at all surprisedが、二人二人ふたり two (people)行けばけば go済むむ be settled; be fineところを、なんで無愛想の無愛想ぶあいその unsociable; brusque (usually 無愛想ぶあいそうな)おれへ口を掛けたくちけた called out to; invitedんだろう。大方大方おおかた probably; most likely高慢ちきな高慢こうまんちきな boast-worthy道楽道楽どうらく pastimeで、自分の自分じぶんの one's own釣るところをおれに見せびらかすせびらかす show offつもりかなんかで誘ったさそった invitedに違いないちがいない without a doubt。そんな事で見せびらかされるおれじゃない。まぐろ bluefin tuna二匹二匹にひき two (creatures)や三匹釣ったって、びくともするもんか。おれだって人間だ、いくら下手下手へた unskilledだっていと (fishing) line; threadさえ卸しゃおろしゃ lower何かなにか somethingかかるだろう、ここでおれが行かないと、赤シャツの事だから、下手だから行かないんだ、嫌いきらい distasteful; dislikedだから行かないんじゃないと邪推する邪推じゃすいする make an unjust conjectureに相違ない相違そういない no doubt。おれはこう考えたかんがえた consideredから、行きましょうと答えたこたえた answered。それから、学校学校がっこう schoolをしまって、一応一応いちおう once; for a bitうちへ帰ってかえって returned支度を整えて支度したくととのえて made preparations停車場停車場ていしゃば stationで赤シャツと野だを待ち合せてあわせて met up withはま shore; beachへ行った。船頭船頭せんどう boatman一人一人ひとり one (person)で、ふね boat細長い細長ほそながい long and narrow東京東京とうきょう Tōkyōあたり around; in the vicinity ofでは見たた seen事もない恰好恰好かっこう shape; formである。さっきから船中船中ふなじゅう throughout the boat見渡す見渡みわたす look over釣竿釣竿つりざお fishing pole一本一本いっぽん one (long object)見えないえない can't be seen; is not present。釣竿なしで釣が出来る出来できる be possible; can doものか、どうする了見だろうと、野だに聞くと、沖釣沖釣おきづり open-water fishingには竿竿さお rod用いませんもちいません don't use、糸だけでげすと顋を撫でてあごでて rubbing his chin黒人じみた黒人くろうとじみた acting the expert事を云った。こう遣り込められるめられる be snubbed; be talked down toくらいならだまっていればよかった。

船頭船頭せんどう boatmanはゆっくりゆっくり漕いでいで rowingいるが熟練熟練じゅくれん skill; mastery恐しいおそろしい tremendous; marvelousもので、見返える見返みかえる look backと、はま shore小さくちいさく small見えるえる appearくらいもう出ているている be out; be away高柏寺高柏寺こうはくじ Kōhakuji (name of a Temple)五重の塔五重ごじゅうとう five-storied pagodaもり forestうえ above抜け出してして sticking out of; protruding throughはり needleのように尖がってるとんがってる sharp; pointed向側向側むこうがわ other side見るる look (toward)青嶋青嶋あおしま Aoshima (name of island)浮いているいている floating。これは人の住まないひとまない uninhabitedしま islandだそうだ。よく見るといし rockまつ pine treesばかりだ。なるほど石と松ばかりじゃ住めっこない。赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)は、しきりに眺望して眺望ちょうぼうして taking in the surroundingsいい景色景色けしき sceneryだと云ってって comment; remarkる。野だだ short for Nodaiko (nickname for Yoshikawa, the art teacher)絶景絶景ぜっけい picturesque sceneryでげすと云ってる。絶景だかなん whatだか知らないらない don't knowが、いい心持ち心持こころもち feelingには相違ないには相違そういない there's no doubt。ひろびろとしたうみ seaの上で、潮風潮風しおかぜ sea breeze吹かれるかれる feel (a breeze)のはくすり remedy; restorativeだと思ったおもった thought; felt。いやに腹が減るはらる felt hungry。「あの松を見たまえ、みき (tree) trunk真直真直まっすぐ straightで、上がかさ umbrellaのように開いてひらいて openターナーターナー (Joseph) Turner paintingにありそうだね」と赤シャツが野だに云うと、野だは「全くまったく absolutely; completelyターナーですね。どうもあの曲り具合まが具合ぐあい curvatureったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔心得顔こころえがお knowing look; proud lookである。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らないこまらない doesn't matter; am not troubled (by)事だから黙っていただまっていた kept quiet; remained silentふね boatは島を右に見てみぎて keeping (something) to its rightぐるりと廻ったまわった rounded; turnedなみ wavesは全くない。これで海だとは受け取りにくいりにくい hard to believeほどたいら smooth; calm (sea)だ。赤シャツのお陰でのおかげで thanks to ...はなはだ愉快愉快ゆかい pleasant; enjoyableだ。出来る事なら、あの島の上へ上がってがって board; land onみたいと思ったから、あのいわ rock; boulderのあるところ placeへは舟はつけられないんですかと聞いてみた。つけられん事もないですが、釣をするには、あまりきし shorelineじゃいけないですと赤シャツが異議異議いぎ objection; dissent申し立てたもうてた state; put forward。おれは黙ってた。すると野だがどうです教頭教頭きょうとう Head Teacher (addressing Red Shirt)、これからあの島をターナー島ターナーとう Turner Island名づけようづけよう nameじゃありませんかと余計な余計よけいな uncalled for; unsolicited発議発議ほつぎ proposal; suggestion (usually 発議はつぎ)をした。赤シャツはそいつは面白い面白おもしろい interesting; a good idea吾々吾々われわれ weはこれからそう云おうと賛成した賛成さんせいした agreed。この吾々のうちにおれもはいってるなら迷惑迷惑めいわく annoyance; botherだ。おれには青嶋でたくさんだ。あの岩の上に、どうです、ラフハエルのマドンナを置いちゃいちゃ place。いい画が出来ますぜと野だが云うと、マドンナのはなし talk (of)はよそうじゃないかホホホホと赤シャツが気味の悪るい気味きみるい unsettling; disquieting笑い方わらかた manner of laughingをした。なに誰も居ないだれない no one presentから大丈夫大丈夫だいじょうぶ okay; not a problemですと、ちょっとおれのほう directionを見たが、わざと顔をそむけてかおをそむけて turn one's face awayにやにやと笑ったにやにやとわらった put on a smirk; smiled maliciously。おれは何だかやな心持ちがした。マドンナだろうが、小旦那小旦那こだんな a young masterだろうが、おれの関係関係かんけい connection; relevanceした事でないから、勝手に勝手かってに as one likes立たせるたせる place; position (something or someone)がよかろうが、ひと a person分らないわからない can't understand事を言ってって speak; talk (of)分らないから聞いたって構やしませんかまやしません doesn't matter; is of no concernてえようなふう manner; mienをする。下品下品げひん vulgar; in poor taste仕草仕草しぐさ gesture; behaviorだ。これで当人当人とうにん he/she (the person in question)わたし I江戸っ子江戸えど a native of Tōkyōでげすなどと云ってる。マドンナと云うのは何でも赤シャツの馴染馴染なじみ familiarity; intimacy芸者芸者げいしゃ geisha渾名渾名あだな pet nameか何かに違いないと思った。なじみの芸者を無人島無人島むじんとう uninhabited island松の木まつ pine treeした beneathに立たして眺めてながめて gaze uponいれば世話はない世話せわはない is fine (with me)。それを野だが油絵油絵あぶらえ oil paintingにでもかいて展覧会展覧会てんらんかい (art) exhibition出したらしたら submit; put forwardよかろう。

ここいらがいいだろうと船頭船頭せんどう boatmanふね boatをとめて、いかり anchor卸したおろした loweredいく how manyひろ hiro (1.82 m; .994 fathom; 5.97 ft)あるかねと赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)聞くく ask; inquireと、六尋六尋むひろ six hiro (about 11 m, or 36 ft)ぐらいだと云うう say; reply。六尋ぐらいじゃたい sea bream; snapperはむずかしいなと、赤シャツはいと lineうみ seaなげ込んだなげんだ cast; threw into大将大将たいしょう old fellow鯛を釣るる fish for; catch intention見えるえる appear豪胆な豪胆ごうたんな stouthearted; of intrepid spiritものだ。野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)は、なに教頭教頭きょうとう Head Teacher (addressing Red Shirt)お手際手際てぎわ skillじゃかかりますよ。それになぎなぎ calm (sea)ですからとお世辞世辞せじ flattery; fawning云いながらいながら while saying、これも糸を繰り出してして play out (a line)投げ入れるれる cast into何だかなんだか something先にさきに up frontおもり weight; sinkerのようななまり lead (metal)ぶら下がってるぶらがってる hanging fromだけだ。うき float; bobberがない。浮がなくってつり fishingをするのは寒暖計寒暖計かんだんけい thermometerなしで熱度熱度ねつど temperatureをはかるようなものだ。おれには到底出来ない到底とうてい出来できない can't possibly do見ているている regard (a situation)と、さあきみ you (familiar form of address)もやりたまえ糸はありますかと聞くく ask。糸はあまるほどあるが、浮がありませんと云ったら、浮がなくっちゃ釣が出来ないのは素人素人しろうと beginner; amateurですよ。こうしてね、糸が水底水底みずそこ (sea) bottomへついた時分時分じぶん time; momentに、船縁船縁ふなべり gunwale; side of a boatところ place人指しゆび人指ひとさしゆび index finger呼吸をはかる呼吸こきゅうをはかる monitor the tension (lit: measure the breathing)んです、食うう biteとすぐ hand答えるこたえる answer; strike home。――そらきた、と先生先生せんせい sensei (here: Red Shirt)急にきゅうに suddenly糸をたぐり始めるたぐりはじめる start to reel inから、何かかかったと思ったらおもったら thought何にもかからない、 baitがなくなってたばかりだ。いい気味だいい気味きびだ Serves him right! (usually 気味きみ)。教頭、残念な残念ざんねんな unfortunateこと act; happeningをしましたね、いま (just) nowのはたしかに大ものおおもの big oneに違いなかったちがいなかった without a doubtんですが、どうも教頭のお手際でさえ逃げられちゃげられちゃ get away今日今日きょう today油断油断ゆだん inattentionができませんよ。しかし逃げられても何ですね。浮と睨めくらにらめくら stare-downをしている連中連中れんじゅう crowd; lot (of people)よりはましですね。ちょうど歯どめどめ brakeがなくっちゃ自転車自転車じてんしゃ bicycle乗れないれない can't rideのと同程度同程度どうていど just like ...; same thing (as)ですからねと野だは妙なみような odd; strange事ばかり喋舌る喋舌しゃべる chatter; prattle on。よっぽど撲りつけてなぐりつけて pound; pummelやろうかと思った。おれだって人間人間にんげん human beingだ、教頭ひとりで借り切ったった borrowed exclusively; rented for a private party海じゃあるまいし。広いひろい wide; expansive所だ。かつお bonito一匹一匹いっぴき one (creature)ぐらい義理に義理ぎりに as a courtesy; out of a sense of dutyだって、かかってくれるだろうと、どぼんと錘と糸を抛り込んでほうんで threw inいい加減にいい加減かげんに half-heartedly指の先ゆびさき fingertipであやつっていた。

しばらくすると、何だかなんだか somehowぴくぴくぴくぴく twitch; wiggleいと lineにあたるものがある。おれは考えたかんがえた considered; thought (about it)。こいつはさかな fishに相違ない相違そういない without a doubt生きてるきてる livingものでなくっちゃ、こうぴくつくわけ reason; expectationがない。しめたしめた got it!釣れたれた caught one!ぐいぐいぐいぐい strongly; vigorously手繰り寄せた手繰たぐせた reeled in。おや釣れましたかね、後世後世こうせい youth; young scholars (usually 後生こうせい)恐るべしおそるべし should be regarded with respectだと野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)がひやかすうち、糸はもう大概大概たいがい mostly; substantially手繰り込んで手繰たぐんで finished reeling inただ五尺五尺ごしゃく five shaku (about 1.5 m, or 5 feet)ばかりほどしか、みず water浸いていて submergedおらん。船縁船縁ふなべり gunwale; side of a boatから覗いてのぞいて take a lookみたら、金魚金魚きんぎょ goldfishのようなしま stripeのある魚が糸にくっついて、右左右左さゆう left and right漾いながらただよいながら drifting; swimming hand応じておうじて obey; respond (to)浮き上がってくるがってくる come floating up面白い面白おもしろい fun; exciting水際水際みずぎわ water's edgeから上げるげる bring upとき、ぽちゃりとぽちゃりと with a splash跳ねたねた jumped; buckedから、おれのかお face潮水潮水しおみず sea waterだらけになった。ようやくつらまえて、はり hookをとろうとするがなかなか取れないれない can't get it捕まえたつらまえた seized; gripped手はぬるぬるする。大いにおおいに a great deal気味がわるい気味きみがわるい unpleasant面倒面倒めんどう bothersomeだから糸を振ってって swung胴の間どう center of the boat擲きつけたらたたきつけたら beat; struck、すぐ死んでんで diedしまった。赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)と野だは驚ろいておどろいて in surprise見ているている looked on。おれはうみ seaなか in; withinで手をざぶざぶと洗ってあらって washed鼻の先はなさき tip of one's noseへあてがってみた。まだ腥臭い腥臭なまぐさい fishy; smelling of fish。もう懲り懲りだりだ have had enough (of)なに whatが釣れたって魚は握りたくないにぎりたくない don't want to handle。魚も握られたくなかろう。そうそう糸を捲いていて wind upしまった。

一番槍一番槍いちばんやり first strikeお手柄手柄てがら exploit; notable achievementだがゴルキゴルキ multicolorfin rainbow fishじゃ、と野だがまた生意気生意気なまいき impudence; smart-aleck remark云うう say; mentionと、ゴルキと云うと露西亜露西亜ロシア Russia文学者文学者ぶんがくしゃ man of letters; literati (reference to Maxim Gorky; ゴールキー in Japanese)みたような nameだねと赤シャツが洒落た洒落しゃれた joked; played upon words。そうですね、まるで露西亜の文学者ですねと野だはすぐ賛成賛成さんせい agreementしやがる。ゴルキが露西亜の文学者で、丸木丸木まるき Maruki Riyō (丸木利陽 famous photographer 1854-1923)しば Shiba (place in Tōkyō where Maruki exhibited photographs)写真師写真師しゃしんし (professional; expert) photographerで、米のなる木こめのなる rice seedling (unusual expression used here for word play)命の親いのちおや life-giver; source of lifeだろう。一体一体いったい indeedこの赤シャツはわるい癖わるいくせ bad habitだ。だれ whom(ever)捕まえてつらまえて grab hold of; engage with片仮名片仮名カタカナ katakana唐人唐人とうじん foreignerの名を並べたがるならべたがる like to spew out; like to enumerateひと peopleにはそれぞれそれぞれ respective専門専門せんもん specialty; field of expertiseがあったものだ。おれのような数学数学すうがく mathematics教師教師きょうし teacherにゴルキだか車力車力しゃりき cartman; cart pullerだか見当がつく見当けんとうがつく have any ideaものか、少しすこし a little遠慮する遠慮えんりょする show some consideration (for others)がいい。云うならフランクリンフランクリン Benjamin Franklin自伝自伝じでん autobiographyだとかプッシング、ツー、ゼ、フロントプッシング、ツー、ゼ、フロント Pushing to the Front (Orison Swett Marden - published 1894)だとか、おれでも知ってるってる know; be familiar with名を使う使つかう useがいい。赤シャツは時々時々とこどき sometimes; from time to time帝国文学帝国文学ていこくぶんがく Imperial Literatureとかいう真赤な真赤まっかな bright red雑誌雑誌ざっし magazine学校学校がっこう school持って来てってて bring難有そうに難有ありがたそうに appreciatively; reverently読んでいるんでいる read; peruse山嵐山嵐やまあらし Yama Arashi (nickname for Hotta, the head mathematics teacher)聞いていて ask (about); inquireみたら、赤シャツの片仮名はみんなあの雑誌から出るる appear; originate (from)んだそうだ。帝国文学も罪なつみな evil; wicked雑誌だ。

それから赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)一生懸命に一生懸命いっしょうけんめいに for all one's worth; with utmost effort釣っていたっていた fishedが、やく about一時間一時間いちじかん one hourばかりのうちに二人二人ふたり two (people); the two of them十五六十五六じゅうごろく fifteen or sixteen上げたげた brought up; caught (fish)可笑しい可笑おかしい funny; curiousこと fact; happeningに釣れるのも、釣れるのも、みんなゴルキゴルキ multicolorfin rainbow fishばかりだ。たい sea bream; snapperなんて薬にしたくってもありゃしないくすりにしたくってもありゃしない there was not the slightest hint of今日今日きょう today露西亜露西亜ロシア Russia文学文学ぶんがく literature大当り大当おおあたり jackpot; big haulだと赤シャツが野だに話しているはなしている remarked。あなたの手腕手腕しゅわん capability; skillでゴルキなんですから、わたし I; meなんぞがゴルキなのは仕方がありません仕方しかたがありません can't be helped当り前あたまえ proper; fairですなと野だが答えているこたえている replied船頭船頭せんどう boatman聞くく ask; inquireとこの小魚小魚こざかな small fishほね bones多くっておおくって many; numerous、まずくって、とても食えないえない inedible; not fit for eatingんだそうだ。ただ肥料肥料こやし fertilizerには出来る出来できる make (into); use (as)そうだ。赤シャツと野だは一生懸命に肥料を釣っているんだ。気の毒どく misery; wretchedness至りいたり epitome; the height ofだ。おれは一匹一匹いっぴき one (creature)懲りたりた had enough (of something)から、胴の間どう middle of the boat仰向け仰向あおむけ supine; lying face upになって、さっきから大空大空おおぞら open sky眺めてながめて gaze atいた。つり fishingをするよりこのほう alternative; choiceがよっぽど洒落ている洒落しゃれている smart; stylish

すると二人は小声小声こごえ low voice; whisper何かなにか something話し始めたはなはじめた began talking (about)。おれにはよく聞えないきこえない couldn't hear、また聞きたくもない。おれはそら sky見ながらながら while looking (at)きよ Kiyo (name of Botchan's former maidservant)の事を考えているかんがえている thinking aboutかね moneyがあって、清をつれて、こんな奇麗な奇麗きれいな beautifulところ place遊びあそび sightseeing; recreation来たらたら come (to a place)さぞ愉快愉快ゆかい pleasant; enjoyableだろう。いくら景色景色けしき sceneryがよくっても野だなどといっしょじゃつまらない。清は皺苦茶皺苦茶しわくちゃ wrinkleだらけの婆さんばあさん old ladyだが、どんな所へ連れて出たれてた take (someone) outって恥ずかしいずかしい ashamed; embarrassed心持ち心持こころもち feelingはしない。野だのようなのは、馬車馬車ばしゃ (horse-drawn) carriage乗ろうろう ride (in or on)が、ふね boatに乗ろうが、凌雲閣凌雲閣りょううんかく Ryōunkaku (Japan's tallest building in Meiji era)のろうのろう get (up) ontoが、到底到底とうてい (not) by any means寄り付けたけた can approach (a person)ものじゃない。おれが教頭教頭きょうとう head teacherで、赤シャツがおれだったら、やっぱりおれにへけつけお世辞世辞せじ flattery; fawning使って使つかって use; apply赤シャツを冷かすひやかす banter; poke fun atに違いないちがいない no doubt江戸っ子江戸えど native of Tōkyō軽薄軽薄けいはく superficial; fickleだと云うう (they) sayがなるほどこんなものが田舎巡り田舎巡いなかまわり traveling the countrysideをして、私は江戸っ子でげすと繰り返してかえして repeatいたら、軽薄は江戸っ子で、江戸っ子は軽薄の事だと田舎者田舎者いなかもの country folk思うおもう thinkに極まってるまってる is a given。こんな事を考えていると、何だか二人がくすくす笑い出したくすくすわらした began to chuckle笑い声わらごえ laughterあいだ interval; time betweenに何か云うが途切れ途切れ途切とぎ途切とぎれ interrupted; intermittentでとんと要領を得ない要領ようりょうない can't make out the meaning

「え? どうだか……」「……全くですまったくです you don't say……知らないらない doesn't knowんですから……つみ offense; misconductですね」「まさか……」「バッタバッタ grasshoppersを……本当本当ほんとう really; in truthですよ」

おれは外のほかの other言葉言葉ことば wordsには耳を傾けなかったみみかたむけなかった didn't listen (to); didn't pay attention (to)が、バッタバッタ grasshopper云うう called野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)ことば word; speech聴いたいた heardとき time; moment; when ...は、思わずおもわず involuntarily; reflexivelyきっとなった。野だは何のためかなんのためか for some reasonバッタと云う言葉だけことさら力を入れてちかられて placing emphasis on明瞭に明瞭めいりょうに clearlyおれのみみ earにはいるようにして、そのあとをわざとぼかしてしまった。おれは動かないでうごかないで without movingやはり聞いていたいていた listened

「また例のれいの that ...堀田堀田ほった Hotta (name of the head mathematics teacher; a.k.a. Yama Arashi)が……」「そうかも知れないかもれない might be; could be……」「天麩羅天麩羅てんぷら tempura……ハハハハハ」「……煽動して煽動せんどうして incited……」「団子団子だんご dumplingsも?」

言葉はかように途切れ途切れ途切とぎ途切とぎれ interrupted; intermittentであるけれども、バッタだの天麩羅だの、団子だのというところをもって推し測ってはかって guess; inferみると、何でもおれのことについて内所話し内所話ないしょばなし private talk; secret whispersをしているに相違ない相違そういない without a doubt話すはなす talkならもっと大きなおおきな big; loud (voice)こえ voiceで話すがいい、また内所話をするくらいなら、おれなんか誘わなければさそわなければ don't inviteいい。いけ好かないいけかない disagreeable; nasty連中連中れんちゅう company; fellowsだ。バッタだろうが雪踏雪踏せった leather-soled sandalsだろうが、 misdeed; wrongはおれにあること fact; matterじゃない。校長校長こうちょう (school) principalがひとまずあずけろと云ったった saidから、たぬき Tanuki (nickname for the school principal)かお face; honorにめんじてにめんじて out of consideration forただ今ただいま presently; for nowのところは控えているひかえている exercising restraint; holding backんだ。野だの癖にくせに as expected of ...入らぬらぬ unsolicited; unneeded批評批評ひひょう comment; critiqueをしやがる。毛筆毛筆けふで (paint) brushでもしゃぶって引っ込んでるんでる back off; withdrawがいい。おれの事は、遅かれ早かれおそかれはやかれ sooner or later、おれ一人で一人ひとりで by oneself片付けて片付かたづけて take care ofみせるから、差支えはない差支さしつかえはない not a hindranceが、また例の堀田がとか煽動してとか云う文句文句もんく words; phrases気にかかるにかかる cause concern。堀田がおれを煽動して騒動騒動そうどう disturbance; uproarを大きくしたと云う意味意味いみ meaningなのか、あるいは堀田が生徒生徒せいと studentsを煽動しておれをいじめたと云うのか方角方角ほうがく direction; one's bearingsがわからない。青空青空あおぞら blue sky見てて look atいると、日の光ひかり sunlightがだんだん弱って来てよわってて grow weak少しすこし a bitはひやりとするかぜ wind; breeze吹き出したした began to blow線香線香せんこう incenseけむり smokeのようなくも cloudsが、透き徹るとおる transparentそこ depthsうえ front of静かにしずかに silently伸して行ったしてった spread out; thinned away思ったらおもったら (when) it seemed、いつしか底のおく interior流れ込んでながんで flowed into、うすくもやを掛けたもやをけた suspended a mist (over)ようになった。

もう帰ろうかえろう return; head backかと赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)思い出したおもした rememberedように云うう sayと、ええちょうど時分時分じぶん timeですね。今夜今夜こんや tonightはマドンナのきみ you (familiar)お逢いい meeting; dateですかと野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)が云う。赤シャツは馬鹿あ馬鹿ばかあ foolishness; nonsense云っちゃいけない、間違いになる間違まちがいになる lead to troubleと、船縁船縁ふなべり gunwale; side of a boat身を倚たしたたした was leaning againstやつ fellowを、少しすこし a bit起き直るなおる sit up; straighten up。エヘヘヘヘ大丈夫ですよ大丈夫だいじょうぶですよ its okay; don't worry聞いたいた heardって……と野だが振り返ったかえった looked backとき time; when ...、おれはさら dishのような eyesを野だの頭の上あたまうえ top of one's headへまともに浴びせ掛けてびせけて poured onto; blasted (with)やった。野だはまぼしそうにまぼしそうに as though blinded by a bright light (usually まぶしそうに)引っ繰り返ってかえって be upset; be taken down、や、こいつこいつ this one; this guy降参だ降参こうさんだ a handful; a tough customer首を縮めてくびちじめて shrugging one's shouldersあたま head掻いたいた scratched何というなんという what ...猪口才猪口才ちょこざい impertinence; presumptuousnessだろう。

ふね boat静かなしずかな silentうみ seaきし shore漕ぎ戻るもどる row back (to)。君つり fishingはあまり好きき suiting one's taste; enjoyableでないと見えますえます seam; appearねと赤シャツが聞くく askedから、ええ寝てて lie down; restいてそら sky見るる look atほう alternativeがいいですと答えてこたえて answered吸いかけたいかけた had been smoking巻烟草巻烟草まきたばこ cigarette (rolled tobacco)を海の中へなかへ intoたたき込んだらたたきんだら threw into、ジュと音がしておとがして made a sound oarあし foot; base掻き分けられたけられた pushed apartなみ wave; rippleうえ top揺られながらられながら being swayed漾っていったただよっていった floated away。「君が来たた came; arrivedんで生徒生徒せいと students大いにおおいに a great deal喜んでいるよろこんでいる be glad; be pleasedから、奮発して奮発ふんぱつして put forth one's best effortやってくれたまえ」と今度今度こんど this timeは釣にはまるで縁故縁故えんこ connectionもないこと matter; subject云い出したした mentioned; brought up (a topic for conversation)。「あんまり喜んでもいないでしょう」「いえ、お世辞世辞せじ flattery; empty complimentじゃない。全くまったく absolutely; completely喜んでいるんです、ね、吉川吉川よしかわ Yoshikawa (name of the art teacher, a.k.a. Nodaiko)くん (suffix of familiarity for male names)」「喜んでるどころじゃない。大騒ぎ大騒おおさわぎ uproar; hooplaです」と野だはにやにやと笑ったにやにやとわらった grinned; smirked。こいつの云う事は一々一々いちいち every single one癪に障るしゃくさわる grate on one's nervesからみょう strange; curiousだ。「しかし君注意注意ちゅうい care; cautionしないと、険呑険呑けんのん dangerous; perilousですよ」と赤シャツが云うから「どうせ険呑です。こうなりゃ険呑は覚悟覚悟かくご readiness; resignationです」と云ってやった。実際実際じっさい in fact; in truthおれは免職免職めんしょく dismissal (from one's duties)になるか、寄宿生寄宿生きしゅくせい boarding studentsをことごとくあやまらせるか、どっちか一つひとつ one (thing)にする了見了見りょうけん viewpoint; intentionでいた。「そう云っちゃ、取りつきどころもないりつきどころもない there's no starting point (for resolution)が――実はじつは in fact; in truthぼく I教頭教頭きょうとう head teacherとして君のためを思うおもう think of; considerから云うんだが、わるく取っちゃっちゃ take; interpret困るこまる be troubled; be distressed」「教頭は全く君に好意好意こうい good intentions持ってって have; holdるんですよ。僕も及ばずながらおよばずながら to the best of (my) limited ability同じおなじ same江戸っ子江戸えど native of Tōkyōだから、なるべく長くながく for a long timeご在校在校ざいこう presence at the school願ってねがって wish for; hope forお互にたがいに mutually; for each other力になろうちからになろう help (someone)と思って、これでも蔭ながらかげながら secretly (from the shadows)尽力して尽力じんりょくして exert oneself to the utmostいるんですよ」と野だが人間人間にんげん human beingなみ becoming of ...の事を云った。野だのお世話世話せわ care; protectionになるくらいなら首を縊ってくびくくって hang oneself; strangle oneself死んじまわあんじまわあ die

「それでね、生徒生徒せいと studentsきみ you (familiar)来たた came; arrivedのを大変大変たいへん terribly; very much歓迎している歓迎かんげいしている welcomeんだが、そこにはいろいろな事情事情じじょう circumstances; considerationsがあってね。君も腹の立つはらつ become angry; take offenseこと occasion; occurrenceもあるだろうが、ここが我慢我慢がまん perseverance; patienceだと思っておもって think; consider as ...辛防して辛防しんぼうして endure; put up with (usually 辛抱)くれたまえ。決してけっして by (no) means君のためにならないような事はしないから」

「いろいろの事情た、どんな事情です」

「それが少しすこし a bit; somewhat込み入ってるってる complicated; involvedんだが、まあだんだん分りますわかります understandよ。ぼく I話さないはなさない don't tell; don't explainでも自然と自然しぜんと naturally分って来るわかってる come to understandです、ね吉川吉川よしかわ Yoshikawa (name of the art teacher, a.k.a. Nodaiko)くん (suffix of familiarity for males)

「ええなかなか込み入ってますからね。一朝一夕にゃ一朝一夕いっちょういっせきにゃ in one day; in a short time到底到底とうてい (not) at all分りません。しかしだんだん分ります、僕が話さないでも自然と分って来るです」と野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)同じおなじ sameようなこと content云うう say; mention

「そんな面倒な面倒めんどうな bothersome事情なら聞かなくてもいいかなくてもいい don't need to hear (about)んですが、あなたのほう side; directionから話し出したはなした brought up (a topic)から伺ううかがう ask (about something)んです」

「そりゃごもっともだ。こっちで口を切ってくちって started (on a subject)、あとをつけないのは無責任無責任むせきにん irresponsibleですね。それじゃこれだけの事を云っておきましょう。あなたは失礼失礼しつれい rude; breach of etiquetteながら、まだ学校学校がっこう school卒業卒業そつぎょう graduationしたてで、教師教師きょうし instructor始めてはじめて for the first timeの、経験経験けいけん experienceである。ところが学校というものはなかなか情実情実じょうじつ personal motives; private considerationsのあるもので、そう書生書生しょせい studentりゅう way; manner淡泊淡泊たんぱく candor; simplicityには行かないかない doesn't goですからね」

「淡泊に行かなければ、どんなふう manner; style行くく go; proceedんです」

「さあきみ you (familiar)はそう率直率直そっちょく blunt; directだから、まだ経験に乏しいとぼしい limited; lackingと云うんですがね……」

「どうせ経験には乏しいはずです。履歴書履歴書りれきしょ resuméにもかいときましたが二十三年二十三年にじゅうさんねん 23 years四ヶ月四ヶ月よんかげつ 4 monthsですから」

「さ、そこで思わぬおもわぬ unexpectedあたり directionから乗ぜられるじょうぜられる taken advantage of事があるんです」

正直正直しょうじき honest; sincereにしていればだれ who; whoeverが乗じたって怖くはないこわくはない (I'm) not afraidです」

無論無論むろん of course怖くはない、怖くはないが、乗ぜられる。現にげんに indeed; as a matter of fact君の前任者前任者ぜんにんしゃ predecessor (at one's post)がやられたんだから、気を付けないといけないけないといけない (one) must be carefulと云うんです」

野だが大人しく大人おとなしく quiet; docileなったなと気が付いていて noticedふり向いて見るふりいてる look behindと、いつしかとも sternほう direction船頭船頭せんどう boatmanつり fishingはなし talk; discussionをしている。野だが居ないない not presentんでよっぽど話しよくなった。

「僕の前任者が、誰れに乗ぜられたんです」

「だれと指すす point out; nameと、その人の名誉名誉めいよ honor; reputation関係する関係かんけいする concern; impactから云えない。また判然判然はんぜん definite; certain証拠証拠しょうこ evidence; proofのない事だから云うとこっちの落度落度おちど fault; errorになる。とにかく、せっかく君が来たもんだから、ここで失敗失敗しっぱい failureしちゃ僕等僕等ぼくら we; usも君を呼んだんだ invited; summoned甲斐がない甲斐かいがない be in vain; amount to nothing。どうか気を付けてくれたまえ」

「気を付けろったって、これより気の付けようはありません。わるい事をしなけりゃ好いい satisfactory; enoughんでしょう」

赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)はホホホホと笑ったわらった laughed別段別段べつだん (in) particularおれは笑われるようなこと matter; fact云ったった said覚えおぼえ memory; impressionはない。今日今日こんにち this dayただ今ただいま now; at present至るいたる arrive (at); come (to)までこれでいいと堅くかたく firmly信じてしんじて believeいる。考えてかんがえて think about; considerみると世間世間せけん the world大部分大部分だいぶぶん large part; preponderance (of)ひと peopleはわるくなること act奨励している奨励しょうれいしている encourage; promoteように思うおもう think。わるくならなければ社会社会しゃかい society成功成功せいこう successはしないものと信じているらしい。たまに正直な正直しょうじきな honest; sincere純粋な純粋じゅんすいな pure; genuine人を見るる seeと、坊っちゃんっちゃん young master; greenhornだの小僧小僧こぞう apprentice; errand boyだのと難癖をつけて難癖なんくせをつけて find fault (with)軽蔑する軽蔑けいべつする disdain; treat with contempt。それじゃ小学校小学校しょうがっこう elementary school中学校中学校ちゅうがっこう middle school嘘をつくなうそをつくな don't tell lies、正直にしろと倫理倫理りんり ethics先生先生せんせい teacher教えないおしえない don't teachほう alternativeがいい。いっそ思い切っておもって firmly; decisively学校学校がっこう schoolで嘘をつくほう methodとか、人を信じないじゅつ art; technique; skillとか、人を乗せるひとせる take advantage of a personさく plan; scheme教授教授きょうじゅ teaching; instructionする方が、 the world; societyのためにも当人当人とうにん the person in questionのためにもなるだろう。赤シャツがホホホホと笑ったのは、おれの単純な単純たんじゅんな simple; pureのを笑ったのだ。単純や真率真率しんそつ honesty; franknessが笑われる世の中なか worldじゃ仕様がない仕様しようがない cannot be helped; is a lost causeきよ Kiyo (name of Botchan's former maidservant)はこんなとき time; situation決してけっして absolutely (not)笑った事はない。大いにおおいに greatly感心して感心かんしんして with admiration聞いたいた listenedもんだ。清の方が赤シャツよりよっぽど上等上等じょうとう superior; first-rateだ。

無論無論むろん of course悪るいるい bad; evilこと acts; deedsをしなければ好いい good; fineんですが、自分自分じぶん oneselfだけ悪るい事をしなくっても、ひと (other) peopleの悪るいのが分らなくっちゃわからなくっちゃ not understanding; not recognizing、やっぱりひどい目に逢うひどいう meet a bad endでしょう。世の中なか the worldには磊落な磊落らいらくな openhearted; candidように見えてえて seem; appearも、淡泊な淡泊たんぱくな candor; simplicityように見えても、親切に親切しんせつに in kindness; with consideration下宿下宿げしゅく lodging世話世話せわ care; assistanceなんかしてくれても、めったに油断の出来ない油断ゆだん出来できない can't be too cautious; must maintain vigilanceのがありますから……。大分大分だいぶ a great deal; considerably寒くさむく cool; coldなった。もうあき autumnですね、はま beach; shoreほう directionもや haze; mistセピヤ色セピヤいろ sepia colorになった。いい景色景色けしき view; sceneryだ。おい、吉川吉川よしかわ Yoshikawa (name of the art teacher, a.k.a. Nodaiko)くん (suffix of familiarity for males)どうだい、あの浜の景色は……」と大きなおおきな big; loud (voice)こえ voice出してして speak out (voice)野だだ Noda (short for Nodaiko, nickname for Yoshikawa, the art teacher)呼んだんだ called; addressed。なあるほどこりゃ奇絶奇絶きぜつ unusual; remarkableですね。時間時間じかん timeがあると写生写生しゃせい sketch; drawingするんだが、惜しいしい regrettable; a pityですね、このままにしておくのはと野だは大いにたたくおおいにたたく agreed heartily

港屋港屋みなとや Minatoya (name of an Inn)二階二階にかい second floorあかり light一つひとつ one (thing)ついて、汽車汽車きしゃ (steam) trainふえ whistleがヒューと鳴るる blow (whistle); soundとき、おれの乗っていたっていた was riding inふね boatいそ shoreすな sandへざぐりと、へさき bow (boat; ship)つき込んでつきんで thrust into; push onto動かなくなったうごかなくなった stopped movingお早うお帰りはようおかえり welcome backと、かみさんが、浜に立ってって standing赤シャツあかシャツ Red Shirt (nickname for the head teacher)挨拶挨拶あいさつ greetingする。おれは船端船端ふなばた side of a boatから、やっと掛声掛声かけごえ a shoutをして磯へ飛び下りたりた jumped (down) onto